03-39-0119
Side:ラブ
「ゲピッ!?」
「グビュッ!?」
2体ずつ、しかし着実にぼくはドーヴァルを殺していく。
そうやって数が減ってくると、更に躍起になってぼくを追うか、それとも逃げるかしかない。
そして今追いかけてきている奴らは逃げない選択をした連中であり、ぼくにとってはありがたい奴らだ。
逃げられると追うのが大変になる。
ドーヴァルの巣を殲滅するのが目的である以上、逃げられるのはマズい。
他の場所で繁殖されたら、また巣を作られてしまうだけだ。
そうなると、とても解決したとは言えない状態になってしまう。
依頼に難癖つけて、少しでも支払う金額を減らそうとするらしいからね。
実際に成功と言えないと貰える金額は減るし、依頼者に残りを返されるって説明を最初に受けた。
だからこそ難癖を付けてでもハンターが失敗した事にしようとする者が居る。
そういう場合は最寄りのハンター協会に知らせてほしいとも言ってたっけ。
実はハンター協会は支部ごとに当然ながら異なっている。
簡単に言えば縄張り意識みたいなものがあり、それは同じ貴族の領地内でもあるらしい。
領都のハンター協会は偉そうだし、村のハンター協会は都会の協会を嫌ってたりもする。
それぞれを運営している者達が居るから当然なんだけど、だからこそ最寄りのハンター協会に言うと効果があるんだ。
足の引っ張り合いじゃないけど、それに近しい事で動いてくれる。
当然ながら相手を貶める意味でだけど、問題は問題だ。
握り潰されるよりは余程いい。
「ギィッ!?」
「ゴブッ?!」
これで終わりかな? 結構な数が居たけど、動き回りながらだから囲まれずに済んだよ。
僕が殺されるとしたら、それぐらいしか無かったからね。
だからこそ囲まれるのを警戒してたんだし、逆に言えばそれさえ防げば大きく勝利に近づくんだよ。
勝てて良かったけど、巣の方はどうなっただろう。
ぼくは巣に残った連中も始末するべく戻っていく。
所々にドーヴァルの死体があるので、戻る道は分かりやすい。
山を下りる場合は下って行けばいいだけだから、特に難しくもなんともない。
浅い山の頂上付近に巣はあったんだけど、そこではバディオさんがドーヴァルを殺していたみたいだ。
「おう、戻ってきたか。
逃げられると困るんで巣のヤツは殺していってる。
それよりも、お前さんはあの穴の中だ」
そう言われて気づいたが、どうやら巣の中心には穴があったらしい。
横に退けられた草や茎に蔓があるので、これで穴を隠していたんだろう。
それなりに大きな穴だけど………この穴は何の為の物なのかな?
そう思いつつ中を手探りで確認するけど、何かが当たる気配は無い。
もしかして中はそれなりに広いのか?
そう思い足を突っ込んでみると、ぼくの首の辺りまでの深さがあった。
思っているより深いけど、いったい何の為に………って、この声は?
ぼくは聞こえる声の者を手探りで探すと、それを見つけた。
なるほど、それで穴を隠していたのか。
そしてバディオさんが何故ぼくにやらさせるのかも理解した。
とはいえ、ねえ………ぼくは辺境伯家の者だ。
こんな事で迷うような心は持ち合わせていない。
穴の中に居た“ドーヴァルの赤ん坊”を全て外に出す。
計11体も居たので驚くも、ぼくはバディオさんが話しかけて来る前に、1体ずつ穴の上で首を落としていく。
そして穴の中に放り込むと、次の赤ん坊の首を刎ねる。
「おっと……まさか、そこまでだとは思わなかったぜ。
一応確認の為にお前に赤ん坊の所を見させたんだが、確認した後で淡々と始末するとは思わなかった」
「一応もう一度言っておきますけど、ぼくは62歳のヴァンパイアなんです。
可哀想……などという思いは欠片もありませんよ。
そもそもモンスターはモンスター、害獣でしかありませんからね。
ここで仕留めておかないと面倒の元にしかなりません」
「まったくもって、その通り。
だが妙な事を口走ったり考えたりする奴は居るんだよ。
情けは同じ種族か生き物に対してやれってんだ、モンスターに情けをかけるとか頭がおかしいのかと思うぜ」
「と言う事は、かつてそういう揉め事があったんですね」
「まあな。それが当時付き合ってた女だから堪ったもんじゃないぜ。
結局それが出来なくてハンター辞めてな、故郷に帰っちまったよ。
だがなー、その害獣が自分の家族を殺すんだっていう自覚が無いのは流石にねえわ」
「ただ目の前だけを見て可哀想などと言い出したんでしょうね。
その結果なにが起きるのかという事を想像できないのでしょう。そういう者は残念ながら居ますよ。
誰かが手を汚してくれているから恙なく生きられる。そんな事すら理解していない者はね」
貴族も手を汚す者なのですよ。
平民は勘違いしていますが、貴族は何かあった場合に最小限の犠牲で留める必要があります。
最小限で留めるという事は犠牲が出るということ。
その責任は貴族であり、また自分の手を汚すのも貴族なのです。
平民には本当に理解されませんけどね。
犠牲無しなどという事はあり得ないというのに、貴族の所為で死んだなどと思われるのです。
それもまた貴族家の者として受け止めなければいけないのですが、誰がやっても犠牲は出るのです。
もし出ないという者が居れば、それは貴方の妄想の中だけですよ。
と、ぼくは言ってあげますね。
少ない犠牲か多い犠牲か。それを選ぶのが為政者であり貴族なのです。
責任ある者は妄想の中に生きたりしないのですよ。
「ぼくは先が想像できない者ではありませんので、やるべき事はしっかりやります」
「ああ、何から何まで問題ねえよ。
問題が無さ過ぎて「オレ必要だったか?」と疑問に思うくらいだ。
ま、監査役は絶対に必要なんだがな」
「これで全て終わりましたし、後は村に帰って完了の報告をするだけです。
証拠云々とか言って来そうですが、その場合はどうするべきかな……?」
「オレが見てたし問題ないだろ。
それでも証拠って言うなら………睾丸を切り取っていくか?
お前さんの血の武器なら、汚れても大丈夫なんだろう?」
「…………仕方ありませんかね。
流石に何の証拠も無しじゃ、難癖を付けられるでしょうし」
「だな。完璧にしておいて、相手の反論を封じる方がいいだろう。
臭いが、そこは諦めるしかねえ」
ぼくは鞄から布の袋を取り出し、血のナイフを作ったら、オスのドーヴァルから睾丸を切り取っていく。
木の枝で袋に入れているので、手に臭いが付いたりはしない。
石鹸は持ってるけど、なるべくなら汚れたくないからね。
頑張って大量の睾丸を集めたら、ぼくとバディオさんは山を下った。
後は村に戻るだけなんだけど、この臭い袋は後で捨てて行こう。
どうせ王都までどころか、町まで間に合わずに腐るだろうしね。
そうなったら薬効成分は無いそうだから、買い取ってすらもらえない唯の汚物だ。
なので、あくまでも証拠の為に切り取って集めてきただけでしかない。
それもしっかり全てを集めてきたわけじゃなく、証拠の品だと分かるように集めたんだしね。
睾丸付きの死体はまだまだあるんだ、面倒だからもうイヤだけど。
村に入って村長の所に行くまでも、村の人達が臭いに顔を顰めていた。
が、巣を2つも潰させようとしたんだから、ぼくは全く気にしない。
そういう人達だしね。
そして村長の家を訪ねたぼく達は、堂々と睾丸が大量に入った袋を持って入る。
証拠の品なんだから、外に置いておく訳にもいかない。
………という建前の嫌がらせだ。
最初からあんな態度だったし、ぼくを散々バカにしてくれたんだ。
これぐらいの報復で済ませてあげるんだから、感謝してほしいね。本当。




