03-24-0104
Side:ジャネス
<悪食>の巣に【火魔法】をブチ込んだのまでは良かったんだけど、大きな衝突音を響かせるのが中で暴れ始めた。
裂け目の向こうは<悪食>の巣なのにも関わらず、そんな音が響いてくる。
っていう事は、それだけの音をさせる存在が向こうに居る訳で……
「裂け目が小さいから出て来れないのかもしれないけど、出て来られるまで広げる可能性もある。
そうなると馬鹿デカい<悪食>と戦う羽目にもなるし、出来ればここで始末しておきたいね。
しかし相手が見えないし、どうしたもんか……」
あたしは少し悩んだ後で、【炎焼鞭】の魔法を裂け目に向かって放った。
………ものの、何かを燃やしたという感じはしない。
もしかしたら中の大きいヤツは、焼けた死体の下に潜ってる? だから効かない?
ドゴォン!!
パラパラ……
何かが落ちて来たけど、それぐらいの衝撃でぶつかってるって事になる。
正直に言ってここまでだとちょっとマズいとしか思えない。
流石にここまでのヤツが居るなんて思わなかったし、倒せないというか魔法が当たらないとは思わなかた。
どうしたものかと思っていると、空洞のモンスターを倒し終わったのかアッシュとロッドンがこっちに来た。
2人はモンスターを殺して回ってたけど、上手くいったみたいだね。
「私達の方はストーンゴーレムを残すのみとなった。
が、こっちはどうなってるんだ?
先程のような大きな音が鳴るというのは、それだけ大きなものが居るという事だろうが……」
「というより壁に向かって何かやっとったじゃろ。
おそらくだが、その事が関係しておるのではないか?
何やら壁に向かって魔法を使っておった感じに見えたが」
「流石は銀級、しっかり見てるねえ。
それはともかく、この裂け目の向こうに<悪食>の巣があったみたいなんだよ。
だから裂け目「ドゴォン!!」の奥に向かって……」
「おお! なんぞ大きな物が派手にぶつかっとる感じの音じゃな。それもこの中からしておる。
もしかしたら岩盤を壊して出てこようとしておるのか?
だとしたら今のうちに殺してしまった方が良いと思うが……どうする?」
「そこが問題なんだよ。
魔法をブチ込んでみたけど効いてないっぽいんだよね。
何と言うか、死体を被ってやり過ごされているって感じさ。
その所為で燃やせないんだよ」
そう言うとアッシュもロッドンも悩み始めた。
裂け目はそこまで大きくない。だから普通の<悪食>は出て来れるんだろう。
でも巨大な<悪食>が居るなら、そいつは通れないほどに大きいってこった。
それはそれで問題なんだけど、それよりも倒す方法だ。
死体を被るというか、死体の下に潜られてる所為で駄目なのなら、外からじゃ打つ手が無いんだよ。
困った事にさ。
「確かにそうであろうな。
外からではどうにもならぬなら、内側からどうにかするしかないのじゃが……」
「そもそも内側に放って現状なのだから、内側へ放ってもこれ以上は魔力の無駄だろう。
そいつが出て来たところを一斉に叩くか、それともロッドン殿が出すか。
おそらくどちらかしか無いのではないか?」
「ワシがか………まあ、やってやれなくはないがの。
ただし開通したら即逃げさせてもらうぞ。いきなり攻撃される恐れもあるからのう。
それと、小さい穴から空けていくからの。もしかしたら上手くちょっとだけ出てくるかもしれん」
「そこをあたしが燃やせばいい「ドゴォン!!」って訳だね。
って、そろそろ破られるかもしれない」
「破られるくらいなら、こっちから破った方がいい。
その方がこっちのタイミングで先制攻撃が出来る。
その一撃で勝てれば安全に倒せるのだから、すまないがロッドン殿、頼む」
「仕方ないのう……」
ロッドンは嫌々ながらも壁に近づき、床から10センチぐらいの高さの穴を空けていった。
すると、それなりに掘った段階で向こう側と繋がったらしい。
燃えた<悪食>の死体がこちらに出てきたが、突然吹き出すように大量に出て来た。
その事に驚くと同時に、長い触角のような物が飛び出してきた。
いきなりだったものの、アッシュが短剣で左の触角を切る。
「GI!?」
ドゴォン!
突然触角を失ったからか、暴れるように壁にぶつかった<悪食>。
しかし触角の大きさと長さから、明らかに巨大な<悪食>だと分かった。
こんなヤツを外に出すとマズい。
そう思ったのは2人も同じだったのだろう、再び出て来た触角を2人が切り裂く。
「GIIII!!!」
ドゴン! ドゴン! ドゴォン!
触角を2つとも失ったからか、急に猛烈に暴れ始めた<悪食>。
虫は触角で周りを感知しているって聞いた事があるけど、触角を失くしたデカブツは周りが分からないって事だ。
目はあるのかもしれないけど、触角頼りだったって事は、今は相当に不利な状況になってるはず。
なら今のうちに攻めた方がいいんだけど………。
ロッドンが空けた穴じゃぜんぜん足りないうえ、触角が切られたからか出て来なくなっちまってる。
困ったね、どうするか……
「触角が切られたからか、こっちに出て来なくなったな?
中の<悪食>のほとんどは死んでいるみたいだが……大きなのは何故生きているんだ?
大きいのだから、普通はジャネスの【火魔法】を受けていないとおかしいだろう」
「確かにそうじゃが、現実に生きておる以上はどうしようもない。
それに逃げて奥に行ってしまったのかもしれん。
壁を塞いで閉じ込めた方がいいかと思うが、そうすると別の所から出て来かねんからな。
出来ればじゃが、ここで殺してしまいたい」
「後の事を考えても、このタイミングで始末しておかないと駄目だろう。
どこでどのような事を起こすのか分からないし、場合によっては大繁殖の原因にもなりかねない」
「ここにロックセンチピードが居た以上、おそらく奴らは<悪食>を食ってたはずだ。
それを全滅させちまったからね、莫大に増える恐れがある。
あたしも同じだけど、出来るだけ今のうちに始末しておきたい。
何でもそうだけど、手負いが一番怖いからね」
「ワシも賛成じゃ、今の内に殺して安全を確保しておくのが一番良い。
だ「ドゴォン!!」から……」
ドゴォン! ドゴォン! ドゴォン!!
「GIIIIIIIII!?!?!?」
「なんじゃ、苦しんどるのか?
それとも何か焦るような事でもあったのかの?
急に暴れ始めたぞ」
「キチキチキチキチ、シューッ!!!」
「この声というか音は、ロックセンチピードか?
大きな<悪食>が暴れるという事は、もしかしたらロックセンチピードの統率者かもしれん」
「またか!? 前にアッシュが倒したと思ったら、まだおったのか!」
「GIIIIIII!?!! ………GII」
「なんか鳴き声が弱まったね?」
グッチャグチュ、ビチィッ! グチュグチャギュチ……
「OH……なんて事じゃ。こんな生々しい音、聞きたくもなかったわ」
「あたしだってそうだよ。
おそらくアッシュが言った通りにロックセンチピードなんだろうけど、こんな音なんて聞きたくなかった。
ま、甲殻が売れるだけのヤツだから、それ以外は捨てて行きゃいいんだけどさ」
「ここは後で使われるから、穴を掘って埋めておかねばならんぞ。
……えっ? ワシが<悪食>を埋めるのか?」
「この中で【土魔法】が使えるのはロッドンだけだからね。
あたしは【火魔法】で<悪食>を殺す為に雇われたんだ。
それ以外はする気が無いよ」
「なんという事じゃ。ワシがいちいちそんな面倒な事をせにゃならんなど………
よし、鉱夫達に丸投げしよう。死体ならなんとかするであろうよ」
「話はそこまでだ、おそらくロックセンチピードが来るぞ!!!」
その一言ですぐに戦闘態勢になるあたしとロッドン。
槍が無いのと使えないのがアレだけど、なんなら顔面に【火魔法】をお見舞いしてやろうかい。
後1回か2回なら使える魔力は残ってる。
槍が無いからといって、この<剛槍のジャネス>を舐めてもらっちゃ困るんだよ。




