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01-14-0014




 Side:アッシュ



 ハンター協会近くのタダ部屋に泊まった次の日。

 私は王都の西へとハバン殿と来ていた。

 こっちにはドーヴァルというモンスターが出て来るそうだ。

 私も聞いた事があるが、実物を見た事は無い。

 ただし相当に嫌がられてるモンスターなのは知っている。


 「ドーヴァルは二足歩行の小さなモンスターだ。

 ゴブリン族と似ているが勘違いしないようにな。

 ドーヴァルには話が通じないから声を掛ければ分かる。

 あと、ドーヴァルの連中は誰彼構わず種付けしようとするから気を付けろ。

 男のケツの穴でも突っ込んでくるぞ」


 「嫌われているモンスターだというのは聞いた事がありましたけど、そういう意味で嫌われていたんですね。

 となると………そのドーヴァルというのは駆除するんですか? 安全の為に」


 「そういう仕事もない訳じゃないんだが、ドーヴァルの場合はちょっと違う。

 奴らの生殖器は我々と似た物だが、重要なのは奴らの睾丸が精力剤の材料だという事だ。

 錬金術師が作る精力剤は需要が多くてな、結構な売れ筋商品なんだよ」


 「へー………という事は儲かるという事ですよね?

 その割にはこちらに来る者は多くないようですが」


 「それはな、ドーヴァルが猛烈に臭いからだ。

 奴らは精力旺盛なモンスターなんだが、旺盛なだけに猛烈に臭い。

 実はドーヴァルだけじゃなく、ヴォークソンも同じだ。

 あっちはオーク族に似ているが、奴らの睾丸も薬の材料になる」


 「なんだか変なモンスターも居るんですね。

 睾丸が精力剤の材料になるとか」


 「ヴォークソンは違うぞ? 奴らの睾丸は媚薬の材料だ。

 こっちの方が需要はあるんだが、ドーヴァルに比べてヴォークソンは体も大きく強いからな。

 身長はアッシュと変わらないくらいで、筋肉と脂肪を大量に持ってる。

 その所為でパワーが強く、脂肪で防御も硬いっていう厄介な相手なんだ。

 気を付けないと殺される程度には強い」


 「脂肪で防御?」


 「脂肪が分厚い所為でな、剣で切っても然したる傷にならないんだよ。

 それにヴォークソンの皮膚は硬い。生半可な武器じゃ切れないし刺さらないぐらいだ。

 昨日のファングボーアを考えれば分かるだろうが、武器が効かないってのは厄介極まりない」


 「ああ、なるほど。確かに昨日のファングボーアは大変でした。

 というより、同じのが現れたら切れないし、どうしたらいいんでしょうね?」


 「その時は、足の方を切るしかないな。

 暴れるだろうが足から血を出すしかあるまい。

 もしくはもっと切れ味の良いナイフを買うかだ。

 それは普通ぐらいのナイフだからな。もっと良いのがあれば替えていけ。

 とにかく良いナイフには優先して金をかけろ」


 「昨日のファングボーアを考えれば、本当にそうした方がいいのは分かります。

 倒せても首が切れないんじゃ、どうにもなりません」


 「だな……っと、そろそろ西の森に来たか。

 ここはドーヴァルが出るってんで嫌われてるんだよな。

 一部の気にしない連中は狩りに来てるが多くない。

 理由は奴らが臭いのと、そのにおいが移るからだ。

 お前もやってみれば分かるが、覚悟はしておけ」


 「分かりました」


 とはいえ闘技場でも臭い敵というのは居た。

 触手をウネウネさせてくるヤツなんかは粘液が異様に臭かったのを覚えている。

 確かヌグベラとかいうモンスターだったと思うが、アレ一回きりで2度と戦う事はなかったな。

 私としては助かったとしか思えないが。


 私は杖代わりに地面を突いていた金棒を持ち上げ、森の中へと進入していく。

 昨日言われた通りに木に傷を付けて行こうかと思ったら、傷が付いている木を発見した。

 今日できたような新しい傷ではなかったので、誰かが定期的に狩りに来ているのだろう。


 「傷が新しくないって事は、ここによく来るヤツが居るな?

 それなら傷を見つけながら進んで行くか。

 それにしても臭い森だぜ。ドーヴァルが居る森ってな、本当に分かりやすい。

 アッシュも覚えておけ、これがドーヴァルの臭えにおいだ」


 「なるほど、確かに精のにおいが酷いですね。

 とはいえ濃いにおいの方向は分かりますので、ドーヴァルとやらが居る場所は分かります」


 「そりゃ便利だなと思うも、この状況で嗅ぎ分けるお前はすげえよ」


 「いや、より臭い方向が分かるだけです。

 …………あれ? これって臭いにおいが少ない方へ行けば森から出られるんじゃ」


 「……案外そうかもな。ドーヴァルの居る森でしか出来ない方法だが」


 「あっ、そうか。それじゃ意味が無いな」


 流石に必ずドーヴァルが森に居る訳ではないので、あまり意味が無い。

 とはいえドーヴァルだけではなく臭い森なら使える方法だろうし、覚えておいて損は無いな。

 臭くない方向へと行けば外に出る可能性が高い。

 迷った際に役立つだろう。


 私はにおいの濃い、つまり臭い方向に向かって歩いていく。

 すると、全身が茶色の2足歩行モンスターがいた。

 どうやらアレがドーヴァルというモンスターのようだ。

 全身がツルツルで、なにも身を守る物を着けていない。


 「そもそも連中に何かを身につけるという知恵は無い。

 奴らが出来るのは精々が棍棒を持つくらいだ。

 稀に木を齧(かじ)って作ったような棍棒を持っているのが居る。

 あるいは棒を持っていたりとかな。

 とはいえ武器といえばそんな物だ」


 「あれは何も持ってませんし、殺してしまっても良いのですよね?」


 「睾丸以外に売れる場所は無い。

 それに………ドーヴァルは同族食いを普通にする。

 だから死体は放っておいて構わない」


 「同族食い……」


 禁忌と言われるような事も、知恵など無い者は当たり前に行うのか……。

 とはいえ私も知恵が無ければそんな者だったのかもしれないな。

 見下すよりは、自分がそうではなかった事を喜ぼう。

 さて、それでは………


 ダッ! ………ドゴン!!


 金棒を頭に振り下ろすと、ドーヴァルの頭は簡単に潰れた。

 前からだったので良かったが、真っ直ぐ振り下ろしていれば中身が周囲に飛び散ったかもしれない。

 そうではなかったので良かったが、これからは出来るだけ水平に振るか斜めに振ろう。


 「頭が見事に潰れたが、相当の威力だったな。

 それはいいんだが、音を出しちゃいけない場合もある。

 特に音を出すと一斉に集まってくるモンスターってのも居るんでな。

 そういう場合はナイフで戦うといい」


 「確かに私が振り下ろすと大きな音がしますからね。

 そうか、そういう事にも気を付けなければいけない訳か……」


 「色々とあるが、一つずつ覚えていくしかないさ。

 ハンターなんてな荒くれ者だと思われてるが、本当に腕っぷしだけなら銅級より上には上がれねえよ」


 「そういえば、あの槍持ちにも言っていましたね?

 アレってどういう意味だったんですか?」


 「銅級から鉄級に上がる為には試験があるんだよ。

 その試験は一定以上の知識と経験に戦闘能力が要求される。

 つまり本当の実力者は鉄級から上なのさ」


 「つまり銅級は……」


 「繰り返し仕事をしていりゃあ、誰だって銅10級までは上がれるってこった。

 そういえばアッシュ、昨日のファングボーアを売った後の木札。

 アレちゃんとハンター協会に提出したか?」


 「えっ? あれって提出する物なんですか? 単なる記念品か何かだと思ってました。

 鼠や兎の時には無かったので」


 「鼠や兎だと貢献度は上がらねえからさ。

 ハンター協会では貢献度というのを定めていてな、それで昇級が決まるようになってる。

 昨日のファングボーアなら一気に木の10級まで上がるんじゃねえか?

 あれ新人が一人で戦うような相手じゃないからな」


 そんな話をしつつ私はドーヴァルの睾丸を切り落としたが、凄く臭くて難儀をした。

 一応縄を買った際に布袋も買ってはいるが………これは鞄の中に入れては駄目だな。

 持ち歩こう。


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