3-37 天輪チーム1
狗くんの呼びかけに応じて、狗くん達の後を追う。といっても空を駆けているウーと狗くんと違い、こちらは下道だ。次第に距離が遠のいていく。
「て、天輪さん大丈夫ですか?」
「ああ、ありがとう。危ないからしっかり中で捕まっていてくれ。」
「は、はい!」
あーちゃんが私を心配してくれる。それだけでこの身体は更に速く走れる。ガタガタと2人の乗っている部分を揺らしながら全速力で走る。
ーードンッ!!
ーーギニャア!!
……しまった。急ぎすぎて飛び出してきた何かを撥ねた。鳴き声的に……猫か? 念のため立ち止まり、人型になって近寄る。
「猫ちゃん、無事か?」
「ぶ、無事にゃわけにゃいだろ! 頭おかしいのかにゃ⁉︎⁉︎」
フーッと大きく威嚇し、小型の2尾の猫が立ち上がり喋る。この特徴……狗くんの言っていた“ヴィナス“か⁉︎ 念のため距離を取りつつ、いつでも戦闘に入れるよう構えながら話を続ける。
「いやいや、昔から言うだろう。『車は急に止まれない』と。飛び出して来た君が悪い。」
「お前は車じゃにゃくて馬車にゃ!」
「いや牛車だ。それに馬車も牛車も車の文字が入るから車だろう。もしかして君は頭が悪いのか?」
「〜〜〜!!!!」
ヴィナスは声にならない声を出しながら、テシテシと地面を踏みつける。返す言葉が思いつかなかったらしい。
「天輪、いじめちゃダメ。」
「紅狐さん、これはイジメではなく指導なんだが……。」
「猫さん、どうしてここに?」
あーちゃんが無警戒に話しかける。……あーちゃんに何かしてみろ。貴様を確実に殺す!!
「ヒィ……! う、うちはあんたらの足止めにゃ! それに、もう1人いるにゃ!」
ヴィナスが少し下がると、街路樹から1人の女が現れる。赤い服にロングの黒髪。マスクをして虚ろな目でこちらを視認する。
「……そちらのお嬢さんがお仲間かい?」
「そうにゃ! お姉ちゃんはすっごく強いにゃ!」
「……。」
虚ろな目で私、あーちゃん、紅狐さんと順に眺めていく。品定めでもしているのだろうか。にしては挙動がおかしい。そう思ったとき、赤マスクが一歩踏み出す。方向は……私に向かってだ。
「おやおや、御指名かな?」
「にゃにゃ! お姉ちゃんやっちゃうにゃ! ボコボコにゃ!」
あーちゃんと紅狐さんを守るべくこちらも一歩踏み出す。赤マスクはこちらにのそのそと近寄ってくる。お互いの手が届かないギリギリの距離あたりで赤マスクは止まり、特に構えた様子もなく、ボソボソと声をかけてきた。
「……し……い?」
「……? すまない、今なんと言ったんだい?」
思った以上に赤マスクの声が小さく、そしてマスクに遮られ上手く聞き取れない。
「わ……し……い?」
「……。」
やはり聞き取れない。仕方ない、どんな罠を仕掛けているかわからないが、私から出向こう。2歩、踏み出す。距離は1mもないだろう。これなら流石に聞き取れる筈だ。
「さあ、三度目になるがなんと言っていたんだい?」
「わたし……綺麗?」
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