03-41-0121
Side:ラブ
北東の村を離れ、ぼく達は隣の村まで歩いて移動。そこで一泊の宿をお願いした。
隣の村でされた事を話すと、何故かあっさりと納得されたので、元々そういう連中の村だったみたいだ。
隣村に知られても止めないっていうのはどうかと思うけどね。
それはともかく一泊したぼく達は、その後も徒歩移動。
その途中で移動馬車が来たので乗り、そのまま乗って王都へ。
そしてハンター協会に戻って来た。
その前に領都で鳥便を出したので、既に王都のハンター協会には詳細が届いたはずだ。
「おかえりなさい。それにしても災難でしたね。
まさか王領だというだけで、そこまでの横暴が許されると思っている村があるとは………」
「本当に驚きでしたよ。「私は王領の村長だぞ」の一点張りでしたからね。
村長はしょせん村長なんですが、どうやら王領となれば特別な立場になれると思っていたのでしょう。
あまりに愚かで呆れますが、アレは他国の方を招いた時に致命的な失敗の元になりかねないとは思います」
「でしょうね。
そこまで礼儀も何も無い者が村長をしているなど、完全に陛下の顔に泥を塗っています。
その村長には自覚が無いのでしょうが、王領の村長ともなれば責任も重い。
という事は分からなかったようで……」
「都会者の方が偉そうで田舎のヤツを見下すもんだが、あの村長はまさにそんな感じだったな。
王都出身だと言えば、地方の田舎者を見下せると思ってる。
そんな感じが滲み出てたぜ?」
「それこそ田舎者のやる事なんですが、理解できていなかったのでしょうね。
出身で偉そうにするって、それどこの田舎者ですか? っていう行動ですし。
むしろ本当に王都出身なのか疑問がありますよ」
「まあなぁ。
おそらく出身しか威張るものが無いからなんだろうが、それって裏を返せば情けないヤツだっていう証明なんだよ。
そこが理解できていないヤツは本当に居る。
現にオレも何度かそんなヤツに会った事あるし」
「私だってありますから、古くからなんでしょうね。
私なぞ超がつく田舎の出身ですが、もう100年以上は王都に居ます。
なので様々な者を見てきましたよ」
「100年ですか、長いなぁ……」
「………」
っと、女性に年齢かそれに近い話は禁句だ。
口を閉じておかないと、どんな目に遭うか分からない。
さっきの言葉だけならセーフなはずなので、ここからは慎重に会話しないといけないね。
「という事で、ぼくはドーヴァルの巣を一つ潰してきたのですが、どうでしょう?」
「巣を一つ、それも100体近くを殺してるのは、オレもこの目で見てる。
統率者が居ないとはいえ、単独で100体近い巣が潰せるなら文句なく鉄級だ。
オレからはそれ以上に言う事は無い」
「では鉄級昇格試験を一次合格とします。
愚かな村人と村長も炙り出せていますので、瑕疵のある部分は無いでしょう。
マスターが最終的な合格判定をしますが、問題は無いでしょうね。
実力も十分ですし」
「そりゃ十分だろうよ。
ドーヴァルの攻撃をかわしつつ首を切っていくんだぜ? アレはなかなかに強烈な光景だったわ。
何かあった時には頼りたい程度には強いんだ、案外と銀級に上がるのも早いんじゃねえかな?」
そうやって褒められるのはありがたいのですが、ぼくにとって一番ありがたいのは収入が増える事です。
そうすれば本が沢山読めますからね。
出来ればお金を貯めて本屋に行きたいところですが、本の置き場所が無いので今は無理です。
家を借りればいいのですが、そこまでのお金はありませんしね。
それに、そんなお金があるなら本を買いたいところです。
「そういえばマーヤさんはどうされたんでしょう?」
カラン、カラン!
ぼくがそう言った瞬間誰かが入って来たので振り返ると、そこにはマーヤさんが疲れた表情でいた。
どうやら今は大きくなっているらしい。
「あー、疲れた。
本っ当になんであんなに面倒臭いのかしらね、貴族って連中は!
わたしを専属にしようなんて1000年以上早いってのよ、まったく!!」
「専属ですか。
陛下ですら為されようとはしなかったのに、よくもまあ……」
「流石に妖精族を専属にしたってなったら大問題になるんだが、そのバカは余程に理解してねーんだな。
他の貴族から潰されるぞ」
本当にそうですね。
妖精族といえば1000年以上生きる種族。その種族の【生魔法】使いなんて貴重中の貴重です。
むしろ長い間ずっと治療してもらえるというだけで、十分にお釣りがくるでしょう。
にも関わらず欲を掻いて専属にしようなど………王族が黙っていませんよ。
「アビストルとかいう貴族家だったわ。
いちいち面倒なんで爵位をスルーしたぐらいよ。
鬱陶しくてしょうがなかったし」
「アヴィストゥル子爵家ですね。
元々は王都で財を成し、先代の陛下に認められて準男爵に上がった家だったはず。
始まりが財を成したからですから、ずっと成金っぽい感じの家ですよ。
国の商売関係に関わる役職ですが、良い噂はありませんね」
「となると腐った貴族って事ですね?」
「いえ、どうも国の商売を自分の所の儲けに利用している節があるそうです。
そういった事は認められてないのですが、決定的な証拠が無いとか聞きましたよ。
ま、そのうち尻尾を出すのではないですか? 疑いがある以上は調べられますからね」
「それよりアッシュはまだなの? ラブは帰って来たみたいだけど」
「アッシュさんはまだみたいですね。
ぼくと違って鉱山街ですから、時間が掛かるのでは?」
「それ以前にアッシュは一度戻って来ていますから、時間が余計に掛かりますよ」
「えっ!?」
「ああ、ラブは知らなかったんだっけ?
自領の騎士に移動馬車を襲わせたバカが居てね、そいつらを連れて一度戻って来たのよ。
その時に蛮族将軍っていう、建国王に従った将軍の使ってた武器を下賜されてたわ。ついでに異空鞄も」
「武器はよく知りませんけど、異空鞄はいいんですか?
相当に貴重で、国に一つあるかどうかでしょうに。
どこの国でも在るなら国宝ですよ?」
「陛下が良しとして下賜されている訳ですから、周りがどう考えても仕方のない事ですよ。
それに狙われたら守らなければいけませんからね。
そういう意味でも大変ですよ、アッシュは」
そう言われればそうだ。
裏の界隈の連中にも狙われそうだし、アッシュさんが気に入らない奴らが居たら狙うかも。
簡単に負けるとは思わないけど、多勢に無勢って事はあり得るからね。
周りには気を配った方がいいかな?
「それはともかくとして、ラブの方はどうだったのよ?
鉄級の試験ぐらい一発合格しなきゃいけないんだけど、まさか………」
「マスターの判断待ちですよ。
ただ、おそらく合格だろうと言われましたが」
「でしょうね。
それなりに戦闘能力もあるし、普通に戦えるもの。
知識や礼儀は身についてるんだから、余程に大きな失敗をしない限りは合格でしょ。
知識や礼儀の場合は、後でブチ込まれるだけだし」
「オレもそうだったクチだが、あれって大変なんだよなぁ。
しかし覚えて実践できないと鉄級の登録証をくれないしさ」
「地方だと、知識や礼儀を身につけさせないまま鉄級の登録証を出すところがあって困るのですよね。
監査を厳しくしても抜けは出てきてしまいますし………」
「拷問したら? その方が手っ取り早いでしょ」
「貴女ではないのですから、治すのが面倒で仕方ありませんよ。
それに間違っていた時が面倒です」
「そんなの疑われたお前が悪い。で済むでしょ」
「「「………」」」
マーヤさんって、いったいどこの独裁者なんでしょうね?
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