04-12-0137
Side:ラブ
アッシュさんがメイドに何かを聞いていましたが、それは井戸の場所だったようです。
聞くと、どうやら体を洗いたかったようで、ついでにぼくも体を洗う事にしました。
馬車の中だったとはいえ、それなりに体も汚れていますしね。
何より濡らした布で拭くだけでは、どうにも綺麗になった気がしません。
世の中には【水魔法】使いに全身を洗ってもらう方も居るそうですが、流石に道端で裸になるのはちょっと……と思います。
出来る方は出来るんでしょうけどね。
僕達は布と石鹸を出し、裸になって体を洗っていきます。
それ自体はいいのですが、何故か青い髪のメイドと赤い髪のメイドがずっと居ますね。
何故いるのかと思ったら、どうやらぼく達の服を洗ってくれているみたいです。
助かるんですけど、目線が完全にアッシュさんの裸に向いてますよ?
そしてそれに一切動じないアッシュさん。
凄いのか無頓着なのか、それとも慣れているのかは微妙なところです。
色々と違法闘技場でやらされたって聞きますしね。
それはともかく体を洗い、背中だけはアッシュさんに洗ってもらいました。
ぼくもアッシュさんの背中を洗ったんですが、身長差があり過ぎて大変でしたよ。
それでも洗えましたけどね。
そんな体を洗うのもようやく終わり、ぼく達は綺麗にしてもらった服を着こんで部屋へと戻ります。
すると、何故かマーヤさんとジャネスさんが居ました。
いったいどうしたんでしょうか?
「あっ、やっと戻ってきた。あんた達いったい何処に行ってたのよ。
部屋に来たら居ないしさ、探し回るのもアレだから待つ羽目になったじゃない」
「待つ羽目になったと言われてもな? 私達は井戸で体を洗っていただけだ。
せっかく泊まるのだから、ついでに体を綺麗にしておきたくてな」
「ですね。濡れた布で拭くだけじゃ、やっぱり綺麗になった気はしませんし。
石鹸で体を洗ったおかげで、本当に綺麗になりました」
「ああ、そういう………わたしも綺麗にしてこようかな?」
「……そうだね、あたしも綺麗にしてこようっと」
何故か御二人はそう言うや、そそくさと部屋を出て行ってしまいました。
そこまで気にするほど臭いわけでもありませんでしたし、特に気にしなくても……
……って、アッシュさんって鼻が良かったんでしたっけ?
明日合流する副騎士団長さんも犬人族の方ですし、体を洗っておいて正解でしたね。
ここからはちょっと綺麗にする感じで進みましょうか。
副騎士団長さんに臭い連中だったと報告されても困りますし。
「そうだな。
上に上がったのだからそういう事にも気を使えと言われたし、依頼者によく思われるように務めろとも言われた。
鉄級の者には猛烈に臭い者も居たから守っていないのも居るのだろう。
そういう者は上に上がれなさそうだが」
「ですね。ハンター協会の受付嬢が細かくチェックしているような気がします。
特に女性だと細かく厳しくチェックするでしょうし、笑顔で上げない査定をしているんじゃないでしょうか?」
「その可能性は高そうだな。
実際にロッドン殿は細かい事を気にしない山髭族であったが、臭くは無かった。
そういう意味では銀級らしく気を付けているのだろう」
「でしょう………そういえば御二人は臭かったんですか?
アッシュさんは鼻が良いですけど、そのアッシュさんはどう思いました?」
「そこまで気にする程でもないと思うがな。
それぞれの者の臭いというのはどうしてもあるし、それが多少といったところだ。
私でそう思うのだから、一部の獣人しか感じぬのではないか?」
「その程度なら問題ないと思いますけどね。
とはいえ男性陣が綺麗にしてるのに、っていうのはあるんでしょう」
「だろうな。
流石に男二人は綺麗にしていて、女二人が綺麗にしていないというのは、些か印象が良くない。
ま、綺麗にしに行ったので問題は無いだろうがな。
私達はそろそろ寝るか。
貴族家のベッドだし、しっかりと寝ておかないといけない」
「ですね。今日はしっかりと寝ておきましょう。
といっても、今まで野宿なんてなかったので、しっかりと眠れていますけどね」
そう言いつつぼくはベッドに入る。
野宿だと誰かが起きて見張りをしなきゃいけないけど、そもそも野宿をする事が滅多に無い。
町や村なんて基本的に一日で行ける距離に作られてる。
正しくは行商人が朝から夕方までに辿り着ける位置だ。
そういう位置に作らないと行商人が来ないし、税を払う際にも困った事になる。
常に野宿をしなきゃいけないなんて、盗賊に襲ってくださいと言っているようなものだしね。
だから基本的には朝から夕方前までに辿り着ける場所に町や村はある。
という事は、移動で野宿なんてまず無い事であり、満室でない限りは宿に泊まれるって事でもある。
ここから目的地までも、野宿をする場所なんて無いだろう。
そもそも一領地の領都へ行くんだしね。
おっと、考え事をしていてもしょうがない。そろそろ寝よう。
それじゃ、おやすみなさい。
…
……
………
次の日。
朝食を御馳走になった後、副騎士団長と顔合わせとなった。
犬人族って聞いてたから温和な方かと思ったけど、物凄く獰猛な感じの方でビックリ。
何というか、一度噛み付いたら絶対に放す事は無さそうな顔をしてる。
説明しにくいけど、それぐらい獰猛な感じ。
「自分はデッフォルン家の副騎士団長である、チワンと言います。よろしく」
チワン? そんな優しそうな名前の顔じゃないよ。
どう考えてもブルって感じの顔じゃないか。
この方の両親は何故チワンなんていう名前を付けたんだろう?
どう考えても名前を間違えてるよ。
そう思ったのは他の皆も同じのようで、アッシュさんもマーヤさんもジャネスさんも微妙な空気を醸し出してる。
もちろん顔や口には出さないし、ぼくも出さないんだけどね。
ちなみに他の騎士4名は後ろで笑顔になってる。
おそらく副騎士団長の名前と顔が合ってないのは有名なんだろう。
とはいえ顔を見て名前を聞いたら、誰だって微妙な気分になると思うよ?
本当に合ってなさ過ぎるし。
「それでは行きましょう。
我らも馬車で行けと言われていますので、速度は変わらぬと思います。
2名は外で警戒、残りは御者と待機組だ。準備せよ」
「「「「はっ!」」」」
笑顔というか、若干「ニヤニヤ」していた騎士達だけど、命令されれば即座に真顔になった。
こういうところは騎士だと思うね。
すぐに準備は終わり出発となったので、ぼく達も出発する。
御者はアッシュさんだけど、これはアッシュさんだとすぐに動けるからだ。
もしアッシュさんが飛び出したら、ぼくが代わりに御者をする事になってる。
理由は一番弱いからであって、御二人が御者が出来ないからじゃない。
というか、御者が出来なかったのはアッシュさんだけだったんだよね。
だからぼくから習ったんだし、すぐに出来るようになった。
こういうすぐに学ぶところは素直に凄いなと思う。
面倒だなって思わないみたいで、結構楽しそうだったし。
怪力とか<混沌の種>が消せるだけじゃないんだよね、アッシュさんって。
色々学んだり努力する事を当たり前にするんだ、あんなに強いのに。
そういうところは見習った方がいいんだと思う。
なかなか難しいんだけど、学んでおいて損は無いしね。
それにぼくもまだまだこれからだ。
後900年ぐらいは生きる以上、学ぶ癖を身につけておいた方がいいだろう。
決して無駄にはならないんだし。
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