04-21-0146
Side:アッシュ
「訳が分からないだろうけど、そこは気にしなくていい。
気にしたって仕方がないし、君では分からん事だ。
それはともかく、私は旅をしている。
フラフラと当ても無くね」
「はあ………何故そんな事をされているのかは知りませんが、面白そうではありますね。
自分は長く一ヶ所に居たので、色々な所を見て回りたいというのは分かりますし」
「おお、分かってくれるかい?
私もね、自分が支配していたというか、見守っていた星があったのだよ。この星と同じように。
ところが醜い者ばかり生まれてくるうえ、何かあれば破壊だ殺戮だという事を繰り返す。
いい加減その愚かさと野蛮さに呆れてね、星を離れたんだ」
「………神様が下界の者を見捨てたという事ですか?」
「うんうん。だいたいその考えで合ってるよ。
とはいえ星には自動運営装置を置いてきたから、それが私の代わりをしている。
だから私が居なくても問題ないのさ。
まあ、あんな星がどうなろうと知った事じゃないけどね」
「そ、そうですか………」
神様が下界を見捨てるっていうのは、きっとこんな感じなんだろうな。
邪神の女官をあんな風にしていた連中だ、私達の神々も多くが離れたのだろうか?
だから神罰を落としたりはしない。もしくは出来ないとか?
「うーん………ああ、なるほど。
確かに君の考えの通り、この星から離れた神は多いみたいだね。
あまりの醜さに愛想が尽きたというところかな?
とはいえ進歩もそこまでしていない星だから、分霊を置いて行ったみたいだ。
残った神がそれでなんとかしているよ」
「………」
つまりリビ殿は神様方が今なにをしているかが分かるという事か?
流石は神様だと思うが、そんなリビ殿が何故こんな所に居るんだろう?
「私がここに居るのは神の力、即ち神力が何故か小さく疎らにあるのが気になってね。
それで様子を見に来たというわけさ。
こう見えて本体は来ていないから、この星に迷惑は掛けてないよ。
本体なら降り立つ事も出来ずに、この星が崩壊してしまうからね」
「そ、そうなんですか……」
なるほど、神様が下界に降臨されないのは、そうすると下界が崩壊してしまうからなんだな。
流石にそれでは神様も降臨できまい。
「しっかし酷いねえ。
穢れをまとめる神だったんだろうけど、その神を救うのに細かく砕かねばならなかった。
それは分かるんだけど、それが神力と共に星に降り注いでしまったとは。
当時のこの星の神々の愚行が原因か」
「え? ………愚行?」
「そうだ。
そもそも穢れをまとめる神が居るのであれば、それだけに任せる訳にはいかないんだよ。
穢れとは星の者が無限に生み出す物だ。
如何な神といえど、無限に対抗し続けるのは不可能なのさ。
最後には必ず押し潰される」
「無限………」
永遠に幾らでも生み出されるなら、それは確かに耐えられない時がいつか来る。
それまでに何とか出来なかったのだろうか?
「そう、普通はそう考えるんだよ。
ところがこの星の神々は、考える事も無く一柱の神に押し付け続けた。何の疑問も持たずにだ。
で、その結果、神を粉々に砕かねばならなくなった訳だね。
いやぁ、これは愚行以外の何物でもない。
離れた神は、どこかの星でまた同じ愚行を行っているのかねえ」
離れた神は多くおられるのであろうが、その神々はまた別の下界を治めるのだろう。
そこで同じ失敗を? そうなればまた邪気で汚染されるという事か?
「そうなるだろう。
ただ、よくある事だと言えばそれで終わる話でもある。
そうやって愚か者が滅ぼした星も幾つもあるし見て来たよ。
君がこの星を滅ぼしたくないなら…………うん、君がいう<混沌の種>というのを集めて吸収するといい。
それを続けていけば、弱いながらも復活させられるだろう」
「復活?」
「そうだ。この星で邪神と呼ばれていた者をね。
そうすれば状況は改善するはずだ。
ただし細かく散ってしまっているから、全て集めるには相当の時間が掛かるだろう。
それでも星がおかしくなれば、その分だけ神力を含む物は表面化する。
見つけやすくはなるだろうね」
「私のやるべき事は<混沌の種>を見つけ出して吸収する事ですか。
それでも邪神が復活するのでしたら、やらない訳には行きませんね」
「そうだね。
そもそも君を生み出したのはおそらく神だし、それを願っての事だろう。
とはいえ星に下ろす為に随分と弱体化させてあるね?
君は常に百万分の一ぐらいしか力が出ないように封じてある。
ま、それぐらいしなきゃいけないのは神の子だから当然なんだけど」
「…………え?」
「百万分の一。
さっき私が言ったろう? 本体で下りたら星が崩壊するって。
神の力とは元来そういうものだよ。
君はそもそも神力の使い方も知らないんだ、それでも百万分の一に抑えるもの。
それが神力という絶対的な力さ」
おそらく本当なのだろうと思うが………百万分の一か。
あまりにあまりで訳が分からないな。
というか、想像がつかない。
「別に正しく知る必要はないさ。
ああ、そうだ。せっかくだから私の加護を与えておこう、君は面白そうだしね。
それなら一時的に五十万分の一ぐらいは出せるようになるだろう。
一度使うと当分使えないだろうけどね。
本当に勝てない相手が出てきたら使うといい」
「えっと……いいんですか?」
「構わないさ。
追い詰められてピンチになった時、そこに起死回生の一撃を放てるようにする私の加護。
いいね、実に良い。熱血系主人公の読み物みたいじゃないか。
私はこう見えてもテンプレ系の熱血主人公は好きなんだよ。
ま、君の性格は熱血系じゃないけどさ」
「は、はあ………」
「ま、よく分からないヤツとここで会話したと思えばいいよ。
後で思い出すだろうしね。
それじゃあ……っと、君は食べ物と飲み物に困ってるのか。
じゃあコレもついでにあげよう。
なに、気にする必要は無いよ、それに関する知識もあげるから。
じゃ」
「えっ? あ……は?」
私は突然渡された物に混乱した瞬間、意識を失った。
…
……
………
「う………ここは?」
私は何をしていたんだったか………そうだ! リビ殿!!
慌てて私は起き上がったものの、その時には焚火のような物も無く、リビ殿も見当たらなかった。
近くには布の袋と何やらよく分からない筒と箱? みたいな物がある。
リビ殿に渡された物で間違いなく、という事は出会ったのは事実だろう。
布の袋の中に入っていたのは小さくて丸い物だった。
ザラザラと沢山入っているが、いったい……ん?
「これは完全栄養食品で、一日に一つ食べれば生きていける?
…………え? 一日にコレ一個でいいのか?」
布の袋と言っても、税の小麦を入れる大きな袋のような物に入っているんだぞ?
少なく見積もっても千個を超えると思うのだが………これが必要なぐらいに長いのか、ここ?
「筒の方は浄水装置?
………ああ。上から汚い水を入れれば、完全に綺麗になって下から落ちて来ると。
そして何回でも使えて掃除要らず?
これもそうだけど、どれぐらい長く居る事になるんだろうな?
私の想定が甘かったのかもしれん」
それと箱の方も持って調べるが、これは綺麗にする為の物らしい。
どうやら持って魔力を流すと、繋がっている物は全て綺麗になるようだ。
体の汚れも武器の汚れも取れるのか。便利だな。
リビ殿にとってはどうでもいい物なのかもしれないが、私にとっては大変ありがたい物だ。
とりあえず体を綺麗にしてから先へと進もう。
ちょっと汚れている気がするし、洞窟の中は水分が多いのかジメジメしているしな。
汗を掻くと不快になる。




