03-43-0123
Side:アッシュ
「私が引き付ける形で戦闘を開始。
ロッドン殿には咬まれていた男を後ろに引っ張ってもらったのですが、混乱していたのか喚くだけでしたね。
そして統率者を倒したら一旦外に出る事になり、男を担いで私は治療院に走りました」
「ワシは愚か者が【土魔法】で開けた穴を埋めてから脱出。
治療院に行くとアッシュが出て来るところであった。
混乱と放心で理解しておらなんだ感じだったそうじゃ」
「医者はこっちの言う事は聞こえているが、右腕を失いたくないので駄々を捏ねているだけだと言っていました。
どのみち駄目になったら早く切ってくれと言ってくる、と」
「それはそうだろうけど、モンスターの統率者に咬まれてるんだよねえ。
しかも地下に居たよく分からないのだ。どんな汚れを持ってるか分かりゃしない。
早く決断しないと死ぬ可能性すらあるんだけどね? 分かって無さ過ぎだろうよ」
「そういう者から死んでいくのですが、医者がそこまで急いでいないなら猶予はあるのでしょうけどね。
腕を失うか命を失うかでしたら、腕しかあり得ません。
誰に聞いても同じ答えを返しますよ」
「そりゃそうでしょうよ。
それにしても迂闊なヤツ過ぎて、本当に不正の疑いが強いわ。
そんなのが鉄級に居ること自体がおかしいでしょうよ。
いつから昇格試験がそんなに簡単になったのかしら? ってところね」
「厳しく締め付けたところで、こっちは王都。
地方で悪さをされたら分からないんだよ。
だからこそ巡回狩人を増員したいんだけどねえ………。
誰だって楽がしたいのが本音だから、難しいんだ」
楽がしたいか。
確かに一ヶ所に留まるなら楽だろうし、似たようなモンスターしか出ないなら勝ち方は分かる。
そうなると後は惰性で生きられるといったところか。
そっちの方が楽なのは言うまでも無いな。私としては微妙だが。
違法闘技場に長く居た身としては広い世が見てみたい。
なので巡回狩人というのは、私にとってそこまで嫌がるものでもなかったりする。
どこに行くにしても指針があれば色々と行く気にもなるし、そこでの仕事として行くからな。
大手が振れる。
「その後は再び坑道へと進み、今度は封がしてある場所から更に先へ。
そこを見て無理だと思った私達は撤退。魔法を使える者を雇う事にしました。
理由はロックセンチピード、ストーンボール、ストーンゴーレム、そして大量の<悪食>が居たからです」
「げぇっ!?」 「うっ……」
マーヤが顔を歪めて「げぇっ!?」と言い、ラブが顔を顰めながら「うっ」と言った。
現場に行っていない2人でコレだからな。改めて思い出しても辛かったのが分かる。
「大量の<悪食>かい? となると<悪食>のエサになるのがあったんだろうけど………」
「私達はハンター協会の支部に入りましたが、そこにジャネスが居たので雇い、代わりにマーヤを紹介する事を頼まれました。
理由は毒でやられていたからです」
「あたしは毒切草の採取依頼でドジってね。
毒消しは持ってなかったわ、帰りたい時に限ってモンスターに襲われるわで、村に辿り着いた時には遅かった。
なので、さっきまで左腕が碌に使えなかったんだよ。
多少掴むとかなら出来るんだけど、戦闘中にあたしの代名詞である剛槍は振り回せなくなっちまってたのさ」
「それでマーヤさんに治療を頼んでたんですか。
マーヤさんはタダで治していたみたいですけど……」
「アッシュが世話になったみたいだし、そのアッシュから奪った魔力で治してるからねえ。
タダでも特に問題無いわよ。
これが自分の魔力を使うなら当然ふんだくるんだけどね。
アッシュが使っていいって言ったから、派手に使ったわ」
「………そのアッシュさんは、また魔力が増えてますね?
その統率者の御蔭ですか?」
すぐに分かるだろうが、その話はこの後だ。
「それは後でな。で、ジャネスを雇った私達は三度坑道へと向かった。
そしてジャネスの【火魔法】で<悪食>を焼き払ってもらいつつ、私はロックセンチピードを倒して回った。
もちろんストーンボールもだが、こっちは数が少なかったな」
「あたしが焼き払ってる間にどんどんロックセンチピードを潰してくれてたけど、そこに<悪食>が殺到。
ロックセンチピードの死体を貪り始めた。
あたしはアッシュの言った通り、十分に群がってから燃やすのを続けて数を減らす。
そしたら<悪食>は壁の隙間に入り込んで行ったんだ」
「壁の隙間って………嫌な予感しかしないんですが?」
「その通りだ。そこは真っ黒なぐらいに大量の<悪食>の巣だった。
あたしは裂け目から中に魔法を放って一気に焼いたんだけど、<悪食>の悲鳴を聞いたのは初めてだったね。
そしたら掃除の終わったアッシュ達がこっちに来たのさ」
「私達は中の<悪食>をどうするかという話になったんだ。
なぜなら中に大きな<悪食>のモンスターが居たから」
「アレは本当にデカかったわ。
間違いなく<悪食>のモンスター、それが大量に生んどったんじゃろ。
だからこそ<悪食>があんなに大量におったのだと分かる。
ロックセンチピードやストーンボールの餌だったのかもしれんが、そやつらが食うよりも増える速度の方が早かったんじゃ」
「やーねー。
そんな所に行かされなくて良かったわ、本当」
私はそんな所に行かされたのだがな。
幾ら色々な所に行ってみたい私でも<悪食>の巣に納得した訳じゃないぞ?
「中の<悪食>のモンスターにジャネスが魔法を使っても効いていない感じではあった。
ジャネスはおそらく中の<悪食>の死体が邪魔してる、つまりモンスターは仲間の死骸を被っているのだろうと言っていたな」
「それしかないからね。
壁の裂け目から見えてるけど、他に出入り口なんて無さそうだったしさ。
中から「ドゴンドゴン」っていう凄い体当たりの音が聞こえてくるしで困ってたら、アッシュがロッドンに開けろって言ったんだよ」
「正確には「こちらから開けて倒すべき」というような事であったと思うぞ。
こちらから出せば、こちらのタイミングで先制攻撃が出来るからな。
それで殺してしまえば逃がす事は無いのだ。こちらからというのは正しい」
「そしてロッドン殿が空けてくれたら、そこから触角が出てきたのでぶった切った。
その後は少々暴れてまた触角を出してきたので、こちらはロッドン殿と共に切った。
これで分からなくなったのか更に暴れたが、その後は悲鳴だったな」
「悲鳴?」
「中にロックセンチピードの統率者が入ってね、で<悪食>のモンスターを食い殺した。
「グチャグチャ」っていう音が聞こえてたから間違いない」
「「うわぁ………」」
「ワシらはその状況を見ておらんからの。
音だけだったので余計に生々しいというか、不安や恐怖を煽る音であった。
その後は出てきたロックセンチピードの統率者とアッシュが戦闘。
1匹目と同じく引き千切って勝利じゃ」
「いや、引き千切ってって………アッシュならやりそう」
「アッシュさんなら絶対にしますよ。そっちの方が手っ取り早いとか言って」
「間違ってないところが何とも言えんのう……」
ロッドン殿が呆れたように言うが、あの状況では棍棒で戦うより引き千切った方が早いのは間違いない。
そもそも棍棒を振りかぶるより、ロックセンチピードを掴む方が早いのだ。
それに噛み付かれずに済む。
「まあ、それはそうでしょうけどねえ……。
あんな気持ち悪いのを、よく掴む気になるわ。
わたしには無理」
「ぼくも無理です。
あんなのを掴むくらいなら、血を武器にして必死に戦いますよ。
それで駄目なら一目散に逃亡します」
それが一番良いだろう。勝てないと思ったら素直に逃げた方がいい。
流石に勝てない相手にまで、無理して戦えとハンター協会も言わないだろうしな。




