04-14-0139
Side:ラブ
どうやら前の馬車を襲ったのは、盗賊ではなくモンスターだったようです。
アッシュさんは大きな角を持っている皮膚の硬いヤツだったと言っていました。
で、今は馬車の後ろに回って道の上で解体をしている……と思います。
ぼくは既に馬車を進ませてますので、見えないのもあり分かりません。
「アッシュが出してるのは硬牙犀だよ。
皮も牙も硬いのが特徴のヤツなんだけど………こんなトコじゃなく、もっと広い草原に居るはずなんだけどね?
あいつら基本的に群れで生活するし、統率者なら猶のこと群れに居なきゃおかしい」
「その割には一頭だけで出て来てるわね? となると………また<混沌の種>を与えた個体かしら?
その硬牙犀っていうのがどれぐらいの大きさか知らないけど、あれは統率者として大きい方なの?」
「普通のに比べて大きいけど、そこまで大きいという程でもないね。
普通のの体高でも1メートル50センチはある。
だから2メートルじゃステージ2に入ったばかりぐらいじゃないかな?
ステージ2の限界なら多分あれより大きくなると思う」
「となると天然?
でもここに出て来ること自体がおかしいし………なんだか中途半端ね?
なんでステージ2の限界まで大きくしなかったのかしら?」
「その辺りは考えても分からないのでは?
相手が何を考えて寄越したのかも分かりませんし、案外とそこまでしか<混沌の種>が無かったのかもしれません。
そういえばアッシュさんは各ハンター協会に寄って、<混沌の種>を吸収してませんね」
「あんまり迂闊に見せられるものじゃないからじゃない? もしくは帰りで吸収しながら帰る気かもよ。
予定が詰まってるし、余計な時間は掛けていられないでしょ。だから行きは無視してるのかもしれないわ」
「そうかもしれ……って戻って来るみたいだね。こっちに走ってきたよ」
御二人が話している<硬牙犀>というのは、アッシュさんが倒したという事で持って行ってもいいと言われたそうです。
というか、あんな物を馬車に載せては運べないので、必然的にアッシュさんの異空鞄に入れるしかないんですよね。
おそらく血抜きなどは無視し、中の<混沌の種>を取り出してきたんだと思いますが………
ドン
走って追いついたのは良いんですが、跳んで乗り込んできたので、それなりの衝撃がありました。
パルデオムが騒いでいないのでセーフですが、少し気を付けてほしいものです。
「ただいま。
流石にそこまで大きな<混沌の種>ではなかったが、ステージ1という大きさでもない感じだった。
なのでステージ2には入っていただろう。
だが限界まで吸収させたとは思えない小ささではあった。
なのでステージ2に入ったぐらいだと思われる」
「こっちでも話してたけど、大きさ的にステージ2に入ったところじゃないかと言ってたの。
<混沌の種>の大きさを見てもそれなら間違いないわね。
でも、こんな所で出て来るモンスターじゃないみたいよ?」
「そうなんだよ。
アレは硬牙犀というモンスターなんだけど、普通は草原で群れているヤツなのさ。
にも関わらずこんな所に1頭だけ、しかも統率者が居る。
明らかに不自然な部分ばっかりだ」
「つまり、あのモンスターが居ること自体が既に不自然というわけか。
そうなると誰かが嗾けたと考えるのが妥当だろうが、国境の時と違ってステージ2の初期だというのが引っ掛かる。
国境では5体の統率者と最後の1体もステージ2の限界だった。それに比べるとな……」
「いや、そんなのと戦って普通に勝利している時点でおかしいからね?
それにそこまで大量の統率者が出るっておかしいだろうに」
「あれ? ジャネスは知らなかったのね。
まあ、わたしも知らなかったんだけど」
そう言いながらマーヤさんはジャネスさんに説明します。
<混沌の種>を食べさせたモンスターは強くなる事、それをして<混沌の種>を減らしている事などです。
ただし強引に強化したモンスターを倒せないと、危険な方法である事も合わせて。
「なるほどねえ………そんな方法で<混沌の種>を減らしてるなんて知らなかったよ。
おそらく多くの支部でやってるんだろうけど、銀級が居ないとやらせないのかもね。
鉄級のあたしが知らないって事は、おそらく鉄級にはお声が掛からない類のものなんだろうさ。
情報が出回っても困るだろうしね」
「確かに鉄級だと愚か者が紛れているものね。
もし鉄級を招集するなら中身は教えないで普通に依頼するんじゃない?
それで統率者の討伐という形にするんだと思うわよ。
ハンター協会としては<混沌の種>が減ってくれればそれで良いんだし」
「それだけじゃなく、統率者の素材も手に入りますよ。
なのでもしかしたらアッシュさんが消すのを嫌う支部も出て来るかもしれません。
統率者の素材って高く売れそうですし。
依頼に含まれていると死体は渡さないといけませんからね」
「そういう事をしそうな支部には心当たりが幾つかあるよ。
連中ならやりそうだって所がね」
「とにかく今は犯人捜しをしても仕方ありませんし、このまま僕は御者を続けます」
「すまない、ラブ。次の休憩場所で交代する」
特に気にしなくてもいいのですが、お言葉には甘えておきましょう。
まだ読んでない本もありますし、それらは読んでおきたいですからね。
ですので代わってもらえるなら助かります。
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Side:マーヤ
今日泊まる町に着いたわ。
明日は隣の領地に入るけど、今日はギリギリでトッカネイル地方のままよ。
ここは隣の領地のすぐ近くだけど、村じゃなくて町なのよね。
昔から隣の領地とは商売を活発にしているから、という理由みたい。
この辺りは普通の農地だけど、隣の領は茶葉も育てているって聞くからね。それでだと思う。
丁度気候に合った小山が幾つかあるらしく、そこで大規模に栽培しているらしいわ。
なので隣の子爵は、子爵家でも裕福なみたいね。
茶葉も種類が色々とあるらしいし、それらで儲かってる子爵。
普通なら色々と手を入れられたり、圧力を加えられたりするんだけど……。
中身が実直で忠義の徒、しかも不正を許さないとなれば絡むだけ損でしょうよ。
特に手を入れたり圧力を加えるヤツなんて怪しい連中だもの。
逆に不正を暴かれる可能性すらある。
「そういう領主だと面倒だろうねえ。絡んだだけ損だと思うよ。
何かあっても普通は実直な方を信用するだろうし」
「実直というか、伯爵様の話し方だとそれしか出来ないような感じだったがな?
おそらく代々に渡って不器用な方なのだろう」
「そんなに不器用じゃ、貴族社会は渡っていけないんですけどね。
ただ、そういう貴族が一家ぐらい在ってもいいとは思います。
なので、そういう意味でも手を出しにくいのではないでしょうか」
「野暮なヤツとか、欲に濁ったヤツだと思われるものね。
実際そうなんだけど、相手のイメージが良いと予想を超えて立場が悪くなるもの。
そこを考えると手は出さない方が無難よねえ。
しかもそういう不器用なヤツに限って、上の者に可愛がられるのよ」
「裏表が無いからでしょうけど、確かに安心できるっていう部分があると思います。
となるとガルセンツの王にも可愛がられてそうですね」
「猶のこと手は出せないでしょうよ。
っと、そろそろ酒場に行きましょうか。宿の部屋でダラダラしてても仕方ないわ。
既に馬車もパルデオムも預けたし、後は食事に行くだけ。
それに騎士を待たせると五月蠅そうだし」
「だね、さっさと行くに限るよ」
わたし達は宿を出て酒場に行こうとしたんだけど、ちょうど騎士が居たから話すと一緒に行く事になった。
でも副騎士団長などが防具を外しているらしく、玄関の外で少々待つ事に。
適当な雑談を騎士達としていると、副騎士団長と残りの騎士が出てきたので一緒に酒場へ移動していく。
といっても、わたしはアッシュの肩の上なんだけど。
騎士達は何だか疲れているみたいだけど、金属の鎧をずっと着けていれば疲れるのも当然ね。
お酒と食事で少しは疲れもとれるでしょう。
ブックマークありがとうございます




