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 Side:ジャネス



 「ふむ、その若者を捕縛した事も4人組を連れて行った事も無いか。

 まさか酒場に捕縛に行ってすらおらんとは……

 ではいったい誰に連れて行かれたのだ? お前達の仲間が居ないという事は確かだ。

 とはいえ元から居ない訳ではなく、町の門の門番は御者をしておったのを確認しておる。

 ならばいったいどこへ?」


 「少なくとも、わたし達と酒場に居た事までは間違いないわ。

 そこまでは分かるんだけど、連れて行かれた後が不明なのよね。

 実際に私達が見ていないから」


 「ですね。

 ぼく達は兵士だと思ったので仕方ないとしか思いませんでしたし、どうせ誤解は解けてすぐに戻って来るだろうと思っていましたから。

 まさか4人組もアッシュさんも居なくなるとは思いませんでした。

 いえ、そもそも昨夜の兵士が嘘だったんですね」


 「だろうさ。でないと居なくなったりしないよ。

 そもそもアッシュが居なくなること自体、理由が全く無いんだよね。

 雲隠れする理由が皆無だし、何より伯爵様からの依頼だ。それから逃げるなんて問題があり過ぎる。

 それにアッシュはそんな無責任なヤツじゃない」


 だからこそ、昨日の夜に何かがあった。それしかないんだ。

 もし町中を探して見つからなかったのなら、アッシュはどこかに連れ去られたって事になる。

 しかし……アッシュを誰かが連れて行く? いったい何の為に?


 仮にアッシュを拉致しようとしても、アッシュの事だから絶対に抵抗するだろう。

 だから大人しく連れ去られるはずは無いし、暴れれば居場所はすぐに分かる。

 騒動が起きればそこにアッシュが居るだろうからね。


 こりゃ町中で聞き込みをした方がいいかな?

 酒場を出てすぐなら見ていた者が居るだろうし、どっちに行ったかぐらい分かるだろ。

 そいつを探した方が早そうだ。


 「ん? ジャネス、立ち上がってどうしたのよ?」


 「アッシュを探した方が早そうだと思ってね。

 昨日の夜に酒場を出たところ、それぐらいなら見ていた奴らも居るだろう。

 そいつらを探して、どこに行ったかを聞いた方が早い」


 「それはウチの兵士達に任せておくといい。

 それよりも、お前達はワクストンに行く方が先だ。

 向こうの連中に証拠を潰されたり消されたりしては困るからな。

 そもそもそれがお前達の受けた仕事だろう」


 「ぐっ………」


 感情的にはすぐに探しに行きたいんだけど、確かに優先順位は依頼の方が上だ。

 仲間が一緒に行けなくなったからといって、依頼を引き延ばす事なんて出来やしない。

 でも………ここの兵士を信用しろっていうのも難しいんだよ。


 そもそもこの町で居なくなってる以上、証拠の隠滅を図るのはここの連中も変わらない。

 むしろ目的の連中は証拠の隠滅を行うなら、とっくにやった後だろうしね。

 こっちの方が………


 「ジャネス、座りなさい。

 ワクストンに行く前に情報を聞いておかなきゃいけないでしょ」


 「………分かったよ」


 マーヤも探しに行きたいだろうし、あたしだけが勝手な事をする訳にはいかないか。

 それにしても、いったい何があったんだろうね?

 何があればアッシュを連れて行けるのやら……



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 Side:アッシュ



 壺の形の肉を倒した私は先へと進む。

 針状の物を飛ばして来るというのは性質(たち)が悪いが、それでも倒して進むしかない。


 今は食べ物はあるんだ。ならばじっくりと腰を据えて進むべきだろう。

 水が無いのが厳しいが、それでも慎重に怪我なく進むべきだ。


 こういう時に一番マズいのが怪我をする事だろう。

 汚れ自体は箱で綺麗に出来るが、それでも傷から汚れが入る事は避けられまい。

 布は買ってあるが、傷口を縛る布など一枚しかない。

 なので二ヶ所に怪我をした段階で非常にマズい事になる。


 怪我から病に、そして動けなくなるという流れが一番怖い。

 だからこそ怪我を一番恐れなきゃいけないわけだ。

 その中で飛び道具なのだから、厄介を通り越して腹も立ってくる。

 何故こういう時に限って、遠距離攻撃をしてくるヤツが居るのか。


 「腹立たしいが、だからと言って足踏みはしていられん。

 さっさと洞窟を出ないとな」


 口にする事で目標を今一度認識し、私は歩みを進めていく。

 壺の後は階段があったので上へ。

 上の階へと上がった最初の部屋から、複数の針が飛んできた。


 ガガガガガッ!


 私は階段途中で嫌な予感がした為、適当に手を上に上げて振ったのだが、それに反応して針を飛ばしてきた。

 刺さった音から察するに4~5匹は居ると考えた方がいいだろう。

 流石にこれでは一気に接近して倒すという事は出来ない。


 困ったなと思いつつ、手を振って針を飛ばさせる。

 理由としては飛ばしてきている針を使おうという事だ。


 向こうが飛び道具で来るなら、こちらも飛び道具しか無い。

 タワーシールドで弾いてもいいのだが、それをすると針が壊れる恐れもある。


 おそらく壁よりもタワーシールドの方が硬いだろう。

 邪獄樹で出来ているからな、生半可な防御力はしていない。

 せっかくの遠距離武器が壊れても困るし、盾に傷が付くのもよろしくない。


 階段の陰に隠れている為、私そのものが針を受けるという事は無い。

 だからこそ飛ばさせており、少しずつだが集まって来た。

 地面に刺さっているものなら取れるので、地面の方から主に手に入れている。

 何と言っても壁の物は遠いし体を出さないと取れないのだ。


 そんな事をしている間に次の針を飛ばされるので、手を伸ばせば届く地面の針を集めるしかないとも言える。

 そうやって集めていると、ようやくある程度の数が揃った。

 やっと反撃できると思ったのだが、手を上げても針が飛んでこない。


 「…………当たり前だが、モンスターと言っても無限に何かを出せる訳じゃない、か」


 どうやら針を集めている間に、飛ばせる針が無くなったらしい。

 なんだかなと思いつつも、私は盾を前面に出して杭を持ち走る。

 そして壁にいた壺型の肉を一気に突き刺していく。


 突き刺された壺はウネウネと動くが、それでもお構いなしに突き刺して1匹を殺した。

 その後も同じ事を繰り返して、この部屋に居た6匹全てを殺し一旦息を吐く。


 「ふう………とりあえず壺型の肉はこれで倒し方が分かったな。

 焦らずに相手に針を使い尽くさせればいい。

 そうすれば後は一方的に攻撃できる。

 これなら安全に殺す事も難しくないな」


 実際に誰でも出来る方法だろうと思う。

 安全な場所から手足だけを出してすぐに引っ込める。

 それだけで針には当たらず使い尽くさせる事が出来るし、最悪は盾で受け続ければいい。


 あの針がタワーシールドを貫通する事は無いだろう。

 それが出来るパワーを持っていないみたいだし。


 私は一旦腰を下ろし、異空鞄から浄化道具を取り出す。

 そして地底湖というか、地底池から水をくむ。

 綺麗かどうかは知らないが、ここの水しか水は見つかっていない。

 となると、ここの水を飲むしかないんだ。


 おそらく、だからこそリビ殿はこの水を浄化する道具をくれたんだろう。

 私は浄化道具の下から出て来る水をコップで受け止め、溜まったらそれを飲んで行く。

 思っているよりも溜まる速度が早いが、神様から貰った道具だからか?


 リビ殿がどんな姿か知らないから想像が出来ないが、人型であったのは分かっている。

 ただしそれ以外はサッパリなので、黒い人型以外は不明だ。

 <内なる目>も色付きで全て見えている訳じゃない。


 何と言うか、枠が見えている感じだろうか?

 それとも輪郭が見えていると言えば伝わるのかな。


 私が見えているものを、そのまま伝えるのは難しい。

 しかし見えるべき物は見えているので、これで十分だろうと思う。


 流石に山髭族のロッドン殿のように、暗闇がしっかり見えているなどという事は無い。

 どのみち今の私の目は切られて見えないからな。

 開けても意味が無いし、無駄だ。


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