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04-19-0144




 Side:アッシュ



 「こっちだ、ついてこい」


 「分かった」


 私は酒場から出されてしまい、仕方なく兵士についていく。

 それにしても食事がとれなかったのは痛手だ。

 しかも多少だけ食べたからか、余計に腹が減っている気がする。

 これなら食べなかった方がまだ耐えられたかもしれない。


 それはともかく兵士達についていくのだが………こっちで本当に合っているのか?

 確か夕方に見た景色では、兵舎はこっちではなかったような気がするぞ。

 こっちには確か………


 「さっさと入れ」


 そうだ、思い出した。こっちにあったのは神殿だ。


 何故こいつらは私を神殿に連れて来たんだろうか?

 いったいどういう事なのか、訳が分からん。


 そう思っていると私は歩かされ、とある一室に連れて来られた。

 何やら扉が豪華なので、偉い者の部屋なのだろう。


 コンコン


 「御命令の者を連れて参りました」


 「入りなさい」


 「失礼します」


 私も中に入るように促(うなが)されるので仕方なく入るが、神殿に連れて来られた理由はなんだ?

 何の為に私を連れて来たのか、ちょっと想像がつかんな。


 「どうやらここまで連れて来られた事に困惑しておられるようですな、アッシュ殿」


 「私の名前を知っている………という事は、狙いは私か?」


 「その通りですよ。

 いやいや、なかなかに大変でしてな。

 我ら神殿も苦労しておるのです、<混沌の種>には」


 「??? ……神殿が<混沌の種>を持っている?

 いったい何の為に?」


 「そんなもの、この世から邪神というゴミを消し去る為に決まっているでしょう!!

 そんなゴミはこの世に必要無いのですよ!!!

 砕かれてなお、下界の我らの邪魔をし続ける。

 そんなゴミは滅ぼしてしまうべき。

 そう思いませんか?」


 「思うか思わんか以前に、お前は狂っているな? 感情が不安定だぞ。

 そういうヤツはよく見た」


 「ふふふふふふ………それは不安定にもなる!!

 邪神の欠片などというゴミが大量にあってはなぁ!!

 この世を綺麗にしても綺麗にしてもゴミが溜まるんだよぉ!!!」


 何なのだこいつは? 完全に狂っているが、周りの奴らも何も言わない。

 となると、こいつらも狂っているのか。

 ……うん? 誰か入って来た?


 コンコン。……ガチャッ


 「失礼します。準備が整いました」


 「おお! そうかね!! では早速連れて行ってくれ。

 そのような不浄なゴミは、他のゴミと同じ所に送らねばな?」


 「「「「「「ハッ!」」」」」」


 キィン!!


 周りを囲んでいる者が剣を抜いて向けて来たので、仕方なく私は先導に従って歩く。

 いったいどういう事なのか分からんが、どうやらこいつらが神殿内で邪神を悪し様に罵(ののし)っている連中らしいな。

 しかしどこに連れて行く気だ?


 私は神殿内の一室に連れて行かれたのだが、そこには私が首を絞めていたヤツが居た。


 「やっと来たか。

 不浄な存在の癖に私の首を絞めるとは………

 本来なら火山にでも放り込んでやるのだが、お前は別の場所だ。

 私に感謝しろよ?」


 「別の場所? ………お前まさか【転移魔法】使いか。

 となると、その赤い髪の色は」


 「その通り。周りを欺(あざむ)く為に、普段から赤く染めてるんだよ。

 それより良かったな? お前はこれからゴミ溜めに飛ばされる。

 そこで死ぬといい」


 「御託はいいからさっさとやれ。我々はお前と違って忙しいのだ」


 「チッ! オレ様が首を絞められた分には全く足りねえっていうのによぉ。

 まあいい、てめえはこれで終わりだ。死ね」


 目の前の男がそう言った瞬間、私の周りに光の魔法陣のような物が現れた。

 なので私は咄嗟に前に向かって【身体強化】で移動。

 魔法を使っている男にぶつかる。


 「ぐぶぇ!」


 上手くいかないかもしれないが、上手くいけばおかしな所には転移されないかもしれない。

 そんな事を思いながらの体当たりだったが。

 当たった感触がしただけで、それ以上はどうにもならなかった。


 …

 ……

 ………


 ピチョン、ピチョン、ピチョン………


 「ぬ? ……ここはどこだ? 真っ暗で何も見えんな」


 私は真っ暗な中でどうするかと考えたが、ランタンが鞄の中に入っていたのを思い出して取り出す。

 ついでに町で色々と買い足しておいたのが功を奏したな。

 私は火打石を使ってランタンの芯に火を着け、そして周りを照らす。

 すると、ここは洞窟のような場所だと分かった。


 上には鍾乳洞のような物も見えるので、間違いなく洞窟の中だろう。

 しかしどこなのかがサッパリ分からない。

 困ったものの、息が吸えない訳ではないので出口がある可能性はある。

 空気草で息が出来るだけなら、出口が無い可能性もあるが……


 「いや、それは無いな。

 【転移魔法】使いは一度でも行った場所にしか【転移】出来ないしさせられない。

 となると、あの男が一度は来た事がある場所だ。

 つまり出口はある」


 私は右手を腰の異空鞄の近くに添えつつ、左手のランタンを頼りに出口を探す。

 どこに行けば脱出できるのか分からないが、とにかく脱出するしかない。

 持っている食料は<焼しめたパン>だけだ。

 これはかなりの期間保つらしいので、数個だけ買っておいた物となる。


 まさかここで役に立つとは思わなかったが、何事も事前の準備が大事だと痛感するな。

 さて、それでは出口を探そうか。


 私は歩みを始めるものの、とりあえずモンスターなどが出ない事に安心する。


 奴らは私の事を不浄だと言っていたが、それはおそらく邪神に関りがある事についてだろう。

 しかしそれを知っている者はほとんど居ないはず。

 奴らはどうやってそれを知ったんだ?


 【転移魔法】使いを利用すれば、盗み聞きは不可能ではないと思うが………

 想像は出来ても分からない事が多すぎる。

 今は考えても仕方ないな。


 ランタンの明かりを頼りに進んでいると、何やら「ゴソゴソ」という音が聞こえて来た。

 私は即座に<邪獄樹の棍棒>を取り出して握る。

 敵ならば即座に殺すのが、安全を確保するうえで最も大事な事だ。


 少しずつ音の鳴っている方へと近づくと、そこには非常に濃い灰色の何かが居た。

 這(は)っているように見えるものの、見た目は正体不明の物体だ。

 手足が異常に長く、それでいて虫みたいに蠢(うごめ)く奇怪(きっかい)な存在。


 全身が非常に濃い灰色で、何かのオーラみたいな物を纏っている。

 それもまた灰色だ。

 いったいこいつはなんだ?


 「DRHNTYWWRFGBYNHNMWER?」


 「は? …………私に何かを聞いている?

 となると、こいつは知能があるのか?」


 「ERRSBGBTYHNHYNHUJWGT?

 WTTNYMIKIU、PIJMUMKKJNHB!!」


 奇怪(きっかい)なヤツが叫ぶと、突然物凄い速さで私に襲い掛かって来た。

 私は咄嗟に棍棒で防ぎつつ右へと跳ぶも、長い手足の癖に異常なまでに速く、私は致命的な傷を受けてしまった。


 「ぐっ!!! くそ、目をやられたか!!」


 長い腕の先にある手、その手に生えている爪で切り裂かれたらしい。

 その所為で全くと言っていいほどに目が見えなくなってしまった。

 仕方なく私は目を瞑(つむ)るが、敵がどこから来るかが分からない。


 どうしていいか分からずに構えたまま固まっていると、先程の奇怪(きっかい)な怪物は私に何もしてこなかった。

 いったいどういう事かと思っていると、突然に先程とは違う声が聞こえて来る。


 (助け、助けて……浄化できる方、私を助けて)


 「助けて? 私がお前をか?

 そもそも私は目をやられて見えんし、助ける事など出来んのだが」


 (あなたは見えてる。目を開けなくても見えてる。

 その目で見て、そして私を殺して……)


 「目を開けなくても見えている? 何を言ってい………」


 私は瞑(つむ)っている目とは関係なく、なぜか周りが何となく理解できた。

 どこに壁があり、どこの岩が突き出ているかなど。


 何故か私は周りの事が正確に理解できるようだった。

 これはいったい、どういう事なんだ?


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