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 Side:アッシュ



 私は十分な水分がとれたので先へと進む。

 水を飲んで休憩し、少々緩んだ心を引き締めつつ、慎重に歩を進めていく。

 今はもう左手にタワーシールドを出したままだ。

 本当なら疲れるので出しっぱなしは止めたいのだが、どこから針が飛んでくるか分からないから仕方ない。


 それでも慎重に歩いていると、「カカッ」とタワーシールドから音がした。

 すぐに周りを把握し、壺型のモンスターが“居ない”事を理解する。

 少なくとも私の<内なる目>の範囲の外から攻撃してきているらしい。


 カカッ


 「タワーシールドの音からして、左の方から撃って来てるな。

 このまま立ち止まって打ち切るのを待つか。

 突撃して四方から囲まれたら終わりだし」


 突っ込んで行ったら部屋の中で、大量の壺型モンスターの部屋だったら。

 そう考えると迂闊(うかつ)な事は出来ない。

 たまたま数が少なくて良かったが、「突っ込んだ方が上手くいく」と考えた自分をブン殴りたいぐらいだ。


 危険というものを正しく理解していないからこそ、あんな事を考えてしまったんだろう。

 命が懸かっているという事を、今一度きちんと自覚した方がいい。

 でなければ本当に死にかねん。


 「音がしなくなったな? それなら大丈夫だろう。

 まずは右へと進むか。こっちの方が部屋に近い」


 右の通路の先に部屋っぽいのがあるのが分かっている。

 通路も輪郭で見えているので、その先に部屋っぽいのがあるのは把握済みだ。

 最初の頃に比べれば範囲も広がっているので、その分だけ安全は増している。

 目が見えなくても特に問題は無い。


 私は慎重にタワーシールドを掲げて移動するが、部屋に近づいた途端「カカカカカカカカカカカッ」と音がした。

 どうやらこっちの部屋には相当の壺型モンスターが居るようだ。

 おそらくだが<内なる目>で見えている外側にも居るんだろう。


 音の数が<内なる目>で見えている範囲に居る壺型モンスターよりも多い。

 となると遠くから飛ばしてきているのは明白だ。

 私は大きなタワーシールドに体を隠して針を耐える。

 音的には盾が壊れそうではないので、このまま耐え続ければ私の勝ちだ。


 カカカカカッ、カカカカッ


 微妙に飛んでくるリズムが変わったな?

 こうやって時間差で攻撃される事も考えると、回避ではなく防御が正しいのがよく分かる。

 もちろん防御出来たらの話なのだが、ズレて攻撃されると致命的な一撃を受ける可能性が高まるからな。

 それでは避けきれないだろう。


 となると盾が無ければ隠れるしかないのだが、ここに来るまでの通路に隠れる所は無かった。

 つまりこの場所は盾が無ければ致命的な場所となる。

 かつて奴隷仲間から聞いた<殺しの間>みたいなものだろう。


 射線が通る場所で、二方向以上から撃たれまくる場所。

 それを<殺しの間>というらしい。


 確実に殺したい者が居るのであれば、その<殺しの間>に誘導すると言っていた。

 そして四方八方から撃つ事で、確実に息の根を止めるんだそうだ。

 そういう殺し方があると聞く。


 おそらくこのタワーシールドであれば、そういう攻撃も防げるのだと思う。

 邪獄樹という素材自体が非常に強力な物だからな。

 それに私ぐらいしか使えないし。


 「音がしなくなったな。それじゃ、一気に行くか!」


 私は【身体強化】をしながら部屋に入り、知覚出来ている壺型モンスターを一気に突き刺していく。

 時間をおけば針が復活するかもしれないので急ぎ、何度も突き刺して確実に仕留めていった。


 「よし、これで部屋の中にはもう居ないな。

 確実に殲滅したのを確認しておかないと、後ろから撃たれたら目も当てられない」


 私はしっかりと確認し、そして奥の通路へと向かった。

 そして再び盾を構えながら進むと、女官であったであろう者をみつけた。

 今回の者は手足が短いものの、異様に丸々と太っているような姿だ。

 手足が短い所為か、歩いておらず転がっている。


 あの体で轢かれたら潰されかねない……というか潰されるだろう。

 あれに関しては回避を優先するしかない。

 それと転がって来るなら、頭を狙えるチャンスは多くないだろう。

 上手く狙える時まで焦らず待った方が良さ気だな。


 私は頭の中で戦い方を確認すると、少しずつ近づいていく。

 そして10メートルぐらいの段階で敵に発見された。

 なんとなくだが、こちらが見えているような気がする。


 「FNYJIOPOJYNEGBET!!!」


 ゴロゴロゴロゴロゴロ………ドォン!!


 いきなり奇声を上げると、そのままこちらへと突っ込んできた。

 なので私は盾を仕舞って回避し、そして右手に棍棒、左手に杭を持つ。

 壁に激突して止まった太った者は、私の方へと向き直して再び転がって来た。


 なるほど、こいつは向き直らないとこっちに転がれないわけか。

 そしてその際には一度こちらを確認する。

 目で見て確認しないと転がらないという事は………


 ゴロゴロゴロゴロゴロ………ドォン!!


 再び壁にぶつかり、そして私の方へと向き直る太った者。

 私はこちらに向き直った際に【身体強化】を行い、一気に跳び上がりながら頭に左手の杭を突き刺した。

 頭の高さでも2メートル50センチくらいはあるのだ。

 体はそれよりも大きい。


 跳び上がりながら突き刺した私は一度着地。

 敵が苦しんでいるので今度は走り、少し跳び上がって全力で棍棒を振るう。


 ドゴッ!!


 しかし音と同じで、そこまで威力が出なかった。

 2メートル50センチの場所へは、上手く体重などを含めて力が伝わらない。

 踏ん張って叩きつける事が出来ない為、どうしてもいつもの威力が出せないのだ。


 それでも何度も棍棒を叩きつける事で、かろうじて倒せたらしい。

 苦しめるつもりなど無かったのだが、中途半端な位置に頭があると戦いにくくてしょうがない。

 あれ以上に高いと別の方法を考えなければいけないが、中途半端に届くのでああなってしまった。


 私は死体に手を合わせて祈ると崩壊していき、先程まで居た場所には大きな<混沌の種>が残されていた。

 これはステージ4の末期か? となると………


 「吸収したら体が活性化したが、そこまで大きく活性化はしていないな。

 ステージ5を体験したからこそ分かる。

 体は活性化したが<内なる目>の範囲は広がっていない。

 代わりに力が少し強くなったのか?」


 変化はあるのだが、その変化が分かりにくい。

 体が活性化しているのは分かるが、あくまでも活力を得たような、そんな曖昧(あいまい)なものでしかない。

 その活性化もそこまで長続きはしないので、どんな効果があるかも不明だ。


 私は先程の者にもう一度祈りを捧げ、そして盾を取り出して構える。

 そして再び歩き出すのだが、奥の通路へと入った途端「カカカカカッ」という音がした。


 「早速とばかりに壺型モンスターが飛ばしてきたな。

 いったい何匹居るのか知らないが、ここにはこいつらが生きる為の水分が多いからか?」


 私が休憩した所に地底池のような物があったが、ここの岩盤の向こうにも地下水が流れているのだろう。

 こいつらはある程度の傷を受けると水を出して萎(しな)びれる。

 なのでおそらく水分さえあれば生きられるのだろう。


 魔力で大部分は何とかなるのだろうが、果たして何も食わずに生きられるのだろうか?

 まさかとは思うが、あの女官達を食べていたのではあるまいな?


 「…………嫌な想像をしてしまったな。

 そんな事は無いと思うし、そもそもあの針では通用しないだろう。下らぬ想像だ」


 おそらくは間違っているだろうし、その可能性は低いので否定する。

 流石に彼女たちが喰われているなどというのはな………また腹の底から怒りが湧いてきてしまった。

 冷静にならねば。


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