異変
大変お待たせしました。久しぶりに投稿させていただきます。
「ん?」
その日の夜、桜夜は館内の何らかの異変を察知し突如目が覚めた。
「宝物庫の守護をしているはずの衛兵がまったく動いていない・・・というか巡回もその場に立ち止まったままだ。」
異変を察知した桜夜は現在自室の中から館内の様子を観察をしている。
前の世界のように防犯カメラを使っているわけでは無いのになぜこんな真似が出来るかというと、一重に魔法技術の賜物である。
桜夜はまだ魔力操作の技術は高くないが、どんな事態でも対応できるようにマーリンから便利なオリジナル魔法を幾つか伝授してもらっている。
その一部が“追跡”、“空間把握”という魔法である。
“追跡”は魔法をかけた対象の位置をどんなに離れていても知ることができる前の世界でいうGPSのような魔法で、空間把握は指定した範囲の半径25m程になにがあるかを把握できる魔法である。
空間把握に似た魔法で術者の半径数十mの状況を把握できる”探知魔法”も使えるのであるが、何分この館は広いため自室で使うと効果の範囲は廊下と両隣にある部屋くらいしか把握することが出来ない。そのため桜夜は館全体を把握する別の方法をとる必要があった。
この館には広さに見合った人員が各所に配置されているため、賊が侵入するにしても誰にも会うことなく侵入することはほぼ不可能だ。
そこで桜夜が取った作戦が“追跡”を館の全員にかけ、誰かに異常があった場合“追跡”をかけた人物の場所を中心に空間把握をかけ付近の状況を確認するという物であった。
“追跡“の優れた点は一度かけると意図的に解かない限り半永久的に持続する点と、魔法を最初に対象にかける以外は魔力を消耗することも無く、かけた後は好きな時に位置を確認することができる点である。
ちなみにこのことは館内の人間には誰一人伝えておらず、桜夜は秘密裏に1週間かけて全員に魔法をかけ、対象に異常があれば“空間把握”ですぐに周りを確認して犯人を突き止められるという監視システムを確立させていた。
この魔法の存在を知らないものは、監視システムの目から逃れるのは難しいはずなのであるが・・・
「衛兵と巡回の周りに“空間把握”を発動・・・盗賊の姿は無い・・・なぜ?」
不思議なことに異常があった周りに空間把握を行ってみても盗賊らしき人物は誰もいなかった。
桜夜が異常を察知し、空間把握を発動するまで5秒程しかたっていないはずなのにだ。
「私の実力では手に余りそうね・・・すぐサリリンに報告しよう!」
桜夜はサリーの執務室へと駆けた。
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「サリリン!」
「あ~~~・・・どうしたのですか?こんな夜更けに淑女の部屋を殿方が尋ねるなんて・・・夜這いですの?」
「は~・・・違います。・・・賊が侵入した模様です。」
サリーは桜夜の返答を聞くと、これまでのふざけているような雰囲気は一変、覇気を纏う歴戦の大魔法使いの顔となった。
「人数は?」
「分かりません・・・しかし今警備にあたっている者の50名の大半は既に意識が無い状態です。これ程の人数を相手に単独では厳しいはず・・・よって賊は複数、単独だとしても相当に腕が立つ人物と考えるのが妥当かと思います。」
「そうですわね。警備していた衛兵たちも冒険者ランクでいえばC程度の実力でで決して弱くは無い。それを簡単に相手取っているとなると対応できるのは私、隊長、副隊長、料理長くらいとなりますわ・・・」
「それが屋敷のどこにも隊長たちの反応が無いのです。」
「くっ!先手を打たれたようですね・・・ここまでこちら側のことを把握しているのはなぜ?侵入はどこから?」
彼女は少しの間思考すると思い立ったかのように、桜夜の前に歩み寄り幼い容姿に相反した力強い瞳で桜夜を見つめてくる。
「こちらの駒が無い以上キングの私が出ていくしかありません・・・ナイトの役目をお願いできますか?」
そんな風に言われたら答えは決まっているような物だろう。
「はい!そのために私がいます。」
2人は応接室のドアを吹き飛ばすような勢いで開け放ち、古代の遺物が収められている宝物庫へと向かった。
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「開いていますわ・・・」
「ここまで一本道でした。それに今はサリリンの魔法で転移は使えない、宝物庫の中は完全な密室・・・」
「中には確実に賊が居るということですわね・・・サクヤさん参りましょう。」
2人は剣と杖を構えつつ宝物庫に入っていく。中は金銀財宝の山で、それが通路にまで押し寄せてきている。音をたてると賊に気づかれる恐れがあるため、極力音をたてないように歩いていく・・・気を抜けないためか前回来た時よりも通路の距離が遥かに長く感じる。
唐突と道が開かれ、そこにあったのは前回と変わらない箱状の鉄格子
・・・唯一違ったのはそこである人物が背を向け立っていること。
「う・・・うそ・・・なぜあなたが?どうして?」
そこに居た予想外の人物にサリーの声は震える。それは桜夜も同じであった。何しろここ1週間という短い時間であったが、共に過ごした人物がそこに居たのだから。
「おや?予想以上に早かったですね。サリー・アソライト・フォレス様、それにサクヤ殿」
こんな状況にも関わらず、親しい人に挨拶をするような口調で話しかけてきたのは、白の制服を着た好青年・・・
サリーの腹心の部下であるケイン・トウィンクルであった。




