03-32-0112
Side:アッシュ
右足を破壊したので、後は楽だと思っていたのだが………そんなに甘くはないらしい。
ガーゴイルは右手と左手で四つん這いになると、私を見ずに左足を後ろに伸ばす形で蹴ってきた。
私が見えていないはずなのに、その蹴りは正確に私に向かってくる。
ドゴォン!!
私はギリギリで後ろに飛びつつ腕盾で防ぐが、腕盾が破壊されるほどの威力の蹴りだった。
鉄の盾といえども、実際には鉄で補強された木の盾なので壊れるのは仕方ない。
それにしても簡単に壊されたとは思うが、ロックセンチピードの統率者に何かをされていた所為だとも思える。
実際に「ジュウジュウ」いっていた以上は、何かしらの液体が掛かっていたのだろうし、それで鉄の盾が脆くなっていたのだろう。
左腕が痺れて痛いが、それでも骨が折れたりなどはしていない。
まだ戦えるのは盾を持っていた御蔭でもある。
「ぬおっ!?」
ドガッ!!
前を見るとロッドン殿が右手の攻撃を受けて吹き飛ばされるところだった。
大きな盾を持っているので大きなダメージではないと思うが、それでも厳しそうだ。
ここは早めに復帰しないといけないが、未だに左手が痺れていて上手く動かせない。
武器は右手のみで使えるので無視し、私は【身体強化】を行うと、レッドオーガになって一気に接近する。
そして左足に一撃を見舞ったのだが、一度の攻撃では壊れてくれなかった。
関節部分を攻撃したのだが、やはりそこまで脆くはないようだ。
ガーゴイルが左の翼を私にぶつけようとするが、私は素早くバックステップを2度行い離脱。
なんとか翼の範囲から出た。
一度の攻撃では壊れないというのもあるが、先程はブルーオーガで壊したのを忘れていた。
強化が足りない所為で壊せなかったに違いない。
「しまったな。先程の攻撃でガーゴイルが警戒するようになってしまっている。
それにロッドン殿の動きが少々ぎこちない。
もしかしたら先程の一撃は大きかったのか?」
まずます私が頑張らないといけないのだが、その私もなかなか隙が見出せない。
このガーゴイル、後ろにも目があるのではないかというぐらいに反応するのだ。
なので迂闊な攻めを行うと反撃されてしまう。
痛みを感じていないのか、右足が壊れていても気にせずに動いて来る。
というより太もも部分を上手く使って動き始めた。
左足は膝で、右足は関節部分で歩いている。
いちいち面倒なモンスターだな。
私はガーゴイルの隙を窺いつつ、いつでも【身体強化】で攻められるようにしている。
しかし後ろが見えているような相手は簡単に攻められない。
そんな状態に一石を投じる動きが出てきた。
それがジャネスの一撃だ。
「こっちだよ、デカブツ!!」
ジャネスから火の玉が飛んでいくが、ガーゴイルは全く完全に無視している。
が、そちらに気が逸れた一瞬で私もロッドン殿も始動。
ロッドン殿は懐に潜るように接近し、私はブルーオーガになり左足に接近。
ドゴォン!! ドゴォン!!
私とロッドン殿の攻撃が二度鳴る。
ロッドン殿の攻撃は、ガーゴイルの右太ももの内側を殴りつけ、私の攻撃は左足の関節を砕いた。
これでも関節部分を使って歩くのだろう。
しかし足が短くなっている分だけ攻めやすい。
ロッドン殿も狙ったが、今度は太ももを破壊するだけだ。
そして倒したら一気に胴体に打撃を与える。
そうすればこのガーゴイルは倒せるだろう。
私とロッドン殿は一度離れて様子見をするが、ガーゴイルは少し停止した後でまた動き始めた。
予想通りに関節部分を床につける形で歩いている。
翼が片方無いのでなんとかなっているが、もう片方の翼も壊しておいた方がいいだろうか?
少なくとも今のガーゴイルでさえ3メートル以上の身長をしていて、翼の根元にはギリギリ届かないのだ。
無理矢理にやれば届くが、仮に届かせても手打ちの攻撃にしかならない。
それでは翼を破壊するなんて無理だ。
私は再び隙を探すも、ロッドン殿は前に出てガーゴイルに誘いを掛ける。
当然のように誘いに乗って右手で攻撃するガーゴイル。
それに対して後ろに跳んで離脱するロッドン殿。
私は後ろから接近し、ブルーオーガになった一撃を右足にお見舞いした。
ロッドン殿が内側を攻撃していたのが効いていたのだろう。
今回の私の外側からの攻撃で右の太ももも破壊。
再びガーゴイルが倒れ始めた。
「た、退避じゃぁぁぁぁっ!!!」
ジャネスは離れているので問題無し。
ロッドン殿は慌てて右の方へと逃げたので、私はこの隙に倒れるガーゴイルへと近づく。
そして倒れたガーゴイルの体の上に乗ると、一気に駆けて翼の根元に接近。
パープルオーガの力で根元から粉砕してやった。
ドゴォォォン!!!
やはりパープルオーガの強化は凄まじく、その一撃で翼は根元から破壊された。
まだ起き上がる気配が無かったので、私は右の翼の根元へと接近。
そちらもパープルオーガの力で破壊した。
元々壊していたのは根元に近い皮膜部分だったので、根元から壊れていた訳ではなかったのだ。
現在は両方の翼も破壊してやったので、これで翼を使った攻撃も出来まい。
「おっと、動き始めたからさっさと離脱しよう。
さもないと落とされてしまう」
流石に転げ落ちたところに圧し掛かられたら、その一撃で死んでしまう。
ガーゴイルとはいえストーンゴーレムと同じ石の体だ。
こんな物が圧し掛かって来て耐えられる体なんてしていない。
跳んでガーゴイルの体から下りた私は、素早く反転してガーゴイルに向き構える。
ロッドン殿も無事で、ガーゴイルの前に陣取り私と挟み撃ちの状態を維持してくれるようだ。
後は腕を破壊するか、それとも左足を破壊してまた倒したいところだ。
ロッドン殿がジリジリと近づくので、私もジリジリと近づいて行く。
相変わらず後ろにも目があるような感じで警戒してくるが、それも最初から分かっていれば対処法はある。
私達はジリジリと近づいて行くが、ガーゴイルはどこかで動かざるを得ない。
何故なら私達を近づかせたら破壊されてしまうからだ。
だからこそ右腕でロッドン殿を攻撃しようとする。
しかし左足と右足の長さが違うのに無理に攻撃するからバランスを崩す。
再び倒れたガーゴイルに対し、最初からそうなると分かっていたロッドン殿は回避。
そして私は一気に駆けだして胴体の上に飛び乗る。
そして背中の翼の根元の中央、人型なら肩甲骨の間に陣取り<邪獄樹の棍棒>を叩きつける。
ドゴォン!! ドゴォン!! ドゴォン!!
何度も叩きつけるものの流石は胴体、簡単には壊れてくれない。
両手を使って起き出したので慌てて背中から飛び降りるも、腕を使って四つん這いになったガーゴイルは私の方に突撃して来た。
余程に私を何とかしたいのだろう。
私は必死に逃げるものの、壁際まで追い詰められてしまった。
まあ、ガーゴイルの体の大半を壊したのは私だ。
本当なら私を殺したくて仕方なかったのだろうが、私は常に後ろに居た。
前のロッドン殿を放ってはおけなかったのだろうが、倒されるならと私を道連れにでもする気だろう。
四つん這い状態で私を壁際まで追いつめたガーゴイルは、両手を使って一気に突進。
左右の壁もギリギリであって余裕が無かったので、私はガーゴイルの突撃を待つ。
どのように突撃してくるかは賭けだったが、ガーゴイルは頭を私に突き刺すように突撃して来た。
壁と頭で私を押し潰そうという事だろう。
普通なら絶体絶命かもしれないが、私は賭けに勝ったと確信する。
圧し掛かりだと逃げ場が無かったのだが、この突撃だと逃げ場は十分にある。
ガーゴイルの敗因は、最後まで失敗しか選べなかった事だろう。
私を背中の方に置き続けた事もそうだし、私を殺そうとしなかった事もそうだ。
優先順位を間違えた結果こうなっている。
自分もそうならないように、反省の材料にしよう。
勝った後でな。




