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04-18-0143




 Side:マーヤ



 酒場のルールも知らないマヌケが剣を抜いたから、アッシュが前に出たんだけど………本当にザコが喚いていただけみたい。

 呆れるほど剣を振るのが下手だし、それこそまともな訓練一つ受けていないのが丸分かりじゃない。


 流石にあまりにも怪しいので聞かなきゃいけないわね。

 ここは適当に流していいところじゃないわ。

 場合によっては目的地の情報が手に入るかもしれない。


 「そこで揉めてるあなた達。いったいどこの領地の出身?

 酒場のルールも知らずに偉そうにしている時点で庶民じゃない。

 剣を碌に振った事も無いのが丸分かりのへっぴり腰。

 どう考えても変よねえ?」


 「な、なにがだっ!?」


 「貴族や分家の家なら、最低限の戦い方は習うはずなのよ。

 だって最後に頼れるのは自分だけだから。

 だから戦闘を習うのは貴族の家の者の嗜(たしな)みでもあるわけ。

 それすら出来ていないって事は、あなた達は貴族や分家の家の者じゃない。

 もしくは王都に居る、領地を持たない貴族家の者か」


 「「「「………」」」」


 「ハンターも銀級になれば貴族との絡みがある。

 だから貴族の事に関しては一通り習うのさ。

 あたしは鉄10級だからまだだけど、こっちのは知ってるからねえ。

 で、お前達はどこの誰だい?」


 「「「「………」」」」


 「ふむ、緩めても喋らないなら、喋るようにしてやろう」


 「ゴッ!? ガッ、グゲッ!? ゲブ、グッ?!」


 アッシュがまた首を絞め始めたけど、残りの3人はキョロキョロしているだけで助ける気は無いみたい。

 視線が動いてるのは逃げ道を探してるんでしょうね。

 とはいえ周りは酒場の客が包囲してるわ。

 そして、こいつらは碌に剣も振れないとバラしてやった。


 なので酒場の客も割と安心して囲んでる。

 最悪はジョッキで防げば防げるものねえ。


 当然、酒場のマスターは放置。

 歌い手の収入の邪魔をされたんだし、助ける訳が無い。


 酒場にだって歌い手なり踊り子なりは必要なのよ。

 その邪魔をする客なんて要らないわけだしね。

 助けないのは当然よ。


 「わ、我々が囲まれてるんだぞ! 店主は何も思わんのか!!」


 「酒場のマスターが、歌い手の収入をフイにした連中を助ける訳がねえだろうが!

 酒場には歌い手や踊り子なんかが要るんだよ。

 要らねえのはてめえらだ!」


 「そうだ! 良い気分で飲んでたところを邪魔しやがって。

 このクソガキども、オレ達の方が言ってやる。

 覚悟は出来てるんだろうなぁ……?」


 ボキッ、ボキッ


 指を鳴らして、ボコる前に解してる感じね。

 そして騎士達4人は無視してる。


 ここは別の領主のお膝元だしね、自分達が身分を出して何かをする訳にはいかない。

 流石にここの領主に睨まれてしまうわ、そんな事をすればね。

 だから大人しくしているしかないとも言える。


 ダダダダダダダダダダッ!!


 「ここで何か揉め事が起きていると報せがあった!! 全員動くな!!」


 ここの兵士かしら? 十数人が来たので私達は動かずに適当にお酒を飲みつつ食べる。

 別に逃げなきゃいいんでしょうし、だったら飲んで食べてても問題ないわ。

 そこまで目くじら立てるバカでもないでしょうしね。


 「そこのお前! 首を絞めていたが、お前が揉め事を起こしていた者か!!」


 「いや? 私は剣を抜いたから相手をしただけだ。

 そもそも剣を抜いたのは、ここの4人だからな。

 他は誰も武器などを抜いてはいない」


 「そうなのか?」


 隊長らしき者が周りに聞いているけど、周りの連中は当然事実しか言わない。


 「そうですぜ。

 こいつらが酒場のルールも知らずに歌い手の邪魔をしましてね。

 更にはそれでシラけて帰っちまった奴らを、更に悪し様に罵(ののし)ってたんですよ。

 それで客の一人が怒って文句を言ったら、そいつらが剣を抜いたんです。

 そしたらその大きな客が助けてくれたんでさぁ」


 「ふむ………どうやら間違いないようだな。

 で、貴様は誰だ」


 「私は……このハンター証の通り、鉄1級のハンターだ。

 この酒場に来て夕食と酒を頼んだら、バカどもが剣を抜いたので周りの人が怪我をしないように前に出た。

 首を絞めてはいたが、そもそも殺す気などない。

 こいつらの出自がおかしいので問い詰める為にやっていた」


 「出自がおかしい?」


 「こいつら酒場のルールも知らずに偉そうな事を言ってるし、でも剣は碌に使えないへっぴり腰。

 貴族家に連なるなら剣ぐらい使えなければおかしいのに、酒場のルールを知らない割には剣も使えない。

 ならこいつらは、いったいどこの誰?」


 「…………確かにそう考えれば変だな? 貴様ら、いったいどこの者だ」


 「「「「………」」」」


 「剣が碌に使えんとなれば、平民かそれとも法衣貴族家の者かだ。

 領地持ち貴族は必ず護身を教わるのでな、剣がまともに振れんなど恥でしかない。

 となると領地持ち貴族やその分家の者ではない。

 ………お前達、この4人を捕まえろ。厳しく取り調べを行う!」


 「「「「「ハッ!!」」」」」


 周りの兵士達が捕まえるけど、4人は碌に抵抗もしないわね。

 まあ、あのへっぴり腰じゃ勝てないからでしょうけど。


 「それと首を絞めていた貴様。

 貴様も来い」


 「私はまだほとんど食事をしていないのだが?

 せめて食べてからでは駄目か?」


 「駄目に決まっているだろう! さっさと来い!!」


 「仕方ないな……」


 あーあー、バカどもの所為でアッシュが連れて行かれる羽目になったわ。

 本当に碌なもんじゃない。

 確かに首を絞めていたのは事実なんだけど、そもそも剣を振った奴らと同じじゃないから、すぐに出て来るでしょ。


 仕方ないから、ここの支払いはわたしが出しておきましょうか。

 王都で貴族から巻き上げたお金が沢山あるし。


 冷めた夕食とお酒を飲んだ私達は帰路につく。

 特に酔っぱらうほど飲んでないからか足取りもしっかりしてるし、宿の場所も覚えてる。

 なので場所が分からないなんていうバカを晒したりはしない。


 食事が終わったわたし達は宿に戻るけど、アッシュは流石にすぐに釈放とはならないでしょう。

 それでも最悪は明日領主に話を通せばいいわ。

 そうすれば間違いなく釈放されるだろうし。


 …

 ……

 ………


 次の日になったけど、アッシュは釈放されていないみたい。

 厄介な事だと思うけど、仕方なくわたし達は領主の下へと行く。

 門番に話すと中へと聞きに行き、その後は執事が出てきたので案内に従う。

 そして領主との面会となったんだけど………


 「昨夜、君達の仲間が捕まった?

 ………変だな、私の所には連絡なんて全く入ってないぞ?

 そもそも昨夜、兵士が誰かを捕縛した。などという報告があったか?」


 「いえ、私は存じておりません」


 領主が家令に聞くけど、家令も首を左右に振ってる。

 なら昨夜アッシュを連れて行った、あの酒場に来た兵士らしき見た目の連中は誰なの?

 まさか実在しない………って事はないでしょうしね。

 いったいどういう事かしら?


 「ふむ、その若者が<蛮族将軍の棍棒>を下賜された人物なのか。

 とりあえず騎士達と兵士達に聞いてきてくれ。

 そのような人物と4人組を捕まえたかどうかをな」


 「かしこまりました」


 しっかし、変ねえ……

 昨夜アッシュは間違いなく連れて行かれたわ。

 わたし達と一緒に居ないのがその証拠よ。

 だから連れて行かれたのは確実。


 ……でも、ここの兵士達じゃなかったとしたら?


 その場合はどこの誰に連れて行かれたのか分からないわね。

 困った事に特定できるような情報は無いし、何より兵士の恰好をしてたから兵士だと思い込んでた。

 まさか兵士じゃない可能性があったなんて……


 とはいえ、そんな大がかりな事を犯罪組織がするとは思えない。

 ましてやアッシュを連れて行って、いったい何の意味があるのかって話だし………


 まさか、狙いは4人組のほう?


評価ありがとうございます

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