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04-11-0136




 Side:ラブ



 戦争ゲームをしていたらしいですが、最後の最後にマーヤさんが突撃して押し込み勝利していました。

 ただ………マーヤさんが突っ込んできた後、アッシュさんはわざと手を抜いたような気がします。


 いえ、それは正しくないですね。

 わざわざ乱戦に付き合った結果負けたというべきでしょう。


 まあ、遊びですから決して間違いではありません。

 あのままアッシュさんが作戦勝ちで終わっても良かったと思いますが、別に何かを賭けている訳でもありませんからね。


 それよりも時間となったので、ぼく達は食堂へと移動をしました。

 伯爵家の食堂は広く、多くの人を招けるようになっています。


 これはウチも同じなんだけど、無駄だとしか思えないんだよね。

 とはいえ席が足りないとなれば恥にしかならないから、大きく作ってあるんだけど。


 それでも無駄に大きいとしか思えない。おまけに寒々しいしさ。

 多くの者が居る酒場とかで食べるようになって分かったけど、あの食堂の一部しか使わないのは心まで寒くするものでしかない。

 それがよく分かるんだ。


 「それにしても、今日は本当にすまなかったな。

 まさか息子と娘が揃いも揃って直感を感じるとは思わんかった。

 とはいえアッシュに直感を感じた娘は分からなくもないのだが、そなたは有名な者なのか?」


 「彼女は鉄10級のジャネス。

 一時期は左手が碌に動かなかったらしいけど、今はわたしが治療したから治ってるわ。

 それと有名ならしい兄はハンター協会の裏で、<鋼のバルザーグ>と言われてるそうよ」


 「おお、あいつか! あれの妹だったとは思わなんだわ。

 しかも鉄10級とは鍛えられているようだし、なるほど………あの愚息の直感が働くのも納得か」


 「ですね。鉄の10級といえばかなりの高位。

 銀級にも手が届きそうですし、そういう将来も感じ取ったうえでしょう。

 ところで、そちらは……」


 「私は鉄1級のアッシュと言います」


 「鉄1級……」


 娘さんが反応しましたが、何やら困惑しているみたいです。

 おそらく鉄1級という情報と自分の直感に大きな差があるからでしょうけど、アッシュさんは級位じゃ計れませんからねー。


 「アッシュを級位で計るのは止めなさい。

 ついこの間まで銅の10級だったけど、それは登録から半年も経たずによ。

 しかも統率者を引き千切って倒すほどの怪力だし、あっさり鉄級に上がるのも当然なの」


 「アッシュ。お前さん統率者を引き千切ったのか……」


 「閉所でしたし、棍棒を振りかぶるより鷲掴(わしづか)みにして引き千切った方が早そうでしたので。

 それで首の近くから引き千切りました。

 【身体強化】をすれば可能でしたが、なかには大変なのも居ましたね」


 「ステージ4手前のヤツだろ?

 あたしも見てたけど、あれを引き千切る時点でとんでもない怪力なんだよね。

 そりゃ<蛮族将軍の棍棒>を平然と振り回すはずさ」


 「やっぱりアレ、普通に振り回せたんだな。

 持っても無事な事はともかくとして、重量もとんでもない代物だ。

 アレを振り回せるだけで、並のオーガなんて相手にならんぞ。

 娘の直感が働いたのも当然ではある。ただし早すぎるがな」


 「まだ11歳じゃねえ、流石にどうにもならないわ。

 そもそも250年は生きる種族の11歳はね、とてもじゃないけど子供よ。

 体が出来上がってないし、無理なものは無理ね」


 「………」


 ガッカリした感じですけど、諦めて下さいとしか言えませんね。

 そもそもアッシュさんは邪神の生まれ変わりの可能性もあるんです。

 それを考えた場合、貴族でも簡単に子を為す事は出来ないんですよ。


 ガルセンツの王族だって関わって来るでしょうし、そもそもマーヤさんもジャネスさんも狙ってますからね。

 あの姉達が男性に向ける目と同じ目をしているので分かるんですよ。

 ぼくも分かってない子供ではありませんので、その程度の事ぐらいはね。


 とはいえ肝心のアッシュさんがアレですし、嫌な女性の相手をさせられてきたという事で、あまり行為に良い印象を持っていないようなのですよね。

 まあ、アッシュさんにとっては強制された労働のようなものだと聞きます。

 それなら印象が良くないのも当然ですね。


 「アッシュもそうだけど、ラブもそれなり以上には優秀よ?

 半年経たずに銅の10級だし、アッシュと同じタイミングで試験を受けて合格。

 同じ鉄1級だし、さらには辺境伯家の家柄よ? ヴァンパイア族だけど」


 「それではオーガ族と子は作れませんね。

 ヴァンパイア族は同族か人間のみだと聞きますし」


 「そうですね。

 それにぼくはまだ62歳なので、結婚や子供は早過ぎます。

 あと100年は早いと思いますし、そもそも家に許可を貰わなければいけない立場です。

 三男でもありますから、意味がありません」


 「それでも血筋は普通より良いじゃない。

 父親は辺境伯、母親は有名な二つ名持ちのハンターでしょう? 血統でいえば相当に優秀なのよねえ。

 何故それで早くに修行の旅に出されたのかサッパリ分からないけど」


 その会話は相手が貴族だと面倒な事にしかなりません。

 なので話題を変えないと……


 「母が裏に居るのかもしれません。

 強くなる為には早め早めが大事だと言っていましたし、そうであれば早めに送り出すのも分からなくはありませんので。

 それよりも少し気になる事がありまして、お聞きしても構いませんか?」


 「うん? まあ、答えられる事ならば構わんが……」


 流石に貴族家の秘密とかを聞いたりはしませんし、なので問題は無いと思います。

 ぼくとしては不思議だったし引っ掛かってたんですよね。

 ですから、どうしても聞いてみたかったんです。


 「御息女を女性部隊に預けると仰(おっしゃ)った際に、伯爵家として都合がよいと言っておられました。

 アレはどういう意味なのでしょう?」


 「ああ、それの事か。特に話せない事でもないし、知られている事なので問題無い。

 我が領の騎士団。その女性部隊は、女性として知っておくべき事も一通り習うのだ。

 刺繍や料理に裁縫、それに掃除や花の水やりなどなど。

 婚姻の為に必要な事も習うので、ウチの騎士団の女性部隊は結婚率が高いのだ」


 「直感を受ける男性も多くなるので、必然的に華の部隊となる訳です。

 私もそこの出身ですので、今はこうして問題無く過ごせています」


 「伯爵家だから平民じゃないわよね? 他のオーガ族の貴族っているの?」


 「彼女は東方の伯爵家の分家の家だな。

 ウチの騎士団の女性部隊は割と有名でな、結構色々な貴族家の種族を受け入れている。

 花嫁修業的なものではあるが、当然騎士の訓練が中心なのでな。泣き言は言わなくなるのだ」


 「つまり、ここの女性部隊で訓練を受けました。

 っていうのは婚姻相手として選ばれやすいって訳ね。武官系だけでしょうけど」


 「それがそうでもない。文官系の家でも望む家は多いのだ。

 なにより体力があるからな、文官系の貴族女性より子供を産んでも無事な可能性が高い。

 出産には体力を多く必要とする。

 もちろんそれ以外にも様々だが、基本的に貴族女性に足りていないのは体力だ」


 そもそも屋敷から出ない貴族女性が多いですからね。体力が無いのが当たり前です。

 ぼくもそこまで体力がありませんでしたが、最近は多少ついてきたと思います。

 それでもまだまだでしょうが。


 ……ああ、アッシュさんは例外です。

 体力も筋力もあり過ぎますからね。そんな方と比べても無駄ですよ無駄。

 最初から規格が違うといった方が分かりやすいでしょう。全く違うので比べること自体が間違いです。


 そんな事を考えていたら会話と食事が終わったので、客室へと案内されました。

 どうやら後は寝るだけですが、アッシュさんは何やらメイドに聞いていますね?

 何を聞いているのでしょうか?


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