03-44-0124
Side:アッシュ
「ロックセンチピードの統率者を殺した私達は、残っていたストーンゴーレムの討伐に乗り出しました。
ストーンゴーレムは近づくまで動き出さなかったですし、他の虫達もストーンゴーレムは避けていました。
<悪食>には何故か反応しませんでしたが……」
私がそう言うと、マスターが答えを話してくれた。
「ストーンゴーレムが反応するのは、ある程度の大きさからだと言われてるね。
おそらく小さな普通の<悪食>だと反応しないんだろ。
あの大きさのに反応しないって分かっても、意味は無いけどね」
「まあ、それはそうじゃの。
それが分かった所で、あの大きさはしておらんからの。
妖精族が小さくなっておる大きさでさえ、おそらくストーンゴーレムは反応するであろう」
「ガッツリ反応して襲われた事があるわ、昔にね。
採石場のモンスターを退治する仕事だったけど、そこに居たストーンゴーレムは私に反応して襲い掛かって来たわ。
とはいえ大きなストーンゴーレムだったから遅いし、倒した後で建材に利用されてたけど」
建材に利用………
それは大丈夫なのか? 元はストーンゴーレムだった石だろうに。
「石とはいえ元はストーンゴーレムでしょう? 大丈夫なんですか、それ」
「大丈夫に決まってるじゃない。
そもそもストーンゴーレムの発生方法だって分かってないのよ?
王都の壁が急にストーンゴーレムになる可能性もあるんだから、それを考えたら大丈夫って分かるでしょ。
なるわけ無いのが」
「近くに生き物が居たりという場合には、何故かストーンゴーレムなどは生まれないと言われていますね。
不思議な事ですが、学者などがストーンゴーレム発生の瞬間を見た事が無いのですよ。
ですので生き物か何かが観測している場所では発生しないと言われています」
「へー………」
私も「へー」という思いでいっぱいだ。
あそこでストーンゴーレムが発生していたのは、観測する者が誰もいなかったからなのだな。
逆を言えば他の坑道には鉱夫などが入っているので、ストーンゴーレムは発生しないという事か。
なんというか、本当に不思議だな。
「ロッドン殿は<悪食>の巣の掃除、ジャネスは全て倒せているかの確認。
そして私はストーンゴーレムとの戦いに入りました。
最初は小さいというか私の身長よりも低いストーンゴーレムで、その所為で速く焦りましたが、それ以降のストーンゴーレムは簡単でした」
「………簡単に倒せる相手じゃないんだけど、アッシュだから難しくはないのか。蛮族将軍の棍棒もあるし。
それはともかくストーンゴーレムも片付けたんだね?」
「はい。
大きなストーンゴーレムは先制で足を砕き、小さいストーンゴーレムは先生で胴体を破壊。
そうすれば簡単に倒せました。
もちろん、あの棍棒が無ければ難しいのですが」
「普通は硬いしっかりした武器があっても難しいんだよ。
一撃で砕くパワーなんて無いんだからねえ。
もちろん誰にも無いって事はないだけど、そんなパワーを持ってるヤツは一部だけさ。
で、ストーンゴーレムを倒して帰って来たってわけか」
「いえ、まだあります。
その後はジャネスが調べてくれていたんですが、奥に続いている場所がありましたので更に奥へ。
そこに大量のロックセンチピードが居ました。ムカデ団子みたいになっていましたよ」
「うえっ……」 「それはちょっと……」
まあ、気持ち悪く思う気持ちは分かる。
実際に見た私も気持ち悪かったしな。
「まあ、2人の反応も分かる。
実際に見たジャネスは悲鳴を上げて逃げたからな。
それぐらいにウジャウジャ居たし、うぞうぞ蠢いて気持ち悪かったのは間違いない。
戦う私はそうも言っていられなかったが」
「流石に敵を前にして逃亡すんのはどうなんだい?
分からなくはないが、よくそれで鉄の10級まで上がれたね」
「そう言われてもアレは無理だよ。実際に自分の目で見たらあたしの気持ちはよく分かるはずさ。
暗がりの向こうにあんなのがあるんだよ?
それもランタンの灯りで照らされた不意打ちだ。アレを耐えられるアッシュやロッドンが凄いだけさ。
同じにしないでよ」
「まあ、どうしても嫌悪感で駄目だという者は居ますからね。
しかも暗がりで不意打ちなら仕方ない部分はあります。
そこは大目に見るべきでしょう」
サブマスターが横からフォローをしたが、マスターも怒って言ってる訳じゃない。
一応指摘しておかなければいけない立場だから指摘したという感じだ。
そしてジャネスもそれは分かっている。なので険悪にはなっていない。
「その後は私とロッドン殿が後退しつつロックセンチピードを倒していきました。
それでも空洞全部で倒せなかったので、先にロッドン殿が坑道へ。
そして私が殿で坑道へと入り、そのまま後退しつつ更に倒していると、ロッドン殿がジャネスを連れて戻ってきました」
「坑道という通路まで戻ってきておるからの、あそこならジャネスの【火魔法】で一掃できる。
そう考えたのでジャネスを探しに行っておったんじゃ。
そこまで遠くない所におったから声をかけて、すぐに連れ戻したわい」
「戻ったあたしは謝った後、【華炎扇】で攻撃。
一気に焼きにいったんだけど、1匹だけほとんど効いてなかったヤツが居た。
慌ててあたしの体を掴んで引っ張ってくれたアッシュの御蔭で助かったけど、アッシュが助けてくれなかったら相当にマズかったのは間違いない」
「そうなの?」
「私は右手の鉄の防具の上から噛まれたのだが、一撃でひしゃげたうえに「ジュウジュウ」と音が鳴り異臭がしたのだ。
慌てて噛み付いているロックセンチピードを蹴り飛ばしたのだが……」
「その時にワシがステージ3だと言ったんじゃよ。
実際に他のロックセンチピードと大きさはほとんど変わらんかった。
しかし甲殻の色が気持ち悪い<混沌の種>と同じ色での。
間違いなくギリギリステージ3の統率者じゃ」
「そんな大物まで居たのかい?
そりゃ完全に鉄級の試験じゃないよ。銀級への依頼だ。
そもそも坑道っていう狭い所で戦わなきゃいけないんだし、鉄級への昇格試験としては最難関と言ってもよかった。
アタシだって国から言われていなきゃ、こんなのを昇格試験にしたりしないさ。
それほどだったんだけど……」
「まさかそれを簡単に上回って来るほど高難易度だとは思いませんでしたね。
これならアッシュは鉄の5級から初めてもいいぐらいです。
それでも足りませんけど」
「自分としては鉄の1級から普通に上がっていきたいですね、さもないと、おかしな噂を撒く者などが居ますので。
かわりにコレを加工できる方を紹介してください」
私はそう言ってロックセンチピードの甲殻を出す。
あの気持ち悪くも魅入られそうになる色のヤツだ。
「この色なら完全にステージ4手前だね。
おそらくアッシュ単独で討伐したんだろうけど、これを1対1で倒せる時点で銀級上位に値する実力なんだよ。
どっかの【拷問官】と既に同じさ」
「失礼ね。わたしはバカ以外に拷問なんてした事ないわよ。
当たり前に拷問するみたいに言うの止めてくれる?」
「当たり前に拷問すると思われるのが嫌なだけで、拷問するという事に関しては否定しないんですね?」
「そこまで否定すると舐めて来るバカが居るのよ。
だからわたしとしても否定し辛いの。
力を見せないとすぐに侮るバカって、どこにでも居るからさ」
「「「「「「あー………」」」」」」
物凄く納得できるというか、それでは拷問を完全に否定するのは無理だな。
もちろん実際にやったのだが、今後もやられる可能性がある事を示さないと、舐めて軽んじてくる者は必ず出る。
そもそも私達と出会ったのは誘拐されている時だったからな。
拷問をすると知られていても誘拐するバカが居るのだ。
手を出すと酷い事になるとアピールしなければ、もっと力尽くの手段に出る愚か者が湧く。
それは間違いない。




