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虹の魔道士Ⅰ  作者: あず
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第十四話 灼熱の大地

イグニスの街を歩いて移動し、灼熱の大地へと足を踏み入れた。

私はパッシアさんに言われた通りに、ひんやりドリンクを腰のポーチから取り出して、ぐいっと一気に飲み干した。


「あ…。そういえばこれ一本丸々飲んでよかったんですか?」


「飲んでから聞く辺り、イヴらしいわね。大丈夫よ。元々一本ずつ飲むものだし。ちなみに効果は一本で一時間から二時間程度らしいわ。」


「了解しました!その時間内に竜から雫をもらえればいいですけど…。」


私とパッシアさん以外にも灼熱の大地に足を踏み入れている人はまばらにいて、皆境界線辺りでひんやりドリンクと思わしき飲み物を飲んでいた。


実際に灼熱の大地に足を踏み入れてみると、地面からでも熱気が襲ってくるほど暑かった。


「あっつ…。皆どこに向かってるんですか?」


「皆、私たちと同じだと思うわ。竜のいる神殿に用があるんだと思う。」


「えっ、てことは皆、宝石将になるための試練の最中ってことですか?」


「そうじゃないわ。皆が皆宝石将になるための試練を受けている訳じゃなくて、単に祈祷しに来ているものだと思う。」


「祈祷…?」


「イグニスの街でも見たでしょう?噴水に硬貨を投げ入れると、ってやつ。あれよりも効果があるのが、灼熱の大地の竜の住まう神殿の魔力の泉に硬貨を投げ入れることなのよ。」


「そんな竜の住む神殿の魔力の泉に物を放り込んでいいんですか?」


「まぁ、ここは特別って感じね。他の都市では禁止しているところもあるけど。」


「へぇ…。それで皆祈祷しに来ているんですね…。」


私たちがそんな話をしていると、ゆらりと揺れたカゲロウの先に灼熱の大地に似合わぬ真っ白な神殿が見えてきた。


「あそこが赤き竜、ルーフスが鎮座する神殿よ。」


「やっと、着きましたね…。ここまでに何度汗を拭ったことか…。」


「さ、ちゃちゃっと試練を聞きましょ。」


私たちが神殿の中に入ると、外とは打って変わって少し薄暗くひんやりしていた。

それは神殿に入って直ぐのところに魔力の泉が湧き出ていたからだ。


「今の内に魔力の泉から水を汲んでおきましょうかね。魔力の回復にもなるから。」


「分かりました!」


私は祈祷する人たちを尻目に飲み水を入れている革袋に水を汲んだ。


「すみません、お待たせしました!」


私が泉の傍で待っていたパッシアの元へと戻ると、パッシアは腕組みをして待っていた。


「さて、ルーフス様に会いに行きますか!」


私たちは神殿の泉がある場所より、更に奥、建物の最深部までやってきた。そこには地下に降りる階段があった。


「ここからはイヴの試練だから私の付き添いはここまでよ。頑張ってらっしゃい。」


「はい!」


私は一人、パッシアさんに見送られて階段を下りて行った。

階段を下りて行くと、私が来たことを歓迎するかのように、廊下にある松明に火が勝手について行った。


「わ…、すごい…。アーテル様の時とは違うな…。」


「ほう。あのアーテルに認められた魔導士か。」


私の独り言に返事するように突然声がして、私は慌ててきょろきょろと辺りを見渡した。


すると、松明の明かりが円形状に次々と火が灯されていき、声の主をゆらりと浮かばせた。


いつの間にか私の前には真紅の鱗を松明の明かりでギラギラと光らせ、金色の瞳がこちらを品定めするようにこちらを捉えていた。


「あ…、あなたがルーフス様です、ね…?」


「いかにも。私がこの灼熱の土地を統べる赤の竜、ルーフスだ。小さき魔道士よ。お前は何を望む?」


「わ、私は、宝石将になるために、七色の竜の雫を集めています。既にアーテル様の雫を貰って、それに魔結晶もいただいて、魔法も使えるようになりました…。これは感謝してもしきれないことです。必ず宝石将になって立派な魔導士として活躍したいと思っています。」


「その決心は強固なものか?」


「は、はい…。」


「どもるということは、自信がないことの表れだぞ。まだ決心が緩いようだな。そんな柔な魔導士には私の雫は渡せない。」


「…ッ、どんな試練でも受けます。その試練で私自身が変われるかもしれないと、ここまでの旅で実感しています。どうか、試練だけでも受けさせてください…!」


私は赤い竜であるルーフス様を前にして頭を下げた。


「小さき魔道士よ。簡単にこうべを垂れるものではない。元々試練は魔導士たちの力量とその決意を見極めるもの。それを受ける権利はお前にもある。雫は渡せないと言ったが、試練を受けさせないとは言っていない。よかろう、この試練でお前の真意を見定めよう。私の試練は…。」


私はルーフス様の目の前でごくりと唾を飲み込み、次の言葉を待った。





私が階段から上がってくると、魔力の泉の方を向いて腕組をして待っていた、パッシアさんが私に気付いた。


「あ、イヴ!どうだった?ルーフス様は。」


「厳格な方でした…。あのアーテル様より威圧感があって…。じゃなくて、私には試練が課せられました。それをこなさなければいけないんです。」


「ほう。その試練って?」


「他言無用と言われたので、パッシアさんにも言えないんです…。すみません…。私一人で試練に向き合って、クリアしないといけないんです。それで…、試練のために一度イグニスの街に戻ってもいいですか?」


「それは構わないけど…。ルーフス様が他言無用と言ったなら、私は口出しできないわね。この間の温泉宿に泊まって待ってるわ。」


「ありがとうございます。」


「じゃ、ここの神殿も用は済んだのね?」


「必ず雫を貰うためにここに戻ってくるので。」


「お、やる気だね。」


そういってパッシアさんはにやりと笑って、私の手を引いて神殿の外まで連れ出した。

小さく芽生えた決意と共に、私は赤き竜の住まう神殿を後にした。


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