華と炎の厄介な土産
《異形》の存在が強くなっている要因が俺にある。
そんな不条理な発言を受け、当然愉快な気分になれるわけもない。
そんな俺の苦々しい思いに気づいているのかいないのか、デュランタは結論を告げる。
「お前が今回の《異形》たちの強まっている状況の要因の一つだと考えられる以上…、俺は《異形》に関わる情報をホイホイ与えられないし、お前自身が《異形》にどんな影響を及ぼすか未知数だから変なちょっかいもかけらんないっつーわけ。」
「あぁ、そうかよ。」
投げやりにかえせば、「悪いな。」などと軽い謝罪をされる。
そんな言葉一つで気が晴れるわけもない。だが…、デュランタが悪いわけでもないし、詫びる必要だってない。
こんな感情は無意味な事だと俺だって分かっているのだ。理不尽なこの事態に文句を言いたくとも、その対象が誰なのか俺には分からないのだから。
「そーいやお前何でまた来たんだ?」
この話は終わりだと言わんばかりにデュランタは話を変える。
「あ?」
「昨日の報告だったらもう来たんだろ?」
既に俺が報告した情報共有は済んでるようだ。
どうせ《異形》の話に食い下がったところで無意味だ。俺はサッサと諦め媛さんに伝えるべきだった内容を言うことにした。
デュランタは学舎の事も含め色々把握してるわけだし別に構わないだろう。放っとけば勝手に媛さんたちにも伝わるだろうし、言うこと言ったらサッサと塒で酒飲んで寝よう。
媛さんに報告が終わったその後に新たに知った情報をデュランタに伝えた。
「………えぇぇ、何その厄介な状況……。」
うんざりしたような顔で頭を抱え始めたデュランタを他人事のように眺めた。
炎の拳神が王国の命令で教会の上層の人間を調べている。
その人物は学舎にも関わりがあるという疑惑がある。
「……で、お前が学舎被害者だって事もバレてんのか…。何で今更……、それにどうして………あ。」
デュランタは首を傾げながら、考え込んだかと思えば、ふと俺の方に目をよこすと何かに気づいたような素振りを見せた。
「……そういやさ、聞きそびれて今まで忘れてたんだけど、ここ来る前から手に持ってるその花束…何?」
デュランタに指摘され、先ほどから握りしめたままのサージェスに押し付けられた花束を思い出す。
媛さんにでも押し付けようとそのまま持ってきてたのだが、さっきデュランタの攻撃を避けた際に振り回してしまったからか、結構無惨だ。
「…あぁ、さっき炎の拳神が俺に探りを入れてきた始めに見舞いだとかで押し付けられた。」
流石にコレでは媛さんには渡せないが、僅かながら花は残っているので捨てるのも忍びない。そこらの瓶に枯れるまで挿しとけばいいだろう。……俺の視界に入らない団員たちの休憩所にでも。
そんな風に花の後処理を考えてると、デュランタが奇妙に顔を歪めて俺を眺めている。
責めているような呆れているようなその視線に、俺は何だと問えば、デュランタは眉間を指で押さえ唸る。
「お前…正体バレてんじゃねぇの?…ソレ……お前の花じゃん。」
そりゃ俺が受け取ったんだから俺の花なんだろうが…、多分そういう意味ではないのだろう。
だが、花束を指さし指摘するデュランタの言葉の意味が分からず、俺は眉を顰める。そんな俺の様子にじれてきたのかデュランタは大きく指を振りながら、
「だーかーらー、それ。ラナンキュラスの花束じゃん!!」
「は?」
そのデュランタの言葉に俺はボロボロになっている花束を見た。
確かに…なんとなく形が似たようなもんな気もする。だが、
「…ラナンキュラスってのは黄色なんだろ?こんな色じゃないはずだ。」
前に媛さんに教えられた時の花の色は確かに黄色だった。
「いやいやいや、そりゃ紫のラナンキュラスは珍しいかもしれないけど、黄色一色なわけないだろうが!!薔薇とかだって赤とかピンクとか複数の色があるだろ?それとおんなじだよ!!」
「ピンクは薔薇じゃなくてカーネーションだろうが。」
「え?ウソだろ!?今までアレ色で判別してたの!?」
信じられないといった目で俺を見ながら、デュランタが懸命に説明してくる。その説明で花には同じ種類でも色んな色があることは把握できたが……、
「……まぁーうん、今回はお前のモノ知らずも結果オーライかもな。拳神もカマかけでその花用意したんだろうけど。お前がそもそもラナンキュラスの花だってわかんなかったからリアクションも取りようねぇだろうし。」
思い返せばサージェスのあのこちらを窺うような視線はそうかもしれないが……。
「………。」
安心したようなデュランタには悪いが、どうだろうな。
俺自身は確かにこの花束がラナンキュラスだとは分からなかった。しかし――
(思わずサージェスが驚いて心配するような反応を返しちまったよな…。あの時。)
あの悪夢に出てきた紫色の花。
それと同じ花が出てきてひどく動揺してしまった自覚はある。
勿論、サージェスに俺のその時の反応を正確に読み取ることなんざ出来やしないだろうが…。
果たしてあの男は俺の反応をどう捉えたのだろうか。
(本当に面倒くせぇ男に関わっちまったな。)




