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03-22-0102




 Side:ジャネス



 食事の後、あたし達は4番坑道の奥へと進むべく移動していく。

 それ自体は構わないし、銀級のロッドンも保証しているから構わない。

 もし嘘を吐いていたら、そういう奴らだという情報を流してやるだけさ。

 ま、流石にそんな事は無いだろうけどね。


 この町に来ても碌な医者や【生魔法】使いが居なかったんで飲んだくれてたけど、流石にコレ以上そんな生活を続けても仕方ないんで、丁度良かったとも言えるか。

 ヤケ酒を飲むにも金が掛かるって事で集(たか)ってたけど、流石に終わりにしなきゃいけなかったのも間違いない。


 あたしの左手が碌に動かないのも事実だけど、諦める事になった最大の理由は武器を振り回せないからだ。

 今も宿の部屋に置いたままだが、あたしの使う武器は槍だ。それも特注で作らせてある、柄が太くて強靭な鋼鉄の槍。

 あたしの代名詞でもあるんだけど……


 アレが使えなくなったのが痛い。

 知り合いには片手武器に変えて頑張ればいいなんて言われたけど、そんな簡単な事じゃないんだよ。

 今までの戦いやら経験で染み付いた自分の動きってものがある。

 あたしは槍を長い間に渡って扱ってきたんだ。今さら他の武器を使ったってズレる。


 どう足掻いてもズレるしかないんだ。槍の動きをする剣士ってのもおかしいだろうに。

 考えれば考えるほど駄目だし、それに左手が満足に動かなくてもなれるほど甘いものじゃないんだよ。

 銀級ってのはさ。


 「ここが4番坑道だ。

 ジャネスは初めてかもしれないが、空洞までは一直線なんで迷う事は無い。

 先程ジャネスの分のランタンも買って来たし、問題は無いと思うが……」


 「強いて言うなら、あたしの分もランタンまで良かったのかい? ってくらいだね。

 もちろんあった方が良いんだけどさ、それでも大きな出費を強いてるんじゃないかと思うよ」


 「今さらだよ、今さら。それより中に入ろう」


 そのアッシュの一言であたしも中に入っていく。

 坑道って言っても全く入った経験が無い訳じゃない。

 依頼で何度かは入った事があるけど、あんまり良い思い出も無いんだよねえ。

 なんと言っても暗いし狭いし動きにくい。


 ロッドンみたいに体が小さく夜目も利くなら良いんだけど、オーガ族は別に夜目が利くような種族じゃないしね。

 ランタンの明かりで何とかしなきゃいけない。


 入って分かったけど、確かにコレはランタンが要るね。

 アッシュだけが持ってればいいって思ってたけど、甘かったか。


 アッシュが先頭を歩いているけど、その光源でさえ非常に見づらい。

 敵の居る場所が分かりにくいというか、あたしが判断する為には、あたしの光源が必要だ。

 【火魔法】で焼き払わなきゃいけないし、見えないとそれさえ出来ない。


 味方を焼く訳にはいかないし、見えないと危なくて使えないね、コレは。

 それが分かるくらいには、暗闇が厳しい。


 そう思っていると、行き止まりに着いた。

 そこでアッシュは鞄からスコップを取り出して掘り始める。


 ある程度掘ると崩れ、先へと進む道が現れた。

 そうか、この壁でモンスターが外に出て来るのを防いでいた訳か。


 「ここから先に行くと、虫が食い合いをしている空洞に出る。

 私達が戦う為にも、まずは空洞の中の虫をジャネスになるべく減らしてもらいたい」


 「自分のするべき仕事ぐらいは分かってるさ。

 ここからはあたしが先頭で行く。いいね?」


 「頼む。ワシが使えるのは【土魔法】じゃ。虫どもを倒すには色々と不足しておる。

 そなたはおそらく気づいておるであろうが、国は何としてもここを使えるようにする。何があってもだ」


 「そこまで国が前のめりって事は、ここの鉱脈は金か銀だろ?

 そりゃ国が躍起(やっき)になってモンスターを始末しようとするはずさ。

 お宝があるって分かってる場所なんだ、絶対に諦める事は無い」


 「そろそろ集中しよう。空洞が近い」


 アッシュの一言にあたしも緊張感を持って進んで行く。

 そして空洞に出たんだけど、こりゃ酷い。

 ロックセンチピードを殺しているのはストーンボールか。

 あのモンスターは攻撃されそうになると丸まって突っ込んでくる。


 ロックセンチピードもストーンボールの外殻を噛み潰すのは無理みたいだ。

 そしてストーンボールは転がってぶつかる攻撃ばっかりしてる。

 そうかと思ったら死んだロックセンチピードの死体に群がる<悪食>。本当に碌な光景じゃないよ。


 あたしは右手のランタンを少し上げる事で後ろの2人に示し、そしてロックセンチピードの死体に向かって【炎焼鞭】を放った。

 この魔法は火が舐めるように広がる魔法で、結構難易度の高い魔法だ。

 あたしの実力を示すには丁度いいだろう。


 ロックセンチピードの死体に群がっていた<悪食>が一斉に燃え上がる。

 とはいえ火が付いただけで<悪食>は死んだりしない。

 連中は火が付いた後で暴れ回るんだが………そうそう。

 ああやって仲間にも火を着けて回るんだよ。


 「「「「「「「「「「GIIIII!!?!?!」」」」」」」」」」


 「ふーん、<悪食>の連中に鳴き声なんてあったんだねえ。

 ここまで数が多いから聞こえたのかな? まあいい、とりあえず一旦入り口まで後退しよう。

 火の着いた<悪食>は暴れ回るんだ。その暴走で仲間に火を着けちまうのさ」


 「見ておると、そのようじゃの。

 一旦入り口まで戻って、虫どもが外に出んように見張らねばな」


 あたし達は空洞の入り口まで戻り、そこで<悪食>の連中が燃え尽きて死んでいくのを確認する。

 <悪食>の連中が燃えてるんで、それなりに空洞の中が明るくなって確認できる状態だ。

 だから確認してるんだけど、予想以上に広い空洞で驚く。


 「よくもまあ、こんな広い空洞にぶつかったもんだ。別の掘り進め方をしてたら、転落してたかもしれないよ。

 もしこんな<悪食>が大量の空洞に落ちてたら………骨まで喰われて終わりだろうさ。あー、嫌だ嫌だ」


 「確かにのう。こんな空洞にぶつかった鉱夫は流石に可哀想という他ないわ。

 まあ、転落するような形でぶつかってはおらんので死者は出ておらんが……」


 あたしは近くに<悪食>が見えたので、そこに【炎弾】の魔法を発射。地面に居た奴らに火を着けてやった。

 少々広がってた所為で【炎弾】を使う羽目になったけど、少なかったり固まってたら【火弾】の魔法で済んだんだけどね。


 そんな調子で確認しながら【火魔法】で火を着けていくと、多くの<悪食>が燃えて死んでいく。

 大体は燃やして殺せたと思うので、アッシュが前に出る形に変更。今度はモンスターを退治していく。


 「すまないが危険があったら逃げてくれ。

 私はモンスターと戦うのに集中しなければならん。なので皆の事にまで集中できないだろう。

 あと虫は残っていても少なそうなので、踏み潰していく」


 「まあ、後でブーツを洗えばすむじゃろうの。<悪食>は<悪食>なだけで臭い虫という訳でもない。

 汚くはなるが、それは洗ってすぐに【水魔法】使いに水分を取ってもらえば済む。

 今は殲滅に集中じゃ」


 「ああ」


 アッシュはそう言うと、右手を鞄に突っ込んで何かを引きずり出した。

 その右手に握られていたのは灰色の棍棒であり、どうやらアレが<邪獄樹の棍棒>のようだ。

 まさか自分の目で見る事が出来るとは思わなかったけど、何だか普通の棍棒だとしか思えない。


 太くて先端が瘤(こぶ)の形をしているだけの棍棒。

 色が灰色なだけで、それ以外は特にどうこうと言う事も無いね?

 アレが蛮族将軍が使っていた棍棒か………武具屋に売っていても買わないだろうぐらいには、唯の棍棒の見た目しかしてない。


 あんなのが役に立つのかと思うけども、ロックセンチピードに近づいたアッシュは噛み付きに来たロックセンチピードを吹き飛ばす。


 ドガッ!!


 空洞の中が広いとはいえ、それなりの大きさのロックセンチピードが吹っ飛んじまったよ。

 どんなパワーをしてるんだと思うも、素早く近づいたアッシュはロックセンチピードの頭に棍棒を振り下ろした。


 ドゴン!!


 倒れていたロックセンチピードは頭に直撃をもらい、その一撃で頭が潰れて死亡した。

 いやぁ、蛮族将軍の棍棒もさる事ながら、アッシュのパワーがとんでもない。

 尋常が無さ過ぎて笑うしかないね。


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