3-57 理不尽が大猿を襲う
「おいおいおい!? おれぁわりぃ事なんもしてねぇだろ!? なんで殺す流れになってんだ!?」
「紅狐に喧嘩を売ったであろう? 殺す理由はそれだけで充分だ。それに貴様は敵だろうに。のこのこと目前に現れて何を抜かしておる。」
「いや敵だけど! そっちがキレるのはおかしーだろうが!」
「ごちゃごちゃと喧しい。貴様が来なくてもこちらから行くぞ!」
実際問題、仲間を呼ばれる前に3vs1でコイツを始末しないとマズい。こちらはただでさえ体力が少なく、しかも戦線離脱が2人もいるのだ。3vs2ですら勝てるか怪しい。
「こ、こっちくんなー!!」
大猿は足元に転がる石を投げつけてくるが、そんなものではオレの歩みは止まらない。電流を流した鉄パイプで投石を打ち返す。
「獣程度が紅狐に喧嘩を売るなど……万死に値するっ!!」
「なんだよオメェ……! なんなんだよぉ!!」
来るな、と言わんばかりに大猿は投石を続けるがそれが当たることはない。飛来した石を全て叩き落とす。後ろから紅狐と幼女の視線を感じる。恐らくどうするべきか悩んでいるのであろう。
「紅狐! 幼女! 早々にケリを付けるぞ!」
「ん。」
「い、いいんですか……?」
「奴は敵、情けなど不要だ!」
「テメェ頭おかしいだろ!?」
「貴様のハゲた頭よりはマシだ!」
鉄パイプを構えつつ、空いている左手で雷の槍を放つ。大猿はガタイの割に俊敏な動きで槍を避け、距離を空けようとするが、逃げ場を塞ぐよう追撃で雷の槍を大猿の背後に向けて数本放つ。
「3vs1で卑怯だとは思わねぇのかよ!?」
「全く思わん! 寧ろ貴様が出てきたのが悪い!」
「暴君かよチキショウ……!」
「囲まれるのが嫌であれば仲間と行動するべきであろう。ケチをつけられる謂れはない!」
「ウー……悪人……。」
しまった、紅狐の印象が悪くなった気がする。これ以上悪印象を持たれる前に、この大猿を早々に片付けるべきだ。
「死ねぃ! 己の軽率さを恨みながらな!」
雷の槍を放つのと同時に、鉄パイプの先から雷撃を放つ。上下左右からの攻撃だ。避けられるはずがない。
大猿は諦めたのか動く様子がない。これなら早々に片付けられそうだ、と思った時。
「キィィィィエェェェェ!!」
ーー大猿が叫ぶ。
ーー甲高い叫び声が響く。
あまりの音量に耳が痛む。奴の声に弾かれ、雷撃はあらぬところに着弾する。
「ぐぅ……!」
「うるさい……。」
「み、耳が痛いです……!」
叫び終えた大猿がこちらに向き直り、何かを話しているが、先程の奴の叫び声で何を言っているか聞き取れない。
「ウー!」
背後から紅狐の声が響く。それと同時にオレの足元に一本の苦無が刺さる。間一髪足を退くことで避けられたが、この苦無、嫌な知らせに違いない。
大猿の方を見ると、大猿の横にはいつの間にか真っ白な大型の犬の姿があった。
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