03-36-0116
Side:ラブ
「王都のハンター協会は我が村を軽んじるという事ですかな?
こんな子供を連れて来るとは」
何故かぼくの方ではなく、バディオさんに向かって喋ってる。
この村長は自分が相当に失礼な事をしているって理解してるのかな?
そもそもこの派遣を決めたのはハンター協会であり、そこには解決できるという確証があって出しているんだ。
何も考えずに適当に依頼を請けさせる訳が無いだろうに。
その程度の事も想像できないのか。
「軽んじてなどいませんね。これはハンター協会のマスターが決められた事です。
それに、こんな子供というのは訂正して頂きたい。
彼はヴァンパイア族で、既に62歳になります。十分に年齢を重ねてきていますよ」
「!?」
村長は急にぼくの事をジロジロと見てきたけど、見た目だけで判断したのかな?
そんな目しか持ってない村長って、この村は大丈夫なのかと思えて来るけどね。
いや、本当。
「………では依頼の話をしましょう。解決できるかどうかは知りませんがな」
まだ疑ってるらしい。
でも、自分もまた計られているという自覚が無いんだろうね、この村長。
王領の村の村長に相応しくないってなれば、村長の座から引きずり下ろされるんだけど………
なんだか理解してなさそうな気がする。
その後は多少の話が聞けたものの、ぼくは丁寧に挨拶をして出た。
丁寧なのは、むしろワザとだ。
アッシュさんも言ってたけど、腹が立った時ほど礼儀は丁寧に行わなきゃいけない。
これってそもそもは貴族のやり方なんだけど、アッシュさんも同じものを習ってたみたいだ。
ぼくとバディオさんは村長の家を出たけど、その道すがら話しておく。
「他の村人の方にも聞けるだけ話を聞きます。
村長がまともなら良かったんですが、あの村長では正しい情報を知っているか疑問がありますので」
「おう、それは当然だが………よくあんな事を言われて冷静で居られたな?
横に居るだけのオレでもカチンと来たのによぉ」
「あんなの大した事はありませんよ。
腹は立ちますが、その程度としか言えない程度でもあります。
貴族との応酬に比べれば遥かに温いとしか言えません」
「あー………そりゃ納得できるわ。
いちいち貴族ってそういうところが鬱陶しいんだよなぁ。
だから関わりたくねえんだけどさー」
ぼくは村の中を回りつつ、色々と話を聞いて行く。
中には子供も居たので聞くけど、子供の話ってバカに出来ないね。
大人の話してた事を理解してないまでも覚えてる。
おかげで本当のところが見えてきたよ。
「子供様々って感じかな?
まさかドーヴァルの巣が2つもあり、1つの依頼料で両方を解決させようとしていたとは。
これは明確にハンターに対する裏切りですよね?」
「ああ、間違いねえ。本来ならこの時点で依頼は取り消せる。
なんたって嘘の依頼をしてるんだからな。それだけで、あの村長を牢にブチ込む事は可能だ。
偉そうにしてやがったが、とんだゴミだぜ」
「ですが、それだと鉄級の試験に合格した事にならないんですよねぇ………。
仕方ない、解決してから帰るか」
「正気か? それは駄目だぞ。
違法な依頼だと分かったうえで請けるのは許されてねえ。
それをすれば他の奴らまでそうする必要出て来るし、それじゃ違法が罷り通る事になるからな」
「子供の言っている事です、正しいかどうかなんて分かりません。
それにぼくは両方潰すなんて言ってませんよ?」
「…………お前さん62歳だったんだよな。
なかなかいい根性してると思うぜ? オレは嫌いじゃないし、黙ってりゃセーフか。
裏でマスターに情報は上げとくが、多分マスターは大丈夫だって言うだろ。
そもそも依頼には巣が2つなんて書いてないしな」
「ええ。とりあえずは、どちらの巣の方が小さいか確認しておきましょう。
大きい方か小さい方か、壊す方は後で決めます」
「そうだな。小さい方が必ずしも安全とは限ってねえ。
小さい方に統率者が居る恐れもあるし、そうなったら統率者が居る方が危険だ。
普通は大きな群れに居るもんだが、必ずそうとも限ってねえからな」
僕はバディオさんと共に、まずは村の人が言っていた山へと向かう。
低い山ではあるものの、村の近くの山にドーヴァルの巣があるという話だった。
まずはこちらを探すのだが、それなりに山の中には居るらしい。
ドーヴァルの臭い臭いが山の近くからでもしてくる。
「これはそれなりに大きくなってやがるな?
低い山とはいえ、山に入らなくても臭ってきやがるとは……」
「僕が感じるくらいですから、狼人族のバディオさんには厳しそうですね」
「まあな。とはいえドーヴァルの巣を殲滅する仕事は何度か請けた事がある。
銀級まで上がるにはそういう仕事も請ける必要があるんでな。
オレ達のような鼻の良い種族にとっては大変だが、しかし避けても通れねえんで我慢は出来る。
出来るが………ここは特に酷いぞ。
もしかしてメスのドーヴァルが多く居るのかもな」
「メスのドーヴァルですか?」
「ああ。メスのドーヴァルが居る巣は臭いがキツいんだ。
やつら四六時中ヤってる事があるんでな。
その所為で臭い臭いを振り撒く結果になるんだよ。
ヴォークソンと違って体を洗ったりしねえから」
「そういえば、ヴォークソンって割と綺麗好きだったんでしたっけ?」
「あいつらは結構な綺麗好きだな。
不思議な事にドーヴァルとヴォークソン、どっちも精力が異常に強いモンスターだが、こと汚れに関しては対照的なんだよ。
だからこそ、ドーヴァルが近づく事をヴォークソンは激しく嫌がる。
なもんで対立するモンスターなんだよ、こいつら」
「どっちも無理矢理に強姦して産ませるモンスターなのに対照的なんですね?」
「まあな。
こいつらの争いを利用できねえかと考えた研究者が居たらしいが、それは上手くいかなかったらしい。
争いまではしない事の方が多いんだと」
「へー………そろそろ話を止めて登ります」
「おう」
バディオさんも山に登るとなれば口を閉じました。
ドーヴァルに見つかって一斉に攻撃されるのはマズいですからね。
たとえドーヴァルと言っても、軽く見ていれば殺されるかもしれません。
慎重に行くぐらいで丁度いいでしょう。何より死にたくありませんし。
ぼくは慎重に少しずつ登っていき、ドーヴァルを確認したら離れるか後ろを向くまで待つ。
そして後ろを向いたり横を向いたら、接近して首を切り裂いた。
血で作った武器なので戻せば済むが、あまり戻したくないんだよね。
ドーヴァルの血も入ってきそうで……
「ヴァンパイア族にはそれがあったんだったな、通りで武器を持ってないはずだ。
おかしいとは思っていたが、血の武器の事は忘れてたぜ。
それを使うヴァンパイア族は多くないからな」
「えっ? ……そうなんですか?」
「ヴァンパイア族なのに知らないのか?
なんでもあんまり武器として良い物にはならないそうだから、結局は店売りの武器を普通に使うそうだぞ。
オレも実戦で使っているのは初めて見るから、あんまり詳しくは言えないんだけどさ」
「そうだったんですね」
おかしいな? 母は普通に使っていたのに、普通のヴァンパイア族は使わない。
……もしかして血の武器を使い熟すには工夫が必要なのかな?
だから母も見せるだけで、丁寧に教えようとはしなかった。
重要な技術なら誰にも教えないというのは分かるし、自分で会得しないと意味が無いなら丁寧に教えたりしないだろう。
見せて、後は自分で何とかしろとなるのは当然だ。
もしくは教えたところで完璧にならないなら教えないと思う。
母は特に名のある方だし、少なくともぼくに見せてくれたのは間違いない。




