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第17.5話:『ifの彼方で——それぞれの対話』月代ユウの空間:光の庭

静かに分岐空間へ導かれたタロットたちは、それぞれの“if”——選ばなかった選択肢と対面していた。その空間は一人ひとり異なり、まるで心の奥底を可視化したかのようだった。空も地面も、記憶と後悔と願いで構成された幻影。だが、そこに映っていたのは紛れもなく、彼ら自身の“もうひとつの可能性”だった。

花咲く庭。光が満ち、風が吹き抜ける。


白と金に彩られたその世界は、美しく、完璧だった。空は青く、草花は咲き乱れ、小鳥のさえずりさえ、どこか人工的な心地よさを醸し出している。


そこにいたのは、戦わないヒーラーとして暮らすユウ。


傷ついた者を癒やし、悲しむ者のそばに寄り添い、穏やかに、静かに生きている。それは確かに優しさに満ちた生き方だった。


けれど、鏡の奥に映る自分の瞳は、どこか退屈そうだった。


「……誰も、僕を傷つけてこない。だから、僕も誰も傷つけない。そういう世界って……安全だけど、なんだか、薄いんだよね」


ユウは足元に咲く白百合を見下ろす。それは完璧に咲いていたが、香りはしなかった。


「痛みを知らない優しさって、たぶん嘘だよ。僕が癒したかったのは……痛みを抱えてる誰かだった」


風が止まり、庭の光が少しだけ翳る。


ユウは空を仰ぎ、微かに笑った。


「……やっぱり、月は影があってこそだよね。夜があるから、月は輝ける。光だけの世界なんて、息が詰まっちゃう」


彼は振り返り、光の庭を一歩ずつ後にした。


その背には、仄かな闇がまとわりついていた——だが、それこそが彼の“本当の輪郭”だった。

そして——

すべてのifが過ぎ去ったあと。

全員は一つの場所に集い、互いの選ばなかった未来を見送り、それでも“今”の自分を、もう一度見つめ直していた。

そこには、選ばなかったことの意味を携え、今を選んだ“彼ら”がいた。

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