3-38 天輪チーム2
「わたし……綺麗?」
この言葉を聞いた瞬間、全身から汗が噴き出す。しまった、コイツはマズい。このフレーズ……覚えしかない!!
「噴ッ!!」
距離を取りたいがため、咄嗟に中段前蹴りを放ってしまう。それをスルリ、と難なく躱し赤マスクが私の眼前に迫る。
「わたし……きれいぃ?」
虚ろな目はそのままに、こちらの顔にくっつきそうな距離で質問を繰り返す。この問いに答えてはいけない……!
「勢ッ!!」
肩ごと相手に密着し、地面を踏みしめ相手を吹き飛ばす、所謂“鉄山靠“を繰り出し、赤マスクを吹き飛ばそうとする。しかし、この技も空を切り、赤マスクに当たることがない。
「答えない……なんで……答えないぃぃぃ!!」
赤マスクは裁縫用サイズの大きい鋏を取り出し、こちらの手先や耳を切ろうとする。なんとかスウェーで躱してはいるが、スピードが早すぎて反撃する隙がない。
「そっかぁ……わたしが不細工だから……答えないのねえぇえぇぇぇ!!」
「何も言っていない! 噴ッ!!」
こちらが答えずともヒートアップする赤マスク。大きく振りかぶったタイミングに合わせてカウンターの拳を繰り出す。芯は捉えられなかったが、一先ず当てることはできた。
「ぎゃ……⁉︎⁉︎」
「早合点はいただけないな。お嬢さん。」
そう言いつつ、背後の2人をチラリと確認する。ヴィナスの繰り出すお札を2人が協力して撃ち落としてくれている様子だった。これなら任せても問題ないだろう。
「さて……我々は個人戦といこうか。お嬢さん……いや、“口裂け女“さん?」
「あ……ああぁぁぁぁぁ!!」
口裂け女という名称を出した瞬間、相手は酷く拒絶したような反応を示す。
ーー口裂け女。
都市伝説になるほどの知名度で、主に幼い子供を襲う妖怪。『わたし綺麗?』と質問を投げかけ、それに答えた人間を襲う習性がある。使用する道具は鋏、メス、出刃包丁など多岐にわたる妖怪だ。
「おや、気に食わない様子だね? では名をお聞かせ願えるかな? 私は天輪。そちらは?」
「……『Queen』。」
「Queen……なるほど、怪談の“女王“に相応しい名前だね。」
一昔前、世間は口裂け女の目撃情報に溢れていた。岐阜から始まり、岡山、八王子、三宮、三軒茶屋などなど……。挙げ出したらキリがないレベルだ。
「わたし……わたしぃぃぃ!! ああぁぁぁぁ!!」
こちらの言葉に耳も傾けず、今度はメスを手にしてそれを振り回す。軽い錯乱状態なのだろう。何が原因でそんなに……?
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