04-09-0134
Side:マーヤ
まさかオーガ族の直感の所為でこんな騒動が起こるなんてねえ……
ついでにジャネスがアッシュに大して直感を感じているとは思わなかったわ。
まるで私と同じね。
あまり知られてないけど、妖精族は波長で伴侶を探すのよ。
波長と言っても何か根拠がある訳じゃなく、なんというか「ピン」と来るものがあるかどうかってところ。
かつても弱く「ピン」と来る男は居たんだけど、どうにも納得できない感じだったのと若かったから無視してたのよね。
まあ、今もまだ若いんだけど。
ただアッシュに会った時には「ピン」じゃなくて「ピキーン!!」とか「キュピーン!」って感じだったのよ。
こう……「何か凄いのキターッ!」って感じ? そういう感じがアッシュと初めて会った時に在ったの。
いや、今も在るんだけどね。
それはともかく、アッシュの種族が分からないのにも関わらず、その感覚が在った事が問題なの。
果たしてわたしとアッシュの間に子供が出来るのか?
アッシュが人間なのかは分からないのよ、にも関わらず波長が合ったと言う事は……
可能性としては高いと思うのよねえ。
それに邪神の生まれ変わりだとしたら、根本的に種族が不明だもの。
もしかしたら全ての種族と子供が作れても不思議じゃないわ。
確証がある訳じゃないけど、神様の生まれ変わりならあり得ること。
妖精族は同族か人間。
闇妖精族と光妖精族は同族とお互いのみ。
山髭族は同族と人間か獣人だけ。
獣人は同族と人間とドワーフ。
人間は結構多数の種族と子供が作れる。
オーガも結構多くの種族と子供が作れるのよね。
サイクロプスは同族とオーガのみ。
ラミアーは獣人と人間。
東の島国に居るっていう鬼は、同族と人間のみって聞いた事があるわ。
それと翼人族も同族と人間じゃなかったかしら?
後は鰭人族も同族と人間かオーガだけだったと思う。
こう考えると、人間と子供を作れる種族って多いのよねえ。
人間が平均的でやや器用っていうだけだからかしら。
人間が居なきゃ絶滅してたかもっていう種族も居るし、ある意味では人間様々って感じねえ。
「翼人族とか鰭人族って、もっと西にいる連中だね。
西の方には多いって聞くけど、向こうは海に面してる国だからなのかな?
こっちは逆に獣人が多いって聞くけど、あたしは国から出た事が無いから分からないよ。
それよりも娘さんだけどさ……」
「おそらくは直感絡みでしょうから、そこまで恥を掻いたという訳ではなさそうですけどね。
それなら良かったと言えますし、教えられるまでは分からない事も多いのですから仕方ない事でしょう」
「だね。あたしも初めて直感が働いた時には戸惑ったものさ。
家族に相談して初めてそれがオーガの直感だと理解したけど、何も知らないなら分からないままだろう。
あんな事を仕出かすのも仕方ないさ」
適当な種族の話を振る事で、何とかわたしとジャネスの狙いから話を逸らせたわね。
何となく恋愛話が好きそうなメイド達にはバレた気もするけど、いちいち口にはしないでしょ。
跡取りと娘の事が余計に拗れるだけだし。
彼女達も揉め事なんて起こってほしくないでしょうから、下らない事は口にしないと思うわ。
っと、伯爵が戻ってきたわね。
「すまんな、度々。
娘から詳しく話を聞いたら、そなた達の言うように直感が働いておったらしい。
とはいえ、それで戦いがどうとかいう話になるのだから、やはり女性部隊に入れねばならん事には変わりなしだがな」
「申し訳ありませんでした。まさか……」
頭を下げて謝罪し、その後で頭を上げたんだけど……
頭を上げた拍子にアッシュと目が合った娘さんは、声も出せずに顔を真っ赤にしちゃったわ。
何か急に初々しい反応なんだけど、これでまだ11歳なのよね。
子供でも女は女だと分かるわー。
「どうやら本当に直感で間違いないようで……
オーガの貴族は直感に従えませんが、これはもう仕方のないこと。
誰しもがそうなのですから、諦めるしかありません。
マルドークもですよ」
「………はっ」
「お前達にマルドークを同行させるという話だったがな、それは取りやめにする事にした。
おかしな暴走をされても困るのでな、騎士団の副騎士団長と数名を充てる。
犬獣人だから問題はあるまい」
「分かりました。
私達はその副騎士団長殿と共に、デットリス伯爵領のワクストンまで行けばいいわけですね?」
「ああ。だが隣の領主のポルドン宛に手紙を書く。
ポルドンの所である程度の情報を仕入れてから行くように。
無視すると面倒な事になるからな、しっかりと情報を聞くついでに挨拶しておけよ。
後、夕食まではゆっくりしているといい。
流石に王宮も絡んでいる話なんでな。我が家も貴族家として歓待せねばならん」
「面倒ねぇ。適当な物でいいわよ、誰も気にしないし」
「そうだろうが、一応な。貴族の建前程度は出さねばならん」
「なんですよねえ。
ウチも大変ですし、どこの貴族家も客を招くのは嫌なんですよ。
もちろん顔にも態度にも出しませんが」
「だな。伯爵家とはいえ、領内の様々な事に金は使わねばならん。
となると結局そこまでの金銭など掛けられんよ。
王都の領地無し貴族ぐらいだろ、贅沢なんぞが出来るのは。
とはいえ、あいつらはあいつらで領地が無いから立場は脆弱だがな」
「何かあればすぐに市井に落とされますからね。
領地経営をしている貴族は辞めさせ難いですが、領地が無いならば気にする事もありません。
簡単に切り捨てる事の出来る便利な駒ですよ。
だからこそ忠義を尽くさないといけないのですが……」
「己の欲ばかり考えるバカはどこにでも居るからな。
っと、ここで話していても仕方ない。とりあえずはゆっくりしててくれ。
後は頼んだぞ」
「「「「「かしこまりました」」」」」
それで伯爵が出てったたから、ようやく本当の意味でゆっくり出来るわね。
って、ラブは早速とばかりに本を読み始めたわ。
実はここに来るまでの町で本を大量に買ってたのよね、ラブは。
「ラブは前の町で大量に本を買っていたが、よくそんなお金があったな?」
「これは捨てられる本だったんですよ。ですから格安で買えたんです。
………ほら、字が色あせていたり霞んでいるでしょう?
ここまでになったら新しいのを作るしかありませんからね。代わりに格安で売られるんです。
ラッキーでしたよ」
「それで多くの本が買えたのか。
相変わらず熱心に読んでるな、表紙を見てもサッパリだが」
「マンドラゴラ……の育て方ぁ? また怪しげな本を読んでるわねえ。
マンドラゴラを育てている農家は居るけど、アレって確か秘伝だったはずよ。
だから本に載ってるなんてあり得ないでしょ」
「確かにね。それに抜き方もあるんだろ?
普通に抜くと絶叫で気絶させられるんだよ、そして種を植えられるって聞く。
生き物の体の中で成長して、やがてその生き物を殺して花が咲く。
それをブラッディ・マンドラゴラっていうんだったかな?」
「そうですね。
ちなみにこの本は、そのブラッディ・マンドラゴラを育てた者の記録みたいです。
ここでいうマンドラゴラは、ブラッディ・マンドラゴラの事ですね。
なかなか面白いですよ。種を植えられたのは、なんと土ウサギみたいです」
「土ウサギ? いったいどうやって……」
「何でもマンドラゴラの栽培農家にお金を払って、株の根元に縄を括って縛る。
その後にマンドラゴラの前に気絶させた土ウサギを置き、縄を引っ張って抜いたそうです。
縄でかなり離れていたらしいですが、頭が揺さぶられるくらいの絶叫だったと書いてありますね」
頭が揺さぶられる………もしかして脳に直接叩きつけてる?
そうなると唯の絶叫じゃないわね?




