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03-23-0103




 Side:ジャネス



 アッシュが一匹のロックセンチピードを倒したけど、それに群がってくる<悪食>。

 どうやら新鮮な死体の方が群がってくるみたいだね。

 あたしが【火弾】を放とうとしたんだけど、そこにアッシュから「待った」が掛かった。


 「集めるだけ集めてからの方が良いのではないか?

 私は次のモンスターを倒すから、ある程度集まってから焼いてくれ。

 その方が魔力を節約できるだろう」


 「確かにそれはそうか。

 いちいち焦る必要も無いし、この後どれだけ焼く事になるか分からないんだ。

 今は節約した方がいいね」


 あたしはアッシュの意見を素直に受け入れ、<悪食>が集まってくるのを待つ。

 それにしても本当に<悪食>だと思うけど、こいつら少なくとも新鮮な死体がある事はすぐに突き止めるんだね。

 色んな所から集まって来たよ。厄介な連中だ。


 どこにコレだけ居たんだと思うも、<悪食>は集まって来てロックセンチピードの死体を食おうと襲い掛かっていく。

 あたしはなるべく集まっている状態になるまで待ち、ロックセンチピードの死体が黒く見える塊になったタイミングで【炎焼鞭】を放った。


 地面を舐めるように放った魔法は。

 無事にロックセンチピードの死体に群がる<悪食>を燃やす。


 「「「「「「「「「「GIIIII!?!!?!」」」」」」」」」」


 またもや<悪食>が叫ぶが、あたしの知った事では無い。

 国がこの坑道を意地でも使えるようにしようとしてるって事は、あたし達が失敗しても誰かが派遣されてくるって事だ。

 仮に失敗するにしたって、なるべく後の奴らの為にも数を減らしておかなくちゃいけない。


 あたしが金か銀だと言っても2人は何も言わなかった。

 あの態度から察するに、おそらくここは金鉱脈だ。そして金の鉱脈なんて物を国が逃すはずが無い。

 どれだけ犠牲が出ても確保しようとするだろう。

 2人が何としてもここのモンスターを殲滅しようとするのも当然だ。


 国がそこまで前のめりなら、どれだけ犠牲が出てもやる。

 なら最初のあたし達が踏ん張らないと、後の奴らが大変になるだけだ。

 何としても、ここの<悪食>は殲滅しておきたい。

 この程度はあたしが何とか出来るはずだ。たとえ左手が使えなくてもね。


 そうやって節約しつつもタイミングを計って魔法を放とうとすると、少し集まっていた<悪食>が一斉に空洞の端の方に進む。

 何かあるのかと思って確認すると、壁にある裂け目の中へと入って行った。

 なのであたしが近づいて確認すると………


 カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ………


 「うっ! これはちょっと………シャレになってないね」


 あたしは後ずさりしながらも思案する。裂け目の向こうは<悪食>の巣になっていた。

 なんとなくだけど、ロックセンチピードは<悪食>の巣があるから空洞に居るのかもしれない。

 ロックセンチピードが<悪食>を食べる可能性は十分にある。

 だとすると、ここはロックセンチピードにとって食料庫のようなものだろう。


 それでも喰われていたりするのは、もしかしたらストーンボールにとっても同じなのか?

 つまり縄張り争いをしており、その争った死体を<悪食>が食べてる?


 あたしはそんな事を考えつつも、裂け目の向こうに放つ魔法を練り上げる。

 少々大きめの物を放たないと、おそらく巣の連中を燃やせないだろう。

 それなりの大きさの裂け目なので、ここから出られないほどに燃やしてやればいい。

 そうすれば中で勝手に焼け死ぬだろう。


 「ふっ!」


 あたしは【火魔法】の中でも強力な【連乱焼】の魔法を放った。

 これは火の玉が飛んでいく魔法だけど、着弾した場所から複数の火の玉に分裂するという魔法だ。

 二度分裂して散らばり、最後は着弾した場を中心にそれなりの広さを燃やすという魔法になる。


 それが裂け目の向こうへと飛んでいき、そして最初の着弾から<悪食>が暴れ出す。


 「「「「「「「「「「GIIII!!?!?!?」」」」」」」」」」


 全身が油まみれとも言われる<悪食>だ。本当に良く燃える。

 あまりにも燃えやす過ぎて、一気に炎と熱風が来たので離れる。


 中は阿鼻叫喚の地獄絵図と化しているね。

 もしかしたら吸える空気が無くて死んでいるかもしれないけど、それもまた助かる事でしかない。


 あたしはそもそも<悪食>を殺しに来たんだし、アッシュはモンスターというかロックセンチピードを殺して回っている。

 簡単にロックセンチピードを吹き飛ばして叩き潰すんだから、それは鉄級の昇格試験として派遣してくるはずだ。


 むしろ中央はアッシュを派遣する為に昇格試験にしたんじゃないかね? 何だかそんな気がしてきたよ。

 事態の解決の為に昇格試験を利用したんじゃなく、アッシュを派遣する為に昇格試験を利用した。

 こっちの方がしっくり来る。


 それぐらいにアッシュは強いし、明らかに銅級の強さじゃない。あり得ないと言っても良いぐらいだよ。

 パワーに目が行きがちだけど、そもそも殺し合いが普通に出来ている時点で色々とおかしい。


 普通は命のやり取りに緊張していないとおかしいんだ。

 あたしだって鉄級に上がって、そして3級になった辺りかな? 殺し合いにようやく慣れて来たのは。

 実際に相手がモンスターとはいえ、自分が殺されるかもしれない相手だ。

 本当に落ち着いて対処なんて簡単じゃない。


 それがアッシュは当たり前に出来ている。

 あたしが鉄の3級辺りになるまで出来なかった事をだ。

 闘技場の闘士を22年やってたって言ったけど、絶対にそれだけじゃないはず。

 でないと殺し合いが当たり前なんて事は出来ない。


 もし本当に闘士だけでああなったのなら、そこは間違いなく違法な闘技場だ。

 そしてあたしも噂で聞いた事がある、ウィートリフ地方のダンゼスには違法な闘技場があったって噂を。

 そこは殺し合いを当たり前にやらせる闘技場で、そこで無敗を誇った奴隷闘士が居たって話だ。


 アッシュを見ていると、その奴隷闘士こそがアッシュだとしか思えないんだよ。

 そしてそれならアレだけ強いのも、殺し合いが当たり前なのも分かるのさ。

 それ以外となると、もう裏の連中しかあり得ないからね。

 流石にそんなのはハンターになれないし、それこそハンター協会の裏の連中に消される。


 ハンター協会だって清廉潔白な組織じゃない、むしろ裏で非合法な事をしている組織だ。

 ただし国の為であったり治安の為であったり、あるいは裏切者の粛清の為に動くのが裏部隊でもある。

 そして、あたしが銀級に上がりたい理由でもあるんだけど……


 どうやらストーンボールもアッシュはあっさりと潰したらしい。

 ならこの場所のモンスターは問題なさそうだね。

 ストーンゴーレムは動いてないし、アレは最後でいいだろう。近づく意味も無いし。


 「「「「「「「「「「GI………」」」」」」」」」」


 どうやら大半は焼け死んだみたいだけど、中には息が吸えなくて死んだのも居そうだね。

 それはともかくとして、さっきまで真っ赤になっていた所に近づくのは無理そうだ。

 一応は全て殺せたか確認したかったんだけど……


 ドゴォン!!


 「!?」


 急にあの焼けた裂け目の奥から音が………っていうか、なんかデカイのが居る!?

 それが暴れ始めたのかもしれない。


 なんか嫌な予感がするねえ。

 もしかして<悪食>のモンスターなんかが居るんじゃないのかい?


 そいつが大量に<悪食>を産んだとか、そんな事は無いよね?

 なんか嫌ーな感じの雰囲気を感じるし、気づきたくなかったんだけど……


 気づいた以上は何かしらの対処をしなければ困った事になりかねない。

 とはいえ、その大きいヤツがどこに居るか分からないんだよね。

 熱すぎて近づけないから。


 どうしたもんかと思うけど、今は構えて待つしかないか。


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