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 Side:アッシュ



 私はリビ殿から貰った物を全て異空鞄に仕舞うと、再び歩き出す。

 モンスターが居ないので歩き回るのは楽なのだが、その代わりに単調な時間が続いている。


 あれから考えてみたのだが、リビ殿があんなに大量にくれたものの、そもそも【転移魔法】使いが来れるぐらいなのだ。

 そこまで長い距離ではないはず。

 でなければ【転移魔法】使いだって来るのは難しいだろう。


 とはいえ神殿は【転移魔法】使いを確保していた組織でもある。

 子供の内から保護という名目で入れ、自分達の思うままに使う。

 自分達が正しいのだと教えておけば、たとえ凶行にでも使うだろうしな。

 何より使われている。


 それはともかくとして、ここが代々に渡って受け継がれている場所であれば、【転移魔法】使いすら連れて来られただけかもしれない。

 その場合は深さというか、長さが全く分からなくなる。


 私はあくまでも【転移魔法】使いの足で来れる場所としか考えていなかったからな。

 代々受け継いできた場所なら、予想が根底から覆されてしまう。

 そうなると本当に分からないし、完全に不明な状況だ。

 そしてそうなるとリビ殿から貰った物が必要になるのかもしれない。


 とりあえず水のある場所に行きたいな。

 そこで水を汲み、綺麗な水を確保したい。

 異空鞄の中にコップはあるので、何とか石か何かをくり貫いて桶を作れないだろうか?

 そうすれば水を確保できる容器が出来るのだが………


 頭の片隅でこれからの事を考えつつ、私は今いる場所を詳しく探していく。

 色々な道があるものの、どこに行ってもバケモノの姿に変えられた者はいなかった。

 少々安心しつつも、見つけた階段から上へと上がる。


 なんだかウロウロさせられているなと思ったら、再びバケモノの姿にさせられてしまった者を見つけた。

 私は会話を試みるが駄目で、仕方なく最速の一撃で殺す。


 「………はぁ、殺さねばならんのか。

 いや、殺してやる事こそが救いなのだ。

 自分でもそう思ったのだし、これは私にしか出来ぬ事でもあろう。

 その私が迷ってどうする。迷えばそれだけ彼女達が苦しむんだぞ」


 私は自分に言い聞かせるように声に出し、そして死体を崩していく。

 今までと変わらず、サラサラと崩れ去った後に残された<混沌の種>。

 それを拾って吸収すると、再び体が強烈に活性化する。


 「おそらく彼女達に使われた神力は多いのだろう。

 それと同時に多くの邪気、穢れを受けてあのような姿に………」


 改めて彼女達の鎮魂を願い、そして私は歩きだす。

 また<内なる目>の視界が広がったが、普通の目に比べて遠くが見えないという弱点がある。

 代わりに後ろでさえ見えるので、見える範囲であればさえ不意打ちは受けない。


 その安心はあるものの、代わりに遠くから突撃されると見えた時には間に合わない可能性がある。

 なので、そういう不意打ちには注意を払わないといけない。


 だから慎重に進んでいるのだが、再び姿が変わっている者が現れた。


 「聞こえるか? 私の声が聞こえているか?」


 「GJRIERNKEOJ!!!」


 ボッ!!


 今度のバケモノは腕の先が棍棒みたいになっている者であり、それを凄い速さで振って来た。

 それでも来ると分かっていれば下がればいいだけだ。

 下がって回避した私は前へと出ようとするも……


 ボッ!!


 同じような速さで戻って来た。

 その為、前に出る事は出来ずに終わってしまう。


 仕方なく左手に力を篭めると吶喊(とっかん)。

 相手の棍棒攻撃を無理矢理に盾で止める。


 ドガァァン!!


 凄い力だが、それでも来る方向さえ分かっていれば止められるのだ。

 私は踏ん張って無理矢理に止めると再び接近。


 ドゴォォン!!


 顔の前まで行った私は、全力で棍棒を振り下ろし叩き殺した。

 後はいつも通りに消して、残っていた<混沌の種>を吸収する。

 段々と慣れて来たのか活性状態になっても楽に居られる気はする。


 とはいえ活性化しているという事は、未だに私が強くなっているという事だ。

 邪神の女官達がどれほど居たのか知らないが、少ない数では無いだろう。

 神殿の全てに居た訳ではないだろうが、その数が一桁なんて事はあるまい。


 私はこの階も様々に探したが見つからず、上の階へと進んで行く。

 どこまであるのか知らないが、バケモノになっている女官達に襲われる事は無かったのだろうか?

 実際に転移場所の近くに一人目は居たしな。


 転移してきて即座に襲われる。

 そんな事も無いわけではないと思うのだが……

 ゴミ捨て場であれば、ある程度の期間で何かを捨てに来ているはずだ。

 あの狂ったヤツもそんな事を言っていたしな。


 それか、ここにいる女官達が吸収していたのでステージ4を超えていた?

 その可能性もあるが、そもそも何を捨てに来ていたのか分からない。


 色々と考えられる事はあるが、どれを考えても正解かどうかは不明だ。

 とはいえ考えなくても暇でしょうがない。


 ここには私一人しかいないわけで、女官達を眠らせるのは絶対にしなければけないが、移動は単調で飽きがきている。

 景色も変わらないとなれば、どうしてもな。


 「暗闇の中を一人でただダラダラ歩くというのも……?!」


 ガッ!


 嫌な予感がしたので飛び退いたが、いきなり何かが飛んできた。

 私は慌てて棍棒と盾を出して構える。

 すると、先程の何かと同じ高さに再び何かが飛んできて盾に衝突。下に落ちた。

 どうやら針状の何からしい。


 それさえ分かれば問題無く、私は盾を前面に出して一気に走る。

 こういうのはこちらから突っ込んだ方が有利になる場合が多い。

 それに進路方向から攻撃されているので、そちらに行くしか道が無いのもある。


 ガッ!


 盾にぶつかったものの、私は気にせず接近。

 そして見えたのは壁に張り付いた壺? のような形の物だった。

 私はその生き物のような壺に棍棒を振り下ろすと、その壺は壁から外れて「ベチャッ!」っと地面に落ちただけであった。


 ブッ! ガツッ!!


 壺の口と言うか、入り口部分を閉じて開くと、その時に針状の物を飛ばして来るらしい。

 こいつは形が壺なだけでブヨブヨしているらしく、棍棒が碌に効いていないようだ。

 私は仕方なく棍棒を仕舞い、代わりに杭を取り出す。

 そして一気に突き刺した。


 ズドッ!!


 地面に落ちているので突き刺しやすく、しかも入り口というか、口部分から突き刺してやった。

 すると途端にくねりだしたが、私は気にする事なく抜いて、再び突き刺す。

 何度かそれを続けると、壺のような物から水が多量に出て来て萎(しな)びていく。


 「どうやら倒せたようだが………これはモンスターか。

 先程から出てきていた女官達ではなく、本当に唯のモンスターみたいだな。

 それにしても棍棒が効かないとは厄介な………」


 今まで役に立っていた棍棒が、まさかここに来て通用しないとは思わなかった。

 しかもこの壺のようなモンスター、ブヨブヨした肉の塊みたいな感じなので突き刺すのも効きづらいみたいだ。

 一番いいのは刃物だろうか? しかし私は短剣とナイフ以外は持っていないしな。


 「困ったが、今はこのまま進むしかない。

 倒せない訳ではないのが助かるところだ。

 もし倒せないなら、相手の攻撃を受けながら逃げねばならないところだった。

 流石にそれはな、二匹以上いる可能性を考えるとマズい」


 そうなれば四方八方から飛ばされて針塗れになってしまう。

 そうなると流石に死ぬしかないので勘弁してもらいたいところだ。

 なので倒せると分かったのはありがたい。


 ここがどこかも分からないが、とりあえずは生きて脱出する事を目標に少しずつ進んで行くしかない。

 こんな所で死ぬ気も無ければ、奴らに必ず罰を与えねばならん。

 実験なんぞをされて無残な姿にされた者達の為にも、必ずや罰を与えねばならんのだ。


 たとえそれが私の自己満足だとしても、彼女達の無念を晴らせるのは私しかいない。


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