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 Side:アッシュ



 頭から突撃に来たガーゴイルに対し、私はパープルオーガの力を使ってタイミングを合わせてジャンプ。

 ガーゴイルの身長は3メートル以上はあるも、そのガーゴイルが立てる程度には空洞の高さはあるのだ。

 私の身長の2倍よりも上。少なくとも5~6メートルはある。


 当然ながら上に回避する事は可能であり、一撃で殺そうとなんて考えなければ避けられてなどいない。

 ここは腕で広範囲に攻撃するか、それとも圧(の)し掛かるのが一番良い選択といえる。

 もちろんそれをされては困っていたので、私にとってはありがたい事なのだが。


 ズゴォォォォォン!!!


 ガーゴイルの頭が壁に叩きつけられたものの、そのタイミングで私は天井に左手をついていた。

 どうやら垂直に6メートルほど跳び上がってしまったらしい。

 流石はパープルオーガの強化と思えなくもないが、ここから落ちるのは少々怖い。


 怖いと思ってもそのまま落ちていき、私は着地間際に強化してから着地する。

 その結果、足にそこまでの衝撃は無かった。

 やれやれと思うものの、そんな事を考えて落ち着く暇も無く動く。


 私は再び肩甲骨の間くらいに陣取ると、ひたすらにガーゴイルをブッ叩いて行く。

 あまりパープルオーガの力を使いたくないのでブルーオーガで強化を留めているが、残りの魔力も多くない。

 注意して使わないとマズいな。


 ドゴォン!! ドゴォン!! ドゴォッ!!!!


 ついにガーゴイルの胴体が砕け、中央部からバラバラに崩れていく。

 すると丁度胴体の中心部分に<混沌の種>を発見、私はすぐに近づき吸収した。

 これでもし生きているとしても、ステージ3の強さはもう持てない。

 そう思ったが、動く事は二度と無かった。


 「ようやく終わったか………。

 喜びたいところじゃが、大変過ぎて喜ぶ元気も無いわい」


 「凄いじゃないか!!

 まさかたった2人でステージ3のバケモノをまた倒すなんて思わなかったよ!!

 それもガーゴイルをなんてさ!!」


 ジャネスは喜んでいるが、私もロッドン殿と同様に疲れたというのが正しいところだ。

 最後の突撃はかわせると分かっていたものの、今思い出すと冷や冷やものであったのも分かる。

 あの時は戦闘の興奮で大丈夫と思っていたが、そもそも大丈夫だという保障など何処にも無い。


 にも関わらず自分は絶対に大丈夫などと思うのだから、私もまだまだだな。

 もっと冷静に戦えるようにならないといけない。

 それはともかくとして、今は疲れたので少し休もう。

 “アレ”は後回しだ。


 「2人とも疲れ切ってるねえ………。

 それはともかく“アレ”はどうすんだい?」


 「“アレ”のう………なんでこうも見事に突き当たったんじゃろうか?」


 「私に言われても困る。

 突っ込んだのはガーゴイルなのだし、文句はそこで潰れているヤツに言ってもらいたい」


 「まあ、言いたい事は分かるけど、アレも休憩が終わったら探索するしかないね。

 いったいどこに続いているのか知らないけどさ」


 「何かはありそうじゃが、中からどんなモンスターが出て来るか分からん。

 逃げる用意だけはしておくぞ。

 あくまでも最悪に対する備えじゃがの」


 「まずは戦うしかないが、駄目なら逃げるしかないな。

 私も随分と【身体強化】で魔力を消費した。

 流石にまた統率者となれば、もう逃げるしかないだろう。

 戦えるだけの力が残っていない」


 パープルオーガに使う澱(おり)のような魔力は残っているが、そちらもそこまで多くはない。

 何よりアレは消費が大きく使い勝手があまり良くないのだ。

 ここぞという切り札にしか使えない代物でもある。


 …

 ……

 ………


 「さて、ある程度の体力は戻ったし調べるかの。

 本当に休むのは地上に帰ってからじゃ。

 それにそろそろ2人のランタンのオイルもマズかろう?」


 「一応予備は持って来てあるが、2人分に分けると多くはないな。

 今の内に探索を終わらせて帰りたいところだ。

 ロックセンチピードの死体は戻ってから報告すればいい。収入にはならないが、疲れの方が先だ。

 持てるだけ持って帰るぐらいか」


 「流石にアレだけ大量の甲殻を剥ぐには時間が掛かるし、あたしも甲殻剥ぎはやりたくないね。

 死体でも気持ち悪いし」


 「まあ、ムカデを好むヤツなど多くはあるまい。

 普通のムカデでも嫌がる者は多いのだ。アレに噛まれると腫れ上がるからのう。

 【身体強化】しておれば効かんのだが、わざわざ噛まれる瞬間にそんな事をしておる者などおらんしな」


 私は重くなった腰を上げ、気分を上向かせる為に上を向く。

 とにかく下を向いていると気分まで沈むので顔を上げ、そしてガーゴイルがぶつかって出来た穴に進む。


 様々な事が次々に起きて波乱万丈だなと思いつつも、私達は新たに出来た空洞と繋がった穴へと進入していく。


 「狭いし、特に何かあるようには見えぬが変じゃの?

 ここの崩れた壁、誰かが【土魔法】で固めた感じがするが………もしかして古い時代の者達か?」


 「なら奥には何かが隠してあるとか?」


 「分からんが、そうかもしれん」


 私達は誰かが作ったかもしれない空洞へと進み、そしてある意味ではとんでもない物を見つけてしまった。


 「これは………神殿?」


 「そうじゃの。大きくはないが神殿じゃ。

 しかし、いったいどの神を祀(まつ)った物なのであろうな?

 さして大きくもないし、それに………」


 ロッドン殿が言い淀(よど)むのも分かる。

 そこには明らかに怪しいというか、危険な気配のする像と盾が置いてあった。

 というより、神殿の真ん中に像と盾が置いてあるのだ。

 どちらも濃い灰色であり、何故か危険な気配を醸(かも)し出している。


 「あの像から感じるヤバい気配、アッシュが持ってる棍棒からも薄くするんだよね。

 という事はあの像ってさ……」


 「おそらく邪獄樹を使って作られた物じゃろう。

 そしてあの盾も間違いなくそうであろうよ。

 というか昔の人は何を考えておったのであろうの?

 邪獄樹でタワーシールドを作るなど正気を疑うわ」


 「確かにとんでもないと思うけど……あれはアッシュにしか使えないね。

 それにアッシュなら持って行っても怒られないと思うよ?」


 「というか、アッシュはあの像と盾から出ておる邪気を何とか出来んか?

 いや、おそらくアレが邪気じゃと思うのだがの。

 あれだけ悍(おぞ)ましさを感じるんじゃから、間違いないと思う」


 「あたしも間違いないと思うよ。

 どれだけ長く置かれてたのか知らないけど、まるで新品みたいに鎮座してるしね。

 そんなおかしいのは蛮族将軍の棍棒と似た物しかないよ」


 言いたい事は分かるが、まず私なのか。

 まあ<邪獄樹の棍棒>を持っても問題ないからこそ分からなくはないのだがな。


 溜息を吐きたくなったものの堪え、私は神殿に近づいて像に触る。

 すると、確かに感じられていた禍々しくも悍(おぞ)ましい気配が無くなった。

 おそらくは私が触れた事による結果なのだろうが、劇的な変わり方だな?


 あまりにもあっさり無くなったので、今度は盾に触れてみる。

 すると、こちらもあっさりと禍々しく悍(おぞ)ましい気配は消えた。

 なので私は軽く持ってみる。

 邪獄樹で出来ている割には軽い印象を受けるという、不思議なタワーシールドだ。


 「………蛮族将軍の棍棒とは違い、このタワーシールドの素材は軽いらしい。

 思っている以上に軽いので少々驚くが、盾としては使いやすいかもしれん。

 ここまで大きなのは驚くが」


 「確かにそうじゃ、うん? 何か………ぬあっ!!??!?」


 「きゃぁぁぁぁっ!!??!!」


 突然像から閃光が奔り、私達は目を開けていられなくなった。

 なので目を瞑(つむ)ってしまったが、これが敵の攻撃なら一貫の終わりだ。


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