03-38-0118
Side:ラブ
ぼくはバディオさんと話しつつもドーヴァルを殺していく。
主に首を切ったりしているんだけど40を超えた辺りで遂に動きがあった。
ドーヴァルが騒ぎ始めたんだ。
その声を聞いた僕はゆっくりと離れる。
その場に居たら危険だし、まずは離れて様子見をするべきだろう。
「正解だ。
こういう場合、すぐに原因を知ろうと近づく阿呆が居る。火事なんかがあった場合の野次馬と一緒だ。
だが、命が懸かっている場でそれは愚かな事でしかない。
何かがあったと思われる場合、まずは原因らしき物からすぐに離れる。これが鉄則だ」
「はい」
流石に僕も危険な物事に突っ込んだりなんてしない。
どんな事でもそうだけど、離れて様子見が基本に決まってる。
近づいたら危険だし、もし近くにモンスターが居て気づかなかったら………。
殺される未来しか思い浮かばない。
「味方が殺されていて減ったのも分かるんでしょうが、それよりも遂に血の臭いでバレましたかね?」
「かもしれん。ドーヴァルの鼻はバカだが、それは自分らの臭いに対してだけだ。
あいつらは臭いが、だからといってそれ以外の臭いが感じ取れない訳じゃない。
血の臭いに気づかれた可能性はある」
「とはいえドーヴァルって確か共食いをするんですよね?
だったら食料の臭いを感じ取ったんでしょうか?」
「それよく言われるけどな? オレの見てきた事で言えば、余程に腹が減ってないと共食いはしない。
何故ならオレは目の前にドーヴァルの死体があっても、共食いを始めたヤツを見た事ねえしな。
昔ドーヴァルの死体を囮にして他のドーヴァルを釣り出そうとしたが、一度も成功しなかった」
「つまり………お腹が空いて仕方なく共食いしているのを見た者が言い始めたんでしょうか? ドーヴァルは共食いをすると。
そしていつの間にか、その情報が当たり前のようになってしまった?」
「おそらくはな。オレは見た事がねえってのが現実だ。
もしかしたら偶然にも今まで見なかったのかもしれないが、オレだって銀級になるまでに様々な仕事を受けて来てる。
流石にそれは無いと思うんだがな」
長い経験で無かったのであれば、可能性は低いんだと分かる。
となると危険だから声を上げたって可能性が高そうだ。
巣に篭もって防衛戦を始められると厳しいなぁ、まだ後60体ぐらい居るんだけど……
「突っ込んで逃げ回った方がいいでしょうか?
血の武器だと逃げ回りながらでも戦えますし、それにドーヴァルって弓矢を持ったりしませんしね」
「確かにそれなら殲滅できるかもしれないが………その実力があると銀級かそれに近いんだがな?
まあ、実力だけじゃなく経験も必要だから、強さだけじゃ上には上がれないんだが」
「そうなんですね。鉄級から上は貢献した量が重要なんでしょうか?」
「そうだな。鉄級から上の者の情報は結構出回るし、悪い事は出来ねえ級位だ。
それ故に長く品行方正に生きられるか? っていうのも地味に問われてくる。
鉄の5級から上は、性格的にもしっかりした奴らだよ。
そうでなければ5級以上は無理だ」
「確かに粗野な者達が上に上がっても、ハンター協会に得はありませんからね。
上の級位だと自信を持って送り出せる者達でないと」
「ああ、そういこった。
それはともかく、この後はどうする?」
「………慎重に近づいてみます。
向こうに動きが全く無いので、良い悪いは別にして情報が無いと動けません」
「分かった。お前さんの思う通りにやってみろ」
もしかしたら間違ってるのかもしれないけど、でも情報が無いと動けないのも事実なんだよね。
相手が慌しく動くから離れたけど、その後に動きが無いんじゃ方針を変えるしかない。
情報も無く立ち往生していても解決しないからね。
ぼくはゆっくりと、しかし確実にドーヴァルの巣へと近づいて行く。
そして広場の様になっている所を見たが、そこは厳戒態勢が敷かれていた。
どうやらドーヴァルも自分達が狙われていると自覚したらしい。
とはいえ、今見ていても統率者は居ない。
「ここまで厳戒態勢が敷かれている中でも、ドーヴァルの統率者は見えませんね。
となると、少なくともこの群れに統率者は居ないようです」
「とはいえ群れに統率者が居る事は多くないがな。
もし群れには統率者が当たり前に居るなら、世の中には<混沌の種>が溢れてるだろうよ。
だが、そんな事は無い」
「統率者の居る群れは強さが跳ね上がると聞きますし、流石にそんな群れに一人で勝つのは無理です」
アッシュさんなら多分だけど余裕で勝つとは思います。
とはいえぼくには無理ですし、そんな危険を犯す気にはなれません。
チマチマ外から削っているだけでも十分だと思いますしね。
ぼくはぼくの出来る事をやるだけです。
ドーヴァルを見ていますが、一向に巣の外に出て来る気配はありません。
仕方なく、ぼくは覚悟を決めてバディオさんに話します。
監査役の者は味方しないのが基本ですので、離れていてもらわないといけません。
「バディオさん。ぼくは突っ込みますので離れていてください。
ある程度倒したりすれば、ぼくは左の方の森の中へと逃げます。
おそらくドーヴァルがついてくると思うので、そこで木々を利用すれば減らせるでしょう。
全てオスだとは思えませんので……」
「だな。これだけ臭い臭いなんだ。残りの半数はメスの可能性がある。
となると残りは30ぐらいだが、それならさっきまでに既に倒しているからな。
踏ん張れば可能だろう」
「ええ。では…………行きます」
僕はそう言ってドーヴァルの巣に飛び出し、そして血の短剣を操って倒していく。
ドーヴァルぐらいだと短剣で首を薙いだ方が早い。
それにバディオさんには説明していないけど、ぼくは短剣の刃を小さいノコギリ状にしている。
その方が切れ味が鋭いからなんだけど、この小さい小さいノコギリ状にするの難しいんだよね。
集中しないと維持できないから、すごく大変なんだ。
だからこその切れ味だから、必死になってでも集中するんだけどね。
「はっ!」
「ギュエッ?!」
首を切られたドーヴァルが地面に倒れた。
しかし他のドーヴァルはそれを恐れずに突っ込んでくる。
とはいえ短剣は1本だけじゃない、2本あるんだ、よ!!
「ギョバッ?!」
前から喉を切り裂く羽目になったけど、それでも上手く殺せたのだから良しとする。
大事なのは数を減らす事であり、ドーヴァルを綺麗に倒す事じゃない。
そんな事に拘っても仕方ないし、無駄な事をする必要も余裕も無いんだ。
どんどん倒していかないと。
僕は敵の攻撃を避けつつ、後ろに跳んだり横に跳んだりして逃げ回る。
そして逃げ回りつつも、隙を見つけてはドーヴァルの首を切り裂く。
そういった形で6体ほど倒すと、僕は走って森の中へと逃げ込む。
「「「「「「「「「「ギャッギャッ!!」」」」」」」」」」
ドーヴァル達が「追え!」と言っているのが何となく分かる。
味方を殺されて怒ってるんだろうけど、森の中って予想以上に戦いにくいよ?
だからこうなるんだし。
「ギョベシッ!?」
「ギュデブッ?!」
そもそもドーヴァルを殺す為の誘いだ。
ぼくが何のために逃げ込んだと……って、それがドーヴァルに理解できたら困るのはこっちだね。
ドーヴァルは永遠に理解しなくていいよ、こっちの狙いは。
「デュバッ!?」
「グェブ?!」
………妙な声で死んだのはともかくとして、上手くぼくの釣り出しは成功したらしい。
その御蔭か随分とついてきたけど、森の中なら囲まれる可能性は低い。
奇襲が怖いけど、上手く戦えるなら森の中の方が多数と戦いやすいんだ。
囲まれにくいっていうだけで大きいからね。
多数が厄介なのは囲まれたら殺されるしかないからだ。
逆を言えば囲まれない状況にすれば、多数の優位は多少落ちる。
あくまでも多少でしかないけどね。




