3-35 陣取り合戦2
周囲を警戒していたが、今のところ敵が来る気配はない。紅狐、あーちゃん、ウーに建物外の防衛を任せて、天輪と目標地点に向かう。目的の宝石は未だ無傷のままだった。
「誰もいないな……。」
「それなら好都合だね。狗くん、私が壊しても?」
「ああ、頼む。床は抜かないでくれよ?」
「ハハッ。これを壊すのに床抜きは必要ないさ。」
天輪は空手でいうところの『正拳突き』の構えを取り、そのまま振り抜く。2発目の拳が当たったところで宝石は砕け、陣地の占領が完了し天狗の旗が立つ。
「……にしても天輪。お前ホントに色々な格闘技を覚えてるんだな。」
「嗜む程度だがね。生前、降りかかる火の粉を払うために覚えたのさ。」
「ふーん……。」
確かに天輪も黙っていればかなり容姿の整った部類だし、引く手は多かっただろう。それにスラっとしていて、天輪がモテることが気に食わない男共に、やっかみで絡まれていたことも想像に難くない。
「まあこうして今役に立っているんだ。覚えていて良かったと思うよ。」
流石に大きな奴らや特殊な技を使う奴には勝てないけどね、と一言呟き天輪は先に外へと向かった。後を追うように俺も続く。
「……さてと、狸どもはどう出てくると思う?」
「うーん……。今の破壊を見て、どこかしらで仕掛けてくるとは思うよ。彼等の占領地は現状3つ。このまま私達が一歩、二歩先に行くのを黙って見てる可能性は無いと思う。」
「だよな。まあ注意しつつ出たとこ勝負って感じになるな。」
建物の外に出て、全員合流する。他のメンバーも襲われなかったことに疑問を抱いていたが、このままもう一つの未占領地に向かうことになった。
ーーー未占領地B付近ーーー
ガタガタと音を立て、天輪が女性陣を乗せて走る。辺りは先ほどと変わらず静かで、人影1つ見当たらない。
「紅狐、回復アイテム足りてるか?」
「ん……。そろそろなくなる。」
「りょーかい。俺も回復しておきたいし、あそこの建物で少し補充しておくか。」
目の前に見えて来た食料品店で一旦補給をすることにする。今度は俺とウーで建物内に入ることにした。
「たこ焼きに……あった。お好み焼き。」
「……! 待て! 狗!」
お好み焼きを取ろうとした時、ウーが大声で静止する。……が、その静止は間に合わず、手に取ってしまう。
ーーバチィ!!
ーー手に取った瞬間、強烈な電撃が走った。
「いってぇ!!」
「だから待てと言ったであろう痴れ者が!!」
ボンッと音を立てて、お好み焼きが2枚の紙に変わる。表面には梵字で「擬態セヨ」と「雷ヲ放テ」と書かれている。
「くっそ……あのクソ化け猫の仕業だな……!」
「化け猫じゃないにゃ!!」
俺が悪態をつくと、物陰から声と共にヴィナスが現れる。よくも目の前に出てこれたなぁ……!!
「よう泣きつきクソ猫。じぃじとばぁばとやらに会いにきたぜ。」
「にゃ! お前にゃんかじぃじは相手しにゃいにゃ!」
「……毛玉。狸は何処だ?」
ウーからギリっ、と歯軋りの音が聞こえる。相当に腹が立っているのだろう。今にもヴィナスに食ってかかりそうな様相だ。
「にゃ……! そ、そんな顔したってじぃじはこにゃいにゃ! ざまーみろにゃ!」
来ない……? ということは付近にはいるってことだな?
「来ないっていうなら……来るように仕向けりゃ良いよなぁ?」
「狗、貴様にしては良いことを言うな。」
「にゃ……?」
ボキボキと指の骨を鳴らし、一歩前に進む。狸を呼び寄せたいのもあるが、騙し討ちをしてきたアホ猫に仕置きをしないとな。
「二対一だぜ、クソ猫。準備はいいか?」
「……にゃー⁉︎⁉︎」
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