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 Side:マーヤ



 わたし達は騎士達と共に酒場に向かったんだけど、騎士達は酒が飲めない事に何とも言えない顔をしている。

 副騎士団長が言ったんだけど、流石に不満があるようね。

 気持ちは分からなくもないわ。


 「………仕方ない奴らだな。

 一杯だけだ、それ以上は認めん。いいな?」


 「助かります。酒の一杯も飲めないんじゃ厳し過ぎますぜ。

 それに一杯ぐらいなら問題ありませんよ。夜間の警備でも、寒い夜は飲むくらいなんです。

 オレ達にとっては問題無い量ですよ」


 「そうそう。

 それにオレ達が全く飲めないと、お客さん方も飲みにくいでしょうからね。

 こういう時には率先して飲まないと」


 「ああ。オレ達が飲む事で、お客さん達も遠慮なく飲めるってもんだ。

 だからこそオレ達は「気にしなくてもいですよー」って感じで飲まないとな」


 「オレ達が飲んでこそ気兼ねなく注文できますしね。

 重い鎧で面倒だったんですから、一杯ぐらいは飲めないとやってられません。

 こっちエール4つね! ジョッキで!!」


 「はーい!」


 ジョッキでって言ってるけど、基本的にエールはジョッキでしか出て来ないわよ。

 わたし達も気楽に注文できるようにはなったけど、確かに仕事中の騎士がお酒を飲むのを止められるのも、分からなくはないのよね。

 お酒を飲みながら仕事してるのなんて信用されないし。


 特に治安を守る騎士が酒で酔ってるのはねえ。

 これが家に帰ったり兵舎なら好きにすればいいんだけど、ここはトッカネイル地方とはいえ領地の端だもの。

 あんまり良い事とも言えないのよ。

 一応は騎士と分からない服装だけど、言葉の端々に出るの。騎士言葉が。


 「それにしても賑わいがありますね。

 茶葉が入って来る玄関口だから当然ですけど」


 「当たり前と言うぐらいに当たり前だけどな。

 そもそも王都向けの茶葉の玄関口でもあるんだ。

 沢山の馬車が行き交う場所なら発展するのも当たり前だろうよ。

 それだけで大量の金が落ちるからな。この酒場もそうだが」


 辺りを見回しながらそう言う騎士の言葉に周りを見る。

 確かに商人と護衛と思(おぼ)しき者が多数いるわ。

 茶葉だけじゃないんでしょうけど、隣の領地に王都に売れる物があると、その道だというだけお金が儲かる。

 この領はきっちり恩恵に預かってるのよね。


 もちろん、この領を経由させる為の様々な施策は打ち出して来てるでしょう。

 その甲斐あっての通り道でしょうし、賑わいでしょうから。


 実際に旅がしやすいとか、道が良いとか色々とあるのよ。

 商人だってバカじゃない。

 多少遠回りになっても安全な方を選ぶし、あるいは修理などがしやすい道を選ぶものなのよ。


 「そうですね。

 近いだけで選ぶと馬車に何かあると立ち往生してしまったり、結果として期日までに間に合わないとかあるそうですし。

 そうしない為には多少遠くても安全な道を選ぶそうです。

 盗賊対策としても安全な方がいいでしょう」


 「そりゃね。

 実際あんまり領地の見回りをさせていない領主とか居るんだよ。

 そういう領地にはやっぱり盗賊が多いんだ。

 あたし達ハンターにまで依頼が来る事もあるよ。

 盗賊退治をしてくれってね」


 「それも大変だな。

 獲物を獲るよりお金にならない事もあるんじゃないか?

 盗賊と言ったところで、持ってる物はあまり高く売れないだろうしな」


 「お待たせしましたー」


 おっと、お酒が来たから飲みましょうか。

 わたしも飲む時というか食事の時には大きくなるから、今は大きくというか元の大きさに戻っている。

 酒場に入って席に座る際に大きさを戻したんだけど、騎士達にちょっと驚かれたわ。


 「確かに盗賊退治は儲からない事もあるけど、大きく儲かる事もあるよ。

 盗賊達が依頼者の物だけじゃなく溜め込んでる場合さ。

 その場合、盗賊を倒したハンターの物になるんだ。

 なので盗賊退治を率先して受けるヤツもいる」


 「それどころか噂だけで依頼も無しに盗賊退治に行くヤツも居るわ。

 で、空振りに終わるまでがよくある事よ。

 どこそこに盗賊が住みついたっていう話は、田舎でよくある噂なの。

 本当かどうか分からない噂としてね」


 「そうそう。そんな噂を聞いても意味は無いよ。

 まず盗賊なんて居なくて、結局は唯の噂なんて結果はよくある。

 それも何十年か前に居たっていうだけの噂とかなのさ。

 だから行くだけ無駄だし、反応するだけ無駄。

 本当に被害があるなら、すぐに商人がハンター協会に依頼するよ」


 「逆を言えば依頼が無いって事は、唯の噂って事なのよ。

 そんなものに踊らされてもね、時間の無駄でしかないわ。

 そのうえ本当に盗賊が居ても愚かじゃない。

 逆に捕まって奴隷として売られかねないわ。

 実際にそういう事件ってあるのよ」


 「ハンターは根無し草だからね。

 居なくなっても探さないっていうのが大きいんだ。

 これが村人とかだと騒ぎになるんだけど、地元の者がハンターをやってない限りは誰も探さない。

 何故なら拠点を変えただけかもしれないし、本当に盗賊に捕まったなら口にするのも危険だ」


 「だからこそ盗賊の噂をするヤツは信用できないのよ。

 本当に盗賊が近くに居るなら、むしろ盗賊の話はしないもの。

 それなりに長くやってたり色々と移動した事がある者なら、ハンターでなくても知ってる事よ」


 「という事は、盗賊を討伐する際はハンター協会で依頼を請けた方がいいという事だな。

 そちらだと本当かどうかが分かるから」


 「ところがそうでもないのさ。

 さっきもちょっと言いかけたけど、実は盗賊がハンターを捕まえて売り飛ばす為に虚偽の依頼をしてる事がある。

 ハンター協会としちゃ、依頼があったら張り出さざるを得ない。

 調べはするけど完璧に調べるなんて不可能だからね、だから依頼が罠の可能性も考えて受けなきゃいけないんだ」


 だからこそ大変なのよねえ。

 特に裏の連中はどこにだって居るから、依頼の裏を知るのが難しい。

 わたしが知ってるのの中には、被害を受けた商人も盗賊も裏の者達だったというのもあったわ。

 流石にこんな酒場で堂々とは言えないけどさ、酷い依頼も中にはあるのよ。


 それらを嗅ぎ分けるのは、もう経験しかないのよね。

 経験を積んで行けば「あれ? これ変だな?」っていう違和感を感じられるようになる。

 それが感じられるようになれば騙される可能性も減るわ。


 とはいえ、それって何度も失敗しなきゃ身につかないわけで………

 結局、一番いいのは盗賊の依頼に近づかない事なのよね。

 それが身を守るうえで最善の方法なんだけど、お金が欲しいのはホイホイ受けるのよ。

 そして盗賊に捕まる、と。


 欲を掻くから失敗するんだけど、その一度の失敗で終わりって事も十分にある事なの。

 長年ハンターをしている者は、全員が慎重に生きて来た者達よ。

 それかアッシュみたいな力量の持ち主か。

 どちらかしかないし、アッシュみたいなのは滅多に出てこないわ。


 「それはそうでしょうね。

 アッシュさんみたいなハンターが当たり前って、それもう軍より強い部隊が作れますよ。

 尋常じゃないです」


 「統率者を引き千切るような者が大量に居る部隊とか、どうやっても勝ち目が無い気がするよ。

 むしろそのパワーで大弓や鉄弓を引いてきそうだし、そっちの方が遥かに怖いだろ。

 一撃で金属の鎧すら貫きかねないだろうし」


 「確かにそうね。

 でも、どこまでの弓ならアッシュの怪力を受け止められるのかしら?

 真面目に鉄弓以上を考えないと駄目な気がするわね」


 「私は弓を扱うのは上手くない、というか普通ぐらいしか無理だぞ。

 後、矢にお金が掛かるから、あまり使いたくないな」


 それは弓の宿命だから仕方ないんだけど、確かにアッシュに合う弓は無さそうね。

 サイクロプスやオーガの為の弓っていうのも聞かないし。

 となると一定以上の力を持つ種族用の弓は無いのね。


 そうなると、ほぼ間違いなく素材が無いんだと思う。

 怪力に耐えられる素材が。

 もしくはあっても加工の技術が足りないとかかな?


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