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 Side:アッシュ



 突然像から閃光が奔ったので私達は目を瞑(つむ)ってしまったが、モンスターなどから攻撃される事はなかった。

 なので目を開けてみると、特に何もな……これか?


 「アッシュ、どこを見て………鞄? それも小さいのと大きいのが一つずつ。

 となると……」


 「神様から下賜されたという事じゃろうの。

 それもこの神殿の像をワシは見た事が無い。

 となると、おそらくこの像は……」


 「邪神、か………」


 つまりここに隠されていたのは邪神の神殿であり、誰かに壊されたりしない為に昔の方が壁を作って封じたのだろう。

 邪神の神殿だというだけで何をされるか分からない。

 そういう時代において封じられたのだろうな。


 なんだか筋骨隆々で物凄く格好いいが、私とは違いすぎるな?

 私はこんなに女性が好むような顔はしていないぞ?


 「おそらくアッシュの言う通りであろうな。

 そして邪神が砕かれた事から察するに、アッシュにそれを授けてくれたのは浄化の女神であられよう。

 御丁寧にも濃い灰色の異空鞄じゃからな、アッシュにしか持てまい」


 「神様から下賜される鞄なんて異空鞄しかないし、そこまで濃い灰色をしていたらねえ………

 蛮族将軍の棍棒みたいに、普通のヤツが持ったら狂っちまうよ。

 絶対にあたしは触れないし、近づきたくないね」


 「とりあえずアッシュが持ってみたらどうじゃ?

 どう考えても神様から下賜された品じゃからのう」


 「分かった」


 私は王様から賜った異空鞄を外し、突然現れた異空鞄の小さい方を腰に着けてみる。

 すると、何故か異様なまでにしっくり来るというか、なんだか鞄が吸い付いてくるような?


 試しに外してみると普通に外れたが、着けているとやはり吸い付いて来る感じがする。

 いや、私が動いても外れないようになっている? そんな感じだ。


 「それもまた凄いと思うが、もしかしたら王様から下賜されたその異空鞄も同じなのかもしれんのう。

 建国王である初代陛下には吸い付くように密着しておったのかもしれん。

 他の者は正当な所持者ではない故に、そうやって密着せんのかもな」


 「なるほど。正当な所持者だと、そういう特別な何かがあるってわけか。それなら納得って感じだね。

 それよりこの神殿と像をどうする?

 今の神殿連中に見つかったら、邪神様の神像を問答無用で破壊しかねないよ?

 そしたら神様の激怒じゃ済まないと思うけどね?」


 「そうだな………ロッドン殿、再び閉めてくれないか? これは王都のマスターにのみ報告しよう。

 あまり漏れていい情報じゃない。

 どのみち鉱脈がある以上は見つかると思うが、まずはマスターに上げて、そこから王様に報告が為されるべきだ」


 「じゃの。ここは王領じゃ。

 まずは陛下がどうなされるかを、お決めにならねばならん。

 場合によっては神殿の連中が叩き出されるであろうが、それも仕方なしよ。

 邪神の女官にあのような事をしたのじゃ、未だに神々はお許しになってはおるまい」


 「手厚い保護などをすれば赦(ゆる)しを得るチャンスなんだけどね。

 今の神殿の連中を見ている限りにおいて、反省するとはとても思えないよ。

 あり得ないと言ってもいい」


 「じゃな」


 私は大きい異空鞄の方も背負い、元々持っていた鞄の中身を取り出して詰める。

 そして大きな鞄と下賜された異空鞄を入れてみると、何故かあっさりと入った。

 異空鞄の中に異空鞄は入るのだな?


 「……………そんな事は聞いた事が無いのじゃがな?」


 「………奇遇だね、あたしも聞いた事が無いよ。

 むしろ異空鞄の中に異空鞄は入らない、とは聞いた事があるけどね?」


 「これ……間違いなくアッシュの為の特別仕様じゃの?

 神々はアッシュにとことん期待しとるんじゃろう。

 邪神の権威回復か、それとも誤解を解く為にの」


 「いやー、それだけじゃないんじゃないかい? 

 浄化の女神の加護を持つ者や女官は絶対に認めないけど、邪神と浄化の女神は恋人であり夫婦のような関係だったと聞いた事がある。

 そこはかとなく女の愛情を感じるよ、あたしは。

 だってどう考えても特別扱いだろ?」


 「確かにそうじゃの。

 まあ、神様からの特別扱いじゃし、悪い事ではなかろうよ。

 それよりこれ以上は居ても仕方ないし、帰る事にしよう。

 アッシュは帰り道で獲物の回収じゃ。その大きい異空鞄なら全部入るじゃろうしな」


 「確かにそうだな。せっかくだから全て持って帰ろうか。

 私達が倒したのに取られるのは損だしな」


 「本来なら諦めるところだけど、今は諦める必要はないからね。

 全部持って帰って3等分しようかい」


 「ああ、さっさと帰るぞ」


 タワーシールドを腰の方の異空鞄に入れ、ランタン以外の全てを収納したら神殿から離れた。

 最後にロッドン殿が【土魔法】で壁を作って行けなくし、私はどんどんとロックセンチピードの死体を異空鞄に入れていく。


 それなりに多くあったものの、何とか詰め終わった私達は、急いで坑道を移動し外へと出た。

 既にオイルがギリギリだったので、かなりマズかったのだ。


 ランタンの火を消し、ジャネスのランタンも異空鞄に収納した私達は、解体所に行って全てのロックセンチピードを出した。


 「まさかここまで大量に持って帰って来るとは思わなかったな。

 確かにここまで大量なら甲殻なんぞ剥いではいられないか」


 解体所の者も呆れていたが、結果として私達は一人中銀貨1枚と小銀貨3枚になった。

 多少のおまけをしてもらえたからだ。


 「予想以上の収入になったねえ。これなら雇われ代は無くていいよ。

 既に中銀貨までゲットしたし、差し引きはプラスだからね。

 それにあたしはガーゴイルとかとは戦ってないし」


 「そういえばそうじゃの。なら雇用の代金は無しでよいじゃろ。

 とにかく後はハンター協会に行って報告し、派手に酒を飲むだけじゃ」


 「そうだねえ。

 ここまで疲れるとは思わなかったし、派手に酒を飲むのが一番だ。

 アッシュも飲むだろう?」


 「飲んでも構わないが、別に飲まなくてもいい」


 私がそう言うと、ジャネスは呆れた表情をしてきた。


 「アッシュ、あんたその図体してまさか飲めないのかい?」


 「言うな、ジャネス。アッシュは飲んでも飲んでも酔えんのだ。

 邪気が効かぬように、酒も効かんらしい。

 どれだけ飲んでもシラフのままなのだそうだ」


 「……………そ、そうなんだね。あたしが悪かったよ」


 「何故そんな態度なのかは分からないが、別に酔えなくて残念とは思わないぞ?

 もちろん酔うという事が分からないからだが」


 「いや、そうじゃなくてね。

 浄化の女神の力(愛)が、そこまで深いのかと思っただけさ」


 「………」


 何故かロッドン殿が遠い目になっているが、いったいどういう事だ?


 「分からんのならよい。

 おそらくアッシュだけは分かる必要のない事じゃ」


 「だろうね、あたしもそんな気がするよ」


 私は分からないままに首を捻りつつ、ハンター協会に着いたので受付嬢に報告。

 すぐに支部長の所に通されたので執務室へ。


 「どうやら空洞のモンスターの掃除が終わったようだな。御苦労」


 「………それだけかい? 随分とここの支部長はふざけたヤツだね。

 中身も聞かずにそれで終わりとは」


 「なんだ、自分達がどれだけ活躍したか聞いてほしかったのか?

 随分と大きな子供だな」


 「ステージ3の統率者が2体も居たのにそれとは……。

 話にならないね」


 「なにっ!? ステージ3だと!?」


 「ワシらの報告も碌に聞こうとせんからじゃ、バカバカしい。

 ここの支部長は碌に報告も聞かん阿呆だったとマスターには言うておく」


 そう言ってロッドン殿とジャネスが支部長室を出たので、私も出ていく。

 後ろから怒鳴り声が聞こえたが、私でさえ知った事では無い。

 あの支部長は最初から態度が悪かった。


 「そうじゃの。

 会ったら「すぐに挨拶に来なんだ」と言ってきたり、ネチネチ鬱陶(うっとう)しいんじゃ。

 熊人族の癖に小さいヤツよ」


 「とにかく仕事は終わりなんだろ? なら明日から王都を目指して出発だ。

 やっと腕を治療してもらえるよ」


 「そういえば、それが目的だったんじゃったの。

 復帰したら銀級試験か?」


 「いや、少しの間は依頼を請けて体を慣らさないと駄目だ。

 せっかくだからアッシュについて行こうかと思ってる。

 面白そうだしね」


 「ああ、それに関しては分からんでもないの。

 おそらく近くにおらねば面白さは分からんじゃろうよ」


 私は別に面白くなどないのだがな?


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