04-26-0151
Side:アッシュ
再び分かれ道へと戻った私は、今度は針が飛んできていた左へと進む。
先ほど撃たせ切ったからか、針が飛んでくる事は無かった。
そのまま進むと横道に進む通路があった為、私は横道へと進む。
あの奥には確実に壺型モンスターが居るからな。
分かっている方は後回しにする。
横道へと盾を構えながら入った私は、慎重に前へと進んで行く。
何かがぶつかる音も感触も無いので、何も飛んできてはいないのだろう。
一つ一つ確かめながら進んで行くと、そこは行き止まりであった。
しかし……
「なんだか変だな、この壁。
やたらに綺麗に出来ているような?」
触ってみても引っ掛からず、綺麗にツルツルの壁がそこにはあった。
あからさまにおかしい気がした私は、異空鞄から斧を取り出すと、反対側のつるはし状の部分で掘っていく。
ガッ! ガッ! ……ガゴッ!
「穴が開いたって事は、向こう側があるって事だ。
おそらく誰かが壁を作り、この向こうにある何かを隠したんだろう。
いったい何があるのやら……」
私は通れる程度の広さに壁を崩すと、盾を構えながら先へと進んで行く。
何が出て来るのかは分からない為、それなりの用心をしながら進むと、そこには朽ちた建物の残骸があった。
おそらくは何かの建物があったのだろうが、古すぎて残っていない。
流石にかろうじて残る残骸だけじゃ分からないな。
そう思いつつ残骸に触れると、それも崩壊して粉になっていく。
すると、残骸の下に階段を発見した。
何も無いと思って立ち去るところだったな。
危ない危ない。
私は見つかった階段を降りると、そこは通路になって居る場所だった。
奇妙だなと思って確認すると、近くには粉になった鉄錆の臭いのする物があった。
その鉄錆の粉の向こうは大きな窪みというか部屋になっている。
「…………ここはおそらく牢獄だな。
となると、上にあった建物の地下に牢屋が大量にあったという事になる。
いったい何の為に?」
わざわざ地下に牢獄を作るとか………
普通はこんな所に建物を、それも牢屋付きの建物など作らないと思うがな。
もし洞窟内に作るとしたら神殿か? しかし何の為に牢獄を?
………まさかとは思うが、ここが実験をしていた所なのかもしれない。
<混沌の種>を生き物に与えて耐えらえれるかの実験であり、だから女官達がここに居るのだとすれば辻褄は合う。
仮に外へと出ようとしても出られないかもしれないし、もしくは何らかの出られない理由があるのかも。
あの姿では出られないといっても、それ以前に冷静だったのが一人しか居なかったからな。
何故彼女だけがかろうじて喋れたのかは不明だが、彼女が喋れなかったら何も理解できないままだった。
あれも今思えばリビ殿が何かをしてくれていたのかもしれない。
だからこそ話す事が出来たなどという可能性も十二分にある。
リビ殿は神様だし、何でも出来る恐れもあるのだ。
もちろん神様方はいらっしゃるから、そこまで好き勝手はしないだろうがな。
全ての牢屋を覗いてみたが何もなかった。
既に鉄格子すら錆びて粉になっているくらいだ、何かがあっても朽ちてしまっているだろう。
私は上の階に上がり、何かがあったであろう部屋を後にした。
もはや朽ちてしまっている為に分からないが、神殿ではないのだろう。
前に洞窟内で見た神殿は朽ちないように石で作られていた。
しかし私が消した残骸は木で出来た物っぽかった。
なので何かの建物だと思ったのだし、神殿だとは思わなかったのだ。
流石に神様の像も無いのであれば………いや、邪神の像は壊されていたのか。
でも、なら何故建物を木で作ったのだ? むしろ石は近くにあるぞ?
この洞窟の中を掘り進めた方が簡単に素材が集まるのに、何故わざわざ木を持って来て建てたんだ?
もし邪獄樹で建てたのなら、あんなに朽ちているのはおかしい。
もっとハッキリ残っていなければいけない。
だからこそ、先程の残骸は神殿の物ではない。もしくは邪神以外の神殿か?
何か木を使わなければいけない神様………など聞いた事も無いな。
「流石に木を使わなければいけない神など、聞いた事も無いし、な!!」
私は壁に引っ付いていた壺型モンスターに斧を叩きつけると、潰れるように切れた壺型モンスターは、地面に落ちながら水を噴出。
一撃で死亡した。
「斧なら一撃か、楽で助かる」
そう言いつつ横の壺型モンスターにも振り下ろし、その一撃で倒した。
死んだのを確認した私は斧を仕舞い、盾を構えながら先へと歩いて行く。
カカカカカカカカカカカカカカカカカカカッ
冗談だろうと思うような量の針が飛んできたが、ここまでの数が居るとなると大変そうだ。
そう思っていると更に飛んできた。
カカカカカカカカカカカカカカカカカカカッ
これは撃ち尽くすまで前に進めないなと思っていると、<内なる目>の範囲ギリギリに異形の姿を把握した。
今度は、まるで赤ん坊のような形をしていて四つん這いで移動している。
そんな元女官はこっちを見つけたのか、凄い速さで接近してきた。
そしてそのままに体当たりをしてきたので、私は踏ん張って盾で受ける。
正直に言ってかわす余裕など無い。
何故なら通路に入るギリギリの大きさだからだ。
ズザザザザザザザザザザザザ………
何とか体当たりというか、頭から突っ込んで押し込んできたのを止め、私は斧を取り出すと頭に叩きつけた。
ズドォッ!!
赤ん坊の如く頭が大きいので一度では倒せず、私は二度三度と【身体強化】をした斧を叩きつけていく。
すると割れた頭から大量に出血、頭を振って暴れる。
私は痛めつけたいわけでも苦しめたい訳でもないが、しかし大きすぎて一撃では倒せないのだ。
暴れ回る赤ん坊の頭を狙って更に斧を振り下ろし続け、何とか倒す事が出来た。
先程から大きい姿ばかりだが、だからこそ一撃では倒せないのが辛い。
私は死んだ事を確認し、そして祈りつつ触れて崩壊させていく。
残ったのは先程と同じくステージ4末期とも思える大きさの<混沌の種>だった。
私はそれを吸収し、そして深呼吸の後に盾を構えて先へと進む。
カカカカカカカカカカカカカカカカカカカッ
再び飛んできた針を防ぎつつ、何とか早く倒す術がないかと考える。
針で攻撃されている時に考えるのは不謹慎だが、それでも何らかの方法がないかと考えるのは仕方ないだろう。
特に巨大とはいっても赤ん坊の姿はな。
いろいろ心に来るものがあった。
「ああいうのも解放する為には殺さねばならん。
それが辛いと言うか厳しいと言うか、なところだ。
しかし、あのまま残していても救われない状態が続くだけ。
更にはあんな異形の姿のままで生かされるなど、拷問以外のなにものでもあるまい」
誰があのような事をしていたのか知らぬが、決してやってはいけない事をしたのだ。
徹底的な罰を与えねばならん。
彼女達を救う度に私の中に怒りが溜まり続ける。
あのような事をした者どもに対し、そしてこのような事をしていた神殿にだ。
そもそもここは神殿の奴らがゴミ捨て場と言った場所。
ならば奴らが使っていた場所で間違いあるまい。
私は新たな怒りを鎮めつつ、慎重に先へと進んで行く。
すると再び針が飛んできたので、私はその場に留まって針を防ぎ続ける。
「よし、針が飛んでこなくなったな。それじゃあ、一気に行くか」
私は【身体強化】で飛び出し、部屋の中に大量に居た壺型モンスターを斧の一撃で殺していく。
ひたすらに一撃で殺し続け、終わった頃には流石に疲労で大変だった。
今までの戦闘でも疲れていたのだろうが、怒りなどで気づかなかったらしい。
全ての壺型モンスターの死亡を確認した私は、階段を無視して一度戻る事に決めた。
地底池の水を飲むのと丸い物を食べ、少し眠る為にだ。
おそらくだが眠っても大丈夫だと思う。
壺型モンスターしか居ないなら、移動するのは元女官しかいない。
あれらなら動いていれば音で起きるだろう。




