第4話:『筋肉がしゃべるんですけど』
中二病の「塔」、そして強制パーティの「恋人」と共に、バグだらけの異空間に転送されてしまったシン。
絶体絶命の彼らの前に、新たなタロットが現れる。
その名は「力」、陣内カエデ。
癒し系タンクのはずなのに、なぜか彼の筋肉が語り始めた!?
再誕フィールド、調査エリアα——
御神楽シンたちは、塔の崩壊跡とおぼしき区域に降り立った。瓦礫が積み重なり、あちこちに崩れかけた石材が散らばる中、魔力反応の残滓が淡く揺らめいていた。
空には紫がかったノイズのような靄がかかり、風の代わりに低周波のような振動が地面を伝ってくる。
「うわ、足場悪っ……てか、塔って崩れたまま放置なんかよ」
「当然だ。この世界は“未完の再誕”……つまり、完成を許されぬ領域なのだからな」
隣で腕を組んだミツルが、満足げに中二語を炸裂させてくる。シンは思わずため息を漏らし、背後で警戒中のレイに視線を送るが、彼女はすでに敵影のスキャンに集中していた。
そんな中——
突如、瓦礫の向こうから「ドゴォォン!!」という轟音とともに、巨体が跳ね上がった。
「筋肉は裏切らないッッ!!」
それは、まさに筋肉の塊と言っていいほどの男。分厚い胸板、鉄のような腹筋、隆起した上腕二頭筋。そして、なぜかその肉体が……震えた。
「我らはお前を歓迎するぞ、愚者よ……」
「はあああ!? 今、筋肉が……喋った!?」
《スキル連鎖:愚者の因果改変 × 力の同調覚醒》
《結果:筋肉に“意思”が宿りました》
愚者スキルの影響で、どうやら“筋肉”そのものに人格が芽生えてしまったらしい。
「愚者シンよ。我が名は右大胸筋、こちらは左、そして下腹筋の三兄弟だ」
「情報量多すぎるし、誰が知りたいんだそんな詳細設定!!」
その肉体の主、陣内カエデは頭を掻きながら申し訳なさそうに笑った。
「いやー……なんか、ダンベル振ってたら突然、筋肉が“語りかけて”きてさ」
「筋肉が……語りかけて……?」
真顔で反復したのはミツルだった。
「筋肉に意思……それは、生命進化の兆候……可能性の極地……」
「いやお前も乗るなよ! 真面目に考察するな!!」
レイは呆れたように一歩引いて、深呼吸一つ。
「まぁ……回復と防御性能が高いなら文句ないわ」
「実は、肩甲骨がヒーリングを発動するんだぜ。あと、左大腿筋が敵のヘイトを吸収する」
「筋肉万能かよ!!」
《スキル派生:“筋肉リンク:マッスルコア”を獲得しました》
《効果:戦闘中、筋肉が独自判断で行動を取ることがあります》
「それオートAIよりタチ悪いんじゃ……」
《ナレーション:筋肉とは、語り、動き、そして守る存在である!!》
「お前も出てくんなあああああ!!」
こうして、
人格を持つ筋肉とともに戦う、癒やし系(?)タンクの加入により、
愚者・恋人・塔の三人パーティに、筋肉トリオ(物理)が合流。
混沌に混沌を重ねた旅路は、ますます訳がわからない方向へと進んでいくのであった——。
「筋肉が語る」という、またしても理不尽な事態に巻き込まれてしまったシン。
それでも、仲間が増えていくことで、物語は少しずつ賑やかになってきましたね。
次回は、いよいよ個性豊かな仲間たちが集結し、ギルドを結成します!
果たして、そのギルド名は……!?
次回、『笑うタロット、集う愚者』、お楽しみに!




