03-33-0113
Side:アッシュ
頭から突撃に来たガーゴイルに対し、私はパープルオーガの力を使ってタイミングを合わせてジャンプ。
ガーゴイルの身長は3メートル以上はあるも、そのガーゴイルが立てる程度には空洞の高さはあるのだ。
私の身長の2倍よりも上。少なくとも5~6メートルはある。
当然ながら上に回避する事は可能であり、一撃で殺そうとなんて考えなければ避けられてなどいない。
ここは腕で広範囲に攻撃するか、それとも圧し掛かるのが一番良い選択といえる。
もちろんそれをされては困っていたので、私にとってはありがたい事なのだが。
ズゴォォォォォン!!!
ガーゴイルの頭が壁に叩きつけられたものの、そのタイミングで私は天井に左手をついていた。
どうやら垂直に6メートルほど跳び上がってしまったらしい。
流石はパープルオーガの強化と思えなくもないが、ここから落ちるのは少々怖い。
怖いと思ってもそのまま落ちていき、私は着地間際に強化してから着地する。
その結果、足にそこまでの衝撃は無かった。
やれやれと思うものの、そんな事を考えて落ち着く暇も無く動く。
私は再び肩甲骨の間くらいに陣取ると、ひたすらにガーゴイルをブッ叩いて行く。
あまりパープルオーガの力を使いたくないのでブルーオーガで強化を留めているが、残りの魔力も多くない。
注意して使わないとマズいな。
ドゴォン!! ドゴォン!! ドゴォッ!!!!
ついにガーゴイルの胴体が砕け、中央部からバラバラに崩れていく。
すると丁度胴体の中心部分に<混沌の種>を発見、私はすぐに近づき吸収した。
これでもし生きているとしても、ステージ3の強さはもう持てない。
そう思ったが、動く事は二度と無かった。
「ようやく終わったか………。
喜びたいところじゃが、大変過ぎて喜ぶ元気も無いわい」
「凄いじゃないか!!
まさかたった2人でステージ3のバケモノをまた倒すなんて思わなかったよ!!
それもガーゴイルをなんてさ!!」
ジャネスは喜んでいるが、私もロッドン殿と同様に疲れたというのが正しいところだ。
最後の突撃はかわせると分かっていたものの、今思い出すと冷や冷やものであったのも分かる。
あの時は戦闘の興奮で大丈夫と思っていたが、そもそも大丈夫だという保障など何処にも無い。
にも関わらず自分は絶対に大丈夫などと思うのだから、私もまだまだだな。
もっと冷静に戦えるようにならないといけない。
それはともかくとして、今は疲れたので少し休もう。
“アレ”は後回しだ。
「2人とも疲れ切ってるねえ………。
それはともかく“アレ”はどうすんだい?」
「“アレ”のう………なんでこうも見事に突き当たったんじゃろうか?」
「私に言われても困る。
突っ込んだのはガーゴイルなのだし、文句はそこで潰れているヤツに言ってもらいたい」
「まあ、言いたい事は分かるけど、アレも休憩が終わったら探索するしかないね。
いったいどこに続いているのか知らないけどさ」
「何かはありそうじゃが、中からどんなモンスターが出て来るか分からん。
逃げる用意だけはしておくぞ。
あくまでも最悪に対する備えじゃがの」
「まずは戦うしかないが、駄目なら逃げるしかないな。
私も随分と【身体強化】で魔力を消費した。
流石にまた統率者となれば、もう逃げるしかないだろう。
戦えるだけの力が残っていない」
パープルオーガに使う澱のような魔力は残っているが、そちらもそこまで多くはない。
何よりアレは消費が大きく使い勝手があまり良くないのだ。
ここぞという切り札にしか使えない代物でもある。
…
……
………
「さて、ある程度の体力は戻ったし調べるかの。
本当に休むのは地上に帰ってからじゃ。
それにそろそろ2人のランタンのオイルもマズかろう?」
「一応予備は持って来てあるが、2人分に分けると多くはないな。
今の内に探索を終わらせて帰りたいところだ。
ロックセンチピードの死体は戻ってから報告すればいい。収入にはならないが、疲れの方が先だ。
持てるだけ持って帰るぐらいか」
「流石にアレだけ大量の甲殻を剥ぐには時間が掛かるし、あたしも甲殻剥ぎはやりたくないね。
死体でも気持ち悪いし」
「まあ、ムカデを好むヤツなど多くはあるまい。
普通のムカデでも嫌がる者は多いのだ。アレに噛まれると腫れ上がるからのう。
【身体強化】しておれば効かんのだが、わざわざ噛まれる瞬間にそんな事をしておる者などおらんしな」
私は重くなった腰を上げ、気分を上向かせる為に上を向く。
とにかく下を向いていると気分まで沈むので顔を上げ、そしてガーゴイルがぶつかって出来た穴に進む。
様々な事が次々に起きて波乱万丈だなと思いつつも、私達は新たに出来た空洞と繋がった穴へと進入していく。
「狭いし、特に何かあるようには見えぬが変じゃの?
ここの崩れた壁、誰かが【土魔法】で固めた感じがするが………もしかして古い時代の者達か?」
「なら奥には何かが隠してあるとか?」
「分からんが、そうかもしれん」
私達は誰かが作ったかもしれない空洞へと進み、そしてある意味ではとんでもない物を見つけてしまった。
「これは………神殿?」
「そうじゃの。大きくはないが神殿じゃ。
しかし、いったいどの神を祀った物なのであろうな?
さして大きくもないし、それに………」
ロッドン殿が言い淀むのも分かる。
そこには明らかに怪しいというか、危険な気配のする像と盾が置いてあった。
というより、神殿の真ん中に像と盾が置いてあるのだ。
どちらも濃い灰色であり、何故か危険な気配を醸し出している。
「あの像から感じるヤバい気配、アッシュが持ってる棍棒からも薄くするんだよね。
という事はあの像ってさ……」
「おそらく邪獄樹を使って作られた物じゃろう。
そしてあの盾も間違いなくそうであろうよ。
というか昔の人は何を考えておったのであろうの?
邪獄樹でタワーシールドを作るなど正気を疑うわ」
「確かにとんでもないと思うけど……あれはアッシュにしか使えないね。
それにアッシュなら持って行っても怒られないと思うよ?」
「というか、アッシュはあの像と盾から出ておる邪気を何とか出来んか?
いや、おそらくアレが邪気じゃと思うのだがの。
あれだけ悍ましさを感じるんじゃから、間違いないと思う」
「あたしも間違いないと思うよ。
どれだけ長く置かれてたのか知らないけど、まるで新品みたいに鎮座してるしね。
そんなおかしいのは蛮族将軍の棍棒と似た物しかないよ」
言いたい事は分かるが、まず私なのか。
まあ<邪獄樹の棍棒>を持っても問題ないからこそ分からなくはないのだがな。
溜息を吐きたくなったものの堪え、私は神殿に近づいて像に触る。
すると、確かに感じられていた禍々しくも悍ましい気配が無くなった。
おそらくは私が触れた事による結果なのだろうが、劇的な変わり方だな?
あまりにもあっさり無くなったので、今度は盾に触れてみる。
すると、こちらもあっさりと禍々しく悍ましい気配は消えた。
なので私は軽く持ってみる。
邪獄樹で出来ている割には軽い印象を受けるという、不思議なタワーシールドだ。
「………蛮族将軍の棍棒とは違い、このタワーシールドの素材は軽いらしい。
思っている以上に軽いので少々驚くが、盾としては使いやすいかもしれん。
ここまで大きなのは驚くが」
「確かにそうじゃ、うん? 何か………ぬあっ!!??!?」
「きゃぁぁぁぁっ!!??!!」
突然像から閃光が奔り、私達は目を開けていられなくなった。
なので目を瞑ってしまったが、これが敵の攻撃なら一貫の終わりだ。




