領主の館での日常
久しぶりに投稿します。お待たせいたしました。最近、現実が忙しくて(焦)
「はぁ~・・・暇だな~・・・」
アソライト地方の領主であり、万能の賢者マーリンの妹であるサリー・アソライト・フォレスに盗賊から古代の遺物を守護する依頼を受けた桜夜は、宴を終えた後、旅芸人一座“アイド~ル”の皆と別れ一人領主の館に残ったのであるが・・・何事も無く1週間が経過しようとしていた。
桜夜はサリーの部下と毎日屋敷の巡回と宝物庫の警護を代わる代わる行っていたのであるが・・・今は少し息抜きにと窓から美しい花々が咲き乱れる中庭を見ていた。
「こらっ!」
「っ!!!」
(ヤバいっ!もしかして隊長か!)
この館の衛兵隊長だけは違って規則にとても厳しい、規則を破った者はこの馬鹿でかい館の周りを100周とか空気椅子で5時間キープとか罰が下される。桜夜も一度衛兵たちのばか騒ぎに巻き込まれ経験したが・・・もうあの地獄は味わいたくないと思っている。
(は~これで今日は死んだかも・・・)
桜夜はビクビクしながら声のした方を向いてみると、想像していた筋骨隆々な大男では無く、白い制服を着た20歳くらいの好青年。
「ってケインじゃないか・・・驚かせないでよ~」
「ハハッ!サボっていたサクヤ殿が悪いのではないか?」
話しかけてきたのは、領主の館に招待されたときトーチの街の酒場からここまで案内してくれたサリー部下の一人ケイン・トウィンクル。初めは生真面目で堅苦しそうな印象であったが3日ほど前からよく話しかけてくるようになった。今では屋敷の中でサリーよりも話しているかもしれない。
「だって~暇なんだもん・・・」
「何事も無いことは良いことではないか。」
「そうは言っても、もう一週間だよ?身体を動かそうにも炊事や家事とかも全部メイドさんたちしてくれるからやること無いし・・・それに時間は無限では無いし」
「ん?何か急ぎの用でもあるのか?」
そう桜夜の本来の目的はセレスティアのどこかにある(方法があればであるが)元の世界に帰還する方法を見つけることだ。
異世界人はこのセレスティアでは英雄扱いされているので、公言して探してもらえば良いという考えもあったのであるが、女性の異世界人というのが桜夜行動を制限する。
過去に転移してきた女性の異世界人は、セレスティアの人達の印象が良くないのだ。なので桜夜自身も現在は男装し、異世界人であることも伏せている。マーリンに最初に男装を勧められた時は気が進まなかったのであるが、彼女の邪魔にならない胸やさっぱりとした性格も相まって妙にしっくりくる。
(男装は楽しいけど、女性ってまったく気づかれないのもちょっと複雑・・・)
今は桜夜自身が力不足なので自己研鑽と旅の資金を溜めるため(マーリンへの莫大な借金を少しでも返済するためでもある)に時間を費やしている
唯一の救いはこちらの時間があちらの世界の進む時間と10倍遅いということであるが、少しずつではあるがあちらでは確実に時は流れている・・・本音を言えば1分1秒と無駄にしたくは無い。
焦っているわけでは無いが桜夜の心情としては「おい盗賊!盗みにくるならさっさと出てこいや~~~!!!」である。
しかし、この話は良く話すようになったとはいえケインするつもりはない。
なので
「ある物を探すために世界を旅をしているんだ」とだけ伝えた。
(嘘はついてないから、許容範囲だよね?)
「・・・・・俺と同じか」
「ん?何か言った?」
ケインが何かボソボソ言っていたが桜夜には聞こえなかった。
「いや何でもない・・・私は巡回の続きがある故失礼する。サボるんじゃないぞ?」
「りょーかい!そっちも頑張って!」
ケインは桜夜の返事に頷くと元の持ち場に戻っていった。
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「交代の時間です。」
「了解です。後を頼みます」
警護の交代時間が来たので次の人にこの場を任せる。
自身の部屋に戻ると汗をかいた衣服を脱ぎ捨て、桶に魔法で湯を張り、浸した布で汚れた身体を拭く。
本当は大浴場でゆっくり湯に使って羽を休めたいところではあるが、男装している身であるのでそうもいかない。
肌着を取り換え、再び装備を着用すると空っぽなお腹を手で摩りつつ食堂へと向かう。ちなみにこのだだっ広い屋敷の食堂まで1キロほどもあるため移動だけでも相当な時間だ。
転移魔法を使えれば相当楽なのであるが、サリーが盗賊対策で転移魔法を無効化する結界を屋敷全域に張っているため転移魔法を発動することができない。
まぁどのみち桜夜には、まだ転移魔法を使えるまでの魔力操作技術は無いのであるが・・・
「サクヤさん今から食事ですの?」
食堂までの長い道の途中、一際大きな扉から現れたのはエルフの少女。
「サリリンお疲れ様です。そうですよ。またご一緒いかがですか?」
「是非お願いしますわ!」
毎回高確率で会うのはこの館の主でマーリンの妹のサリー・アソライト・フォレス。丁度この時間に彼女も休息を入れているらしい。
食堂に付くと衛兵たちが長蛇の列を作り、順番に食事を受け取っており、2人もそこに続く最初に一緒になったとき「なんで領主なのに、わざわざ並んでいるんですか?」とサリーに桜夜は質問してみると「横入りは駄目ですわ!・・・とお兄様が昔から言われていたので」という見事なブラコン発言が返ってきた。
「サリリンは偉いですね~」小さい時からの兄の言いつけを護っているサリーの姿にホッコリした桜夜は思わずサリーの頭を撫でてしまう。
「えへへ////」
その時の表情はこれまでで一番自然な表情に思えた。これが本来のサリーなんだろう。こんな姿を見ていると、とても崇高な(ノーブル)小さき魔女という大層な2つ名を持った人物に見えない。
そんな風にジャレているといつの間にか自分たちの番になり、
「サリー様お待たせしました!日替わり定食2人前です!」
「ありがとう!」
「うわ~良い匂い!」
無事食事を受けとった2人は、決まってサリーの執務室(さっき彼女が出てきた巨大な扉の先)に向かう。
そして毎回話題になるのが・・・
「殿方は何をしてもらうと喜んでもらえるものですか?」
とか
「私と一諸にいて彼は楽しいのでしょうか?・・・・・喜ばせてあげられているのでしょうか?」
とか、今日なんかは
「昨夜までただ私の奉仕を受けるだけで従順だった彼が本能をむき出しに押し倒してきて・・・私嬉しくて/////」
といった女子トーク(?)どうやらサリーは見た目は幼い少女でも、中身は桜夜よりもず~~~と大人なようだ・・・
(いずれマーリンに報告しなくちゃならないだろうな~・・・。)
桜夜はそんなことを思いつつ、今日も静かに夜が更けていく・・・
・・・はずであったのだが
次回はやっと待ちに待った盗賊の登場です!




