04-02-0127
Side:マーヤ
王都を出発する日になったけど、昨夜、アッシュが本当に<ソードモラ教>がやったか分からないと言い出した。
それに対して明確に反論する事は、わたしもラブも出来なかったわ。
本当に<ソードモラ教>がやったっていう証拠も無いのよね。
それに凶悪って言われてても、それが邪神信仰の教団だと微妙に変わって来る。
確かに犯罪は犯罪なんだけど、邪神への信仰は別に変な事でも何でも無いし、問題視しているのは神殿だけ。
それに、そもそも神殿が間違っているのが事実なんだもの。
未だに神殿は<邪神=悪>だとしているし、その考えを崩していない。
まあ、崩せば昔の事を責められるのは明白だし、自分達の権威が失墜するのは間違いない。
そう思っているからこそ認めないでしょうし、認める訳がない。
どれだけ長い期間、多くの人々を惑わしてきたか。
その反動が返ってくるとなれば神殿が崩壊しかねないわ。
もちろん中の奴らは潰されればいいと思うけど、神殿そのものは残さなきゃいけない。
でも今の神殿関係者は邪魔。
とはいえ、そいつらを殺したら昔の神殿関係者と一緒なのよねえ。
だから殺す事も出来ない。
合法的に排除しようにも、居座られると排除なんて出来ないし………なんか八方塞がりね?
だからこそ排除できなくてズルズルと今まで来てるんでしょうけども。
私達は馬車に乗って移動。
前の馬車にアドマグス・デッフォルン伯爵が乗っているわ。
私達の方もパルデオム2頭牽きだから、待遇としては良い方になる。
普通は1頭牽きだしね、それに比べれば早い。
「それにしても、確かに<ソードモラ教>の事は分かりませんね。
今まで言われていたように暗殺を繰り返しているなら犯罪組織なんですが、そこに邪神を悪だと声高に訴えているという事実が混ざると……」
「被害者が被害者に思えないのよねえ。
実際に邪神に風評加害をしているわけだし、そもそも神様に対する風評加害よ?
幾らなんでも許される事じゃないでしょ。
おそらく叩いて悦に入ってるだけなんでしょうけど」
「神に対してする事ではないな。
それでも<ソードモラ教>の連中の暗殺は許される事ではないが、動機になっている部分は分からなくもないのが少々引っ掛かる。
神に対する侮辱だからな、本来なら神殿が糺さなければいけない事だ」
「その神殿が率先して邪神に対する風評加害をしまくってるし、嘘や捏造を流布しまくってるのよねえ。
そう考えると、神様の事で愚か者を誅しているだけだとも言えなくもないのよ。
邪神=悪と言い出した元凶が悪いんだけど、分かっていて続けてる神殿もねえ」
「流石に神殿ですから、邪神が悪でない事は知っているでしょうに。
まるで死んだ者は喋れないから好き放題してもいい。そう言わんばかりにやってますよねえ。
もしかして、神様の中に浄化の女神に横恋慕していた神様とか居ないですよね? それで信徒にやらせたとか」
「「………」」
流石に物語の読み過ぎだと言いたくなるけど、神様の世界も一枚岩じゃないそうだし。可能性が無いとは言えないわね。
ただ、そうなると神様達も巻き込んだ大問題になるとは思う。
それに………邪気を受け止める神様が、本当に邪気に耐えられなかったのかしら?
「横恋慕している神に何かをされて、その所為で邪気に耐えられなくなった、とか?」
「一応聞いておくのだが、今まで読んだ事のある本の内容に、それに近しい物があったりしたのか?」
「………」
どうやらラブが読んだことのある本の中に、そういう展開の本があったようね。
横恋慕している者が主人公を罠に嵌め、恋人を掻っ攫おうとしている物語みたい。
そういうのって昔からあるけど、結局は罠に嵌めた奴が最後は断罪されて終わるのよ。
それは物語だからいいけど、本当にあったら断罪されるまで行くかしら?
ましてや神様なんだから砕かれたら終わりでしょうし、そうなるともう復活しないって事じゃない。
横恋慕のヤツの勝ちって事にならない? いや、正しくは罠に嵌めたヤツだけど。
「確かに罠に嵌めた者が勝ちと言えなくもないが、その横恋慕していたヤツを利用したヤツが居るかもしれないぞ?
横恋慕ではなく、単に邪神が邪魔だった可能性もある。
邪神がここまで悪く言われていても、嘘や捏造で貶められても、神罰一つ落ちないんだからな」
「つまり神々も嘘捏造を認めてるってこと? それこそ本物の邪神、邪悪な神じゃないの」
「そんな神様は居ないと思いたいですが、怪しいものだとも思いますね。
神罰を落とす事もある神様が、何故かこの事に関しては全く何もしない。
決めつけてはいけませんけど、怪し過ぎますよね? 何故そんな嘘や捏造を許すのか」
「本当にね。
これじゃ<ソードモラ教>の奴らが始末していってるのも、世の中に流布されている嘘や捏造の根源を叩く行為でしかない。
もちろん罪は罪なんだけど、そもそも神殿が嘘や捏造を撒き散らしているのも罪なのよ。
だから、どっちもどっちにしかならないわ」
「殺されるまで嘘を止めないんじゃ、殺すしかないですからね。
殺しは駄目だと言っても、殺さないなら永遠に嘘や捏造を撒き散らすわけで………。
だったら嘘や捏造で傷つけるのはいいのか? という話にしかなりません。
どっちにしたって傷つける行為なのは変わらないんですよ」
「神の名誉を貶めているんだから、非常に性質が悪いけどな。
しかもそれを神殿関係者がやっているのだから、最悪だ」
「<ソードモラ教>が暴れているなら、その関わりの話も出て来るでしょう。
まずは伯爵家の領地に行くんだけど、そこでも色々と起きるかもね。
仕事を受けたのはわたし達だけど、実力があるか分からんってケチつけられるかも」
「それはおそらくケチをつけてるのではなく、単に相手の実力を計ろうとしているだけではないか?
もちろん面倒臭いのは間違いないが」
ガタンッ!!
「ふぇっ? な、なに!?」
「前が止まったので止めました。
前の人達も慌てて止まったので、きっと何かあったんだと思います」
アッシュが素早く前を見ているけど、何か分か
「左右から誰か出て来た? 弓矢を持っているという事は盗賊か。
こちらを囲む事は無く前の馬車だけ、しかも騎士が守っている馬車をだ。
明らかにおかしいぞ」
確かにそうね。
狙いやすい護衛の居ない馬車じゃなく、わざわざ護衛の騎士が居る馬車に群がってる。
明らかに盗賊とは思えない動きをしているわ。
まるで伯爵が前の馬車に乗っていると分かっているような………
「とりあえずラブは御者を、マーヤは待機していてくれ。後で怪我をした者が出たら治してもらう事になる。
私はとりあえずでブチのめしてこよう。話も聞かねばならんしな」
「殺さないようにお願いします」
「足をやれば大丈夫だろう」
足をやるっていうか、アッシュの場合は粉砕するんだけどね。
とはいえ今は馬車もあるし、足を潰しても問題無く移動はさせられるもの。
わざわざ背負って運ぶ必要も無いわ。なので足さえ潰したら大丈夫でしょ。
縄とかはアッシュが持ってるし。
アッシュは馬車を下りると、そのまま走って前へと向かっていったわ。
わたしは盗賊どもにバレないように御者席の近くから前を見てる。ラブの背に隠れる形でね。
とにかく状況の把握はしておきたいし、なにかあったら動かなければいけないもの。
とりあえず一人小銀貨1枚なら文句も言わないでしょ。
わたし達としても護衛の騎士という名前の囮が減ると困るからね。治してはおきたいのよ。
最悪はわたし達の方にも来るでしょうけど、アッシュが行ったから大丈夫かしらね?
ラブも特に緊張はしていないようだし、ゆっくりと待つだけで済みそう。
普通の盗賊なのであれば、正規の騎士が負ける相手じゃないわ。
普通の盗賊なら。




