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01-13-0013




 Side:ハバン



 「それで? 話とはなんだ?」


 オレはアッシュと別れマスターの下に来ているが、どうやら随分と忙しいみたいだな。

 とはいえ伝えるというか、報告を怠(おこた)るわけにはいかん。

 マスターは報告をしないと面倒臭いからな。


 「報告です。アッシュは魔力を身に循環させる事で大きな力を出す事が可能だと言っていました。

 おそらく身体強化系でしょうが、相当に荒々しいです。

 おそらく自己流であり、何となくでやって来たからでしょう。

 その状態でもレッドオーガと仇名(あだな)される程の怪力ですよ」


 カリカリと字を書いていたマスターのペンがピタッと止まった。

 まあ、そうだよなぁ……この情報を聞けば止まるわな。


 「つまり………ヤツはそんな荒々しい使い方で、フーダ100体を倒せるだけの身体能力を得ていたと?」


 「ええ。本人は呼吸と共に取り込んだ力を循環させると言っていましたよ。

 どうも自分の中に在る魔力に気づいてないみたいですね。

 いえ、自分の中に結構な魔力がある事を自覚していない。

 だから外部から魔力を入れてからでないと、自分の体の中の魔力が動かせない。

 なんていう歪な事になってます」


 「なるほどな。しかし………そうなるとオーガやサイクロプスではない。

 連中は種族的に魔力が乏(とぼ)しく、身体強化が使えても僅(わず)かでしかないからな。

 しかしアッシュは元々の身体能力が高く、更に魔力も豊富に持っている。

 となると……」


 「オーガみたいな身体能力に、妖精族には届かないまでも十分な魔力。

 そして身体強化を使うと何故か赤くなる肌。

 これだけ特徴があるのに、そんな種族聞いた事が無いんですよ。まったく」


 「私もだ。

 そもそも身体強化をしたら肌が赤くなるなど、特徴があり過ぎるだろう。

 そんな種族が居たら一目で分かるぞ。

 にも関わらず、聞いた事すら無いわ」


 「どこか遠くの国に居る種族でしょうかね?」


 「可能性が無い訳ではないが………分からんな。

 見た目はオーガに近いが、人間の大柄な者にも近い。

 本人は器用であるし力も強い。

 頭もよく、十分に様々な物事を考えられる」


 「なんですかね? その優秀な種族。

 そんなの居たら様々な種族の女が黙ってませんぜ」


 「確かにな。

 各種族はいつだって優秀な者を求めておるし、それは何百年も前から変わっておらん。

 その優秀さは知られておるのに、なぜ闘技場でのアッシュは差別されていたのやら……?」


 「アレじゃないですかい?

 闘技場のオーナー達だけじゃなく、嫉妬した町の男達がそういう風にしたのでは?

 今日は1メートル50ぐらいあるファングボーアを一撃で倒してました。

 あれだけの事が出来るなら、女どもが放っておかないと思いますよ」


 「そんな大物が居たのか? どこにだ!?」


 「北東の森ですよ。

 2人の銅級ハンターが殺されてましたが、あれだけのデカブツなら仕方ありませんや。

 むしろ森のヌシと言えそうなアレを一撃で倒してる方がおかしい。

 殺せた訳じゃありませんが、突進に向かって振り下ろして瀕死ですぜ? しかもアッシュは木の棍棒だ」


 オレがそう言うと、途端に機嫌が悪くなったマスター。


 「は? ……木の棍棒だと!? なんでそんな物しか持っていない!!」


 「怒らないで下さい。

 木の棍棒っつっても、こっちも1メートル50センチぐらいある馬鹿デカイ棍棒ですよ?

 サイクロプス用の棍棒ですからね。

 帰りに割れてるのが見つかったんで、一発で壊れちまいましたが……」


 「私は何故そんな武器を持っていると、聞いたんだが……?」


 「正直に言って訓練場の頑丈なだけの剣より頑丈ですぜ?

 それが一撃で割れるんです。持って行ってたって一緒でしょうに。

 それにアッシュが自分で買うっつったんですから、そりゃ尊重してやるべきでしょうよ」


 「ヤツはそんな金を持っていなかったはずだぞ?」


 あ、そういや、その事をマスターに話すの忘れてた。

 こーりゃ説教コースかね?


 「オレが男爵の妹の懐にあった金を盗んでおいて、それをアッシュに渡したんですよ。

 今日の朝でしたから報告できませんでしたけど、その程度はアッシュにゃ受け取る権利はあるでしょ」


 「………そうだな、それに関してはよくやった。それに関してはな。

 なので説教は許してやる」


 「そりゃ助かります」


 マジで助かった。

 マスターは説教に愚痴を混ぜて来るから鬱陶(うっとう)しいんだよなー、気持ちは分かるんだけどよ。

 それがなきゃ良い方なんだが……


 「しかし、それだけの戦闘力があるとなると、ますます巡回狩人にしたのは正しかったな。

 鬱陶(うっとう)しい阿呆どもが五月蠅いのもあるのだが、流石にここまで上手くいっていないのはおかしい。

 どう考えても何かの原因があるはずだ」


 「でしょうね。

 オレの方にも情報はありませんが、流石におかしいってのは分かりますよ。

 たとえば………隣国の連中とかね」


 「………その可能性が否定できんのだ、特にヤツを行かせる国境や山岳地方はな。

 暗躍されていても分からん事が多いし、公権力が動くと逃亡している節もある」


 「地方の騎士団は動きがトロいですからね。

 しかし、そういう裏の事が出来るヤツをついて行かせた方がいいんじゃないですかい?

 オレは動けませんが……」


 「分かっているが、極秘任務となれば貴様以上の者は存在せん。

 もちろんアッシュを前に立たせてサポートという形なら大丈夫なのだが、それに適した者が居るとはいえ………」


 「………あぁ、<男嫌い>ですか」


 「そうだ。

 アイツはサポートという意味では抜群なのだが………昔、尻を掘られた影響から男は駄目になっている。

 なのでアイツを動かす事はできん」


 「難儀な事ですね。

 オレはお偉いさんとの間で動けず、<男嫌い>はアッシュが男なので不可。

 他に誰か居ませんでしたかね?」


 「今は思いつかんし、もしかしたらアッシュが誰かを拾うかもしれん。

 一緒に成長するなら信用は出来るであろう、どうせお前が信用するなと教えただろうしな」


 「まるでオレが他の連中を信用しないみたいに言わないでくれますかね?」


 そうは言うものの、マスター達は知ってるから何とも言えんな。


 「お前が今までにどれだけ裏切られてきた事を知っていると思っているのだ?

 その度に私とリテュナが助けてきたのだろうが。

 もちろん忘れていないと分かってはいるがな」


 「もちろん忘れてませんよ。

 御二方に助けてもらわなきゃ、オレなんてとっくに死んでますからねえ」


 本当に死んでたんで笑う事もできねえが、それでも今はいい思い出で済んでる……か?



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 Side:アッシュ



 しかし、まさか一頭で大銀貨4枚もの高値で売れるとはな。

 あの値で売れるのであれば、欲に濁った眼をするのも分かるというものだ。

 それより夕方になる前に武器を買いに行かねばならん。

 棍棒を買った武具屋に行って店主に割れた棍棒を渡そう。


 そして。これより硬い武器をくれと言ったら売ってくれるはずだ。

 私はあまり武器の良し悪しは分からんからな。

 頑丈であれば何でも良かっただけに、どこを見ればいいかなどに詳しくない。

 っと、到着したか。


 「ごめん。

 店主から買った棍棒なのだが、非常に大きなファングボーアの頭に振り下ろしたら、この通りに割れてしまった。

 なのでもっと硬く頑丈な物は無いだろうか?」


 「……………これを使え」


 そう言ってサイクロプスの店主が指さしたのは、円い環がついている金属の棒だった。

 いや、持ち手の下が環になっているのか?


 「これは金棒と呼ばれるもの。

 あの木の棍棒が割れるなら、お前はコレを使えるはずだ」


 「………前に使っていた頑丈な剣より軽いな。だが、そこまで軽いわけでもないか。

 この環がよく分からないが、これなら確かに壊れにくいだろう。幾らになる?」


 「………大銀貨2枚でいい」


 「これは金属の塊と言ってもいいくらいだ。

 そんなに安くで売れる物ではないだろう? ちゃんと適正な価格で買う」


 「………分かった。大銀貨4枚だ」


 「ちょうど木の棍棒を割ってくれたファングボーアの売値と同じだ。問題なく買える。

 ではこれで」


 私は店主に大銀貨4枚を支払って武具屋を後にした。


 鉄の棒は先が直径20センチぐらいで棘が付いており、手元には円い環のようになっている部分がある。

 金棒という名前の武器だそうだが………この円い環がすっぽ抜けるのを防いでくれるみたいだな?

 意外に便利な部分なのかもしれない。


 さて、明日からも狩りの練習だし、早く食事をして休もう。


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