03-27-0107
Side:アッシュ
「いやー、ストーンゴーレムを「ドゴンドゴン」叩いて始末するとはねえ。
確かに武器が良ければそれも可能だろうけど、普通はツルハシとかで戦うもんだよ? 石なんだしね」
「そうか………確かにツルハシであれば、武器が壊れるのも心配しなくていいな。
持っていないが」
「アッシュ。
確かにツルハシで攻撃するのも手じゃが、それは刃物などで戦っとる奴らじゃ。
ワシらみたいな鈍器で戦う者はそのままでよい。
どのみちツルハシも荷物になるからの」
「それは確かにそうだ、持ち運びの事も考えなければいけない。
とはいえスコップを持ってきている私が言う事でもないか」
「それよりこちらはなんとか片付いたわ。
<悪食>の巣が気持ち悪すぎたが、それでも穴を掘って全部埋めたからの。
今は見た目的に問題は無くなった。
わざわざ手を抜かずに綺麗にしてやったからのう」
「あたしは途中から空洞の中の死骸を蹴って集めてたくらいさ。
それでも終わってないけど、後はあたしには関係ないからね」
「アッシュにはスコップを返すので、後は頼む」
「分かった。空洞の掃除をするので休んでいてくれ」
「魔力も結構使ったでな、ちょっと休憩させてもらう」
「アタシは適当に空洞の中を見回るよ。どこに何が潜んでいるか分からないからね。
それにロックセンチピードとストーンボールがどこから来たのか不明だ。
それを調べたい」
私達はそれぞれで動き出し、各々のやるべき事を行う。
ロッドン殿はそこまで魔力が無いらしく、結構消費してしまったらしい。
逆にジャネスは割と魔力が多いらしく、まだ魔力が枯渇するまではいっていない。
対照的な2人だが、ジャネスは魔力の少ないオーガ族ではないのか?
確かオーガとサイクロプスは魔力が低いはずだ。
私は気になったので、虫どもを埋める為の穴を掘りながら聞いてみた。
「オーガ族やサイクロプス族だって色々なヤツが居るさ。
祖先に光妖精族や闇妖精族が居るヤツは魔力が高かったりするし、そこまで魔力が低いオーガ族って多くはないんだよ。
むしろ頭がアレなのが多い方が問題だね」
「ああ。オーガ族やサイクロプス族は頭が弱いというか、あまり考えない者が多いと聞くな。
何故かは知らないが」
「あいつらはねえ………集中力が足りないのさ。だから勉強となるとすぐに逃げ出すんだ。
あたしはオーガ族が多い村で生まれたけど、そりゃ酷かった。
男だろうが女だろうが関係なく、駄目なヤツはすぐに集中できずに別の事を始めるんだよ。
勉強が出来ない奴らって本当に出来ないんだと分かったね」
「そこまでか。
頭が悪いんじゃなく、物事に集中できない感じみたいだな」
「それもあるけど、あいつら体を動かすのは得意なんだよ。
だから戦ったり物を作ったりするのは得意なんだけど、何かを学ぶって事、特に字を読む事は壊滅的に駄目だ。
すぐに集中を無くす」
「何かしらの苦手意識でもあるのか、それとも頭に入って来ないという感じなのだろうかな?
王都の武器屋の店主、あのサイクロプス族はそうでもなかったが……。
店主が出来ている時点で、学ぶ事が出来るサイクロプス族なのだろうな」
「そんな感じだね。
実際、村にはサイクロプスの家族もそれなりに住んでたよ。
勉強できない同士で相性が良かったのかもしれないけど、村長なんかは大変そうだった。
何回話しても聞きゃしないのが居るしさ」
「そういう者も束ねていかねばならんのは大変だな。
少々同情してしまうが、皆が生きる為には仕方ないのか」
「ああ。村長の家はそれなりに頭のいい感じの種族の血も入ってるからね。
だからこそ余計にやらされるんだけど」
余計にやらされるか。
それはそれで厳しいものがあるとは思うが、村を維持するには、ある程度の知識を持っていないと駄目だ。
となると愚かとは言わないが、知識の無い者達を率いなければいけない訳で……
細かい事を説明しても理解できない、もしくはいちいち反発される奴らを相手にしなきゃいけない。
それを考えると、そんな村の村長は不運だとしか思えないな。
やりたくもない面倒な事をやらされるといった感じか。
「まさにそうだね。
村長の家は裕福とか思われてるけど、ある程度は裕福じゃないとやってられないぐらいのバカとかが居るんだ。
それらもいちいち説得したり理解させなきゃいけないんだから、大変なんてもんじゃないよ」
ジャネスがランタンで照らしながらも吐き捨てたので、相当の何かがあるらしいな。
という事は、ジャネスの家は村長の一族か?
「あたしの実家かい? あたしの実家は村長の血筋の分家さ。
一応それなりには色々な血が入ってるから、あいつらほどバカじゃないけどね。
本当、祖先は動物と変わらないのかと何度も思ったよ。
それぐらいにバカどもは酷いのさ」
私は穴を掘り終わったので、スコップでそこら辺の死骸を放り込んで行く。
その作業をしながらもジャネスの会話を聞いて相槌を打つ。
「何が酷いって、とにかくバカどもは勝手に決めつけるんだよ。
何度説明してやっても理解しない、理解しようという気も無いんだ。
そのうえ自分勝手に決めつけた事で文句を言ってきては、不満を募らせるんだよ」
「余程の何かがあったんだな。でないとそこまで怒らないだろう」
「何に一番腹が立ったかって言えば、自分がやった方が上手くいくから村長の立場を寄越せと言い出した事だよ。
頭が悪いヤツほど自分の方が上手くいく、自分の方が賢いと思い込むんだ。
アレを見た時に、この村に居るのは止めようと思ったよ。だからハンターになって外に出たんだ」
「愚かだと理解していないから、世の中の者が愚かに見えるのかもしれんな。
周りが愚かに見えている、そんなお前が一番愚かだという話か。それは嫌にもなるだろう。
しかもそういう頭の悪いのは、すぐに力尽くでなんとかしようとするのではないか?」
「その通りさ。
そんなバカをホザいた数日後に村長の家を襲ったんだ。
バカがそこまでやるなんて思ってなかったからね、村長は殺されちまったよ。
まあ、村長の子供はいい歳だったから、すぐに新しい村長になったけどね。
そいつらはその後、村から追放された。今どこで何をしているのかなんて知らないし興味も無い」
「そこまでだと、どこかで問題を起こして殺されているような気がするがな」
「だろうね。あたしもそう思ってるよ」
虫の死骸でいっぱいになったので埋めてしまい、新たに穴を掘る。
ジャネスが色々と調べてくれている間にも穴を掘り、私は更なる死骸を放り込んで行く。
最後の穴は回復したロッドン殿が【土魔法】で作ってくれたので、素早く放り込むだけで済んだ。
「ようやく空洞の中が綺麗になったのう。
それにしても虫の死骸を含めて大量にあると気持ち悪かったわい。
冷静になると嫌悪感が出て来るんじゃ。
今は見えんからいいが」
「確かに駄目な者は駄目だろうな。
私はそこまでではないのと、闘技場ではよく出ていたから今更というのもあるが……」
「なるほど。何故かアッシュは気にせんと思っておったが、闘技場で慣れていたのか。
ワシは鉱山の仕事をした事とかは無いのでな、ここまで虫が酷いとは思わんかったわ。
ここは特別酷いとも思うがの」
「これは特別に酷いだろうさ。流石にメチャクチャだと思うよ。
地面が真っ黒に見えるほどの<悪食>が居る時点で、どう考えても普通じゃない。
それよりも、奥に続く通路があったよ。
どこに続いてるかは知らないけど、調べておいた方がいいね」
それはそうなので当然調べるのだが、ロックセンチピードとストーンボールの事がある。
しっかりと警戒しながら進まないと、突然一斉に襲い掛かって来られるとマズい。
私が前に出るが、危険なら大声を上げて2人を逃がさないとな。
その事を2人にも説明しておこう。
いきなり大声を出されてもビックリするだけだろうし。




