古代の遺物
お兄様その御仁はどなたですの?」
モグモグモグ・・・・・!(焦)
「彼はサクヤ・クドウ訳があって今トーチの街の教会でお世話になってるんだ。魔法を教えているから一応私の弟子の一人ってことになるかな?」
モグモグモグ・・・・・!!
「そうでしたの・・・先程もご挨拶しましたがアソライト地方の領主であり万能の賢者マーリン・フォレスの妹サリー・アソライト・フォレスです。よろしくお願いしますわ。」
モグモグモグ・・・・・!!!
「ゴックン・・・ハ~~~・・・失礼しました。サリー・アソライト・フォレス様初めまして、サクヤ・クドウと申します。本日はこのような祝いの場を設けてくださりありがとうございます。お兄様にもいつも大変お世話になっております。私はトーチの街では駆け出しの冒険者をさせていただいおりまして、今回の豊穣祭の手伝いもアイド~ルさん達からの依頼を受け助力させていただきました。」
「うふふ。そんな仰々しく話さなくても良いですわよ。様付けも結構ですわ。様付けされると一気に年を取った気になりますの」
「いや領主様にそんな態度は失礼かと・・・」
「あら聞いてみれば私なんかよりもず~~~っと偉大な万能の賢者様を呼び捨てているそうじゃないですか?」
「うっ・・・それは・・・」
「だから私のことはサリーとかサリーちゃん、サリリンとか好きに呼んで欲しいですわ。」
「それじゃサリリンで・・・」
「・・・弱腰かと思いきや、意外と攻めて来ますのね。・・・まぁ良いですわ。本題に入らせていただきます。」
そしてマリーは桜夜に領主の館から次々と古代の遺物が盗み出されていること、次はここが狙われるかもしれないことを伝えた。
「サリリンはそんな重要な任務を私に任せて大丈夫なのですか?」
幾ら兄のマーリンの薦めとはいえ、桜夜は
「ええお任せするもりです。といっても実際に警備するときはあなただけでなく私も含め部下も付けます。簡単に盗まれるつもりは無いのでサクヤはあくまで保険だと考えてくれれば良いですわ。」
まぁさすがに一任するとなると一介のFランク冒険者である桜夜には責任が重過ぎる。サリーにあくまで補助であると言われたことで少し肩の荷が下りた。
「なるほど!ちなみにその古代の遺物ってどのような物なのですか?」
桜夜がサリーに質問を投げかけると代わりにマーリンが答える。
「古代の遺物は、その名の通り古代の遺跡などで見つかる遥か昔の魔道具のことだよ。遺跡から発見されている文献などによると1万年くらい前かな?今のセレスティアの魔法使いでは到底届かない高度な魔法技術を持つ文明が存在していたらしい。そのため古代の遺物現在一般的に使用されている魔道具とは性能が段違いでね、中にはうまく能力を発動することが出来れば国一つを潰してしまうほどの能力を持つ物もあるそうだ。まぁそんなのは国宝級に分類されるような物だけどね。しかもその出鱈目な性能故か古代の遺物は使用する者の資質に大きく影響されるから使いこなせる人はほとんどいないんだ。だから、そんな絶大な能力を持っていてもその多くが宝物庫で埃を被っているというわけさ。」
「そうなんですか・・・何か凄すぎてイメージが湧かないですね」
「ご覧になりますか?」
そこでサリーからとんでもない発言が飛び出した。
「良いんですか!?」
桜夜の返答にはそんな貴重な物を下々である自分なんかが見て良いのだろうかという意味が含まれている。
「かまいませんわ。百聞は一見に如かずと言いますし、自分の護衛対象をご自身の眼で確認しておいた方がよろしいかと・・・ご案内しますわ付いてきてください。」
しかし、サリーはそんな桜夜の意図を汲んだ上で護衛対象である古代の遺物が安置されている宝物庫へと歩みを進めるのであった。
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古代の遺物が安置されている場所は、正にThe宝物庫!って感じの金のメッキが施された巨大な扉が入り口だった。
(これじゃ宝物はここだよ!って言っているようなものだよね・・・隠すとかすれば良いのに・・・)
などと桜夜は内心そんな感想を抱きながらもサリー、マーリン兄弟に付いていく。
扉を開けるときサリーは手を当て何かつぶやいた後、首からペンダントのように下げているアンティークな形をしている鍵で錠を開けているようだった。おそらく魔法と錠の2重のセキュリティなのだろう。
「サリリン、その鍵は普段どうしてるの?」
「いつもは私が肌身離さず身に付けていますわ。」
「湯あみの時も?」
「もっ、勿論ですわ・・・しかしサクヤ、紳士が淑女に対してそんな質問をするのはどうかと・・・」
サリーは若干顔を赤くしながら答える。
「あっすみません・・・つい(男装してるってこと忘れてた!)」
「まぁこの屋敷で一番戦闘力が高いサリーが身に付けていれば、まず取られることは無いだろうね。私レベルの手練れであれば可能だけど」
「お兄様よりも強い人がそんなに居るはずないじゃありませんか・・・行きますわよ」
扉の中に入ると、予想以上に広い空間が広がっていた。前の世界でいう小体育館ほどの広さはあるだろうか?だが、注目すべきはそこでは無い、なんとその空間一杯に輝く金色の物質が埋め尽くされているのである。
「これ本物ですか?」
実物を余り見たことのない桜夜は思わずそうサリーに問う。
「ん?当たり前ですわ。竜などの災害級の魔物を何匹か討伐すると、すぐ溜まってしまいますの。そんなに使い道も無いので、いつもは貴重な食材などを金の代わりに要求するのですけど、釣り合わない分は金で貰うことになってしまい、結局溜まってしまいますのよ・・・そろそろ限界ですわ。増設した方が良いかしら?」
(うわ~そんなセリフ言う人って本当に居るんだ・・・庶民の僕には一生縁が無さそうだな)
そんな風に3人は他愛無い話をしながら黄金の山の間の道を進んでいくと、唐突と道が開かれた。そこにあったのは箱状の鉄格子。
「古代の遺物はこの中にありますの。」
どうやら流石に古代の遺物はそこら辺の宝(?)のような扱いにはしていないようだ。
ここからでは中にある物が見えないのでより近づこうとするが、
「サクヤお気をつけて、鉄格子に触れると侵入者撃退用の魔法が発動しますから」
「サリリンもう少し早く言ってください!危うく触るところでしたよ!」
そんなサクヤの抗議にサリーはテヘッと自分の頭を拳でゴッツンコして可愛い子ぶる。
(もう、そういうときだけ子供っぽさを利用するのは反則だよ・・・)
サクヤは溜息を吐くと改めて鉄格子に近づき(触れない程度)中を見る。
そこにあったのは台座の上にぽつんと置かれた黒く細長い棒状の物。前の世界でいう漆塗りを施したような質感で美しいのではあるが・・・派手さは無い、はっきり言うと地味だ。マーリンから散々古代の遺物は高い、貴重、高性能という話を聞いていたため桜夜この見た目に拍子抜けしてしまう。
「あれが我がアソライト地方に王族が託された古代の遺物・・・“黒姫”ですわ。見た目は地味ですが・・・」
どうやら地味だと思っているのは桜夜だけでは無かったようだ。
「一見只の黒い棒状の物に見えるでしょうが、鞘に収まっている剣なのです。あのような見た目にしているのは、外見から武器だと認識されないようにするためだと思われます。」
どうやら仕込み杖のような物らしい。
「古代の遺物ということは何らかの魔法効果があるのだと思いますが?」
興味本位でマーリンがサリーに質問を投げかける。
「勿論です。国の学者が言うには“不壊”“不消耗”それに“成長”という特性があるようです。」
「ふむ。“不壊”は武器が破損しない、“不摩耗”は剣に必要な研ぎの必要が無いということだろうとは分かるが・・・“成長”とは?」
「それが特性は分かっているのですが、今まで“黒姫”を使いこなすことができる者がおらず、どんな能力なのか検証が出来ないのですわ・・・“不壊”と“不摩耗”は大抵の古代の遺物に付与されているためどういった能力か分かるのですが・・・」
「そうか・・・分からないことを聞いてすまないね」
「いえお兄様が謝ることはございません。私の力不足ですわ・・・。」
兄の質問に答えられないことにサリーが明らかに落胆する。
「サリリン、話変わりますけどこの部屋に秘密の抜け道とかありますか?あと外から強力な魔法で攻撃し、壁に穴をあけて侵入と言う可能性もあると思うのですが・・・」
場の空気が重くなろうとしていた時、今度は桜夜からの質問が出た。
「いえ、この部屋は先程通った扉以外に道は無いですわ。それに、館の外壁には魔道具の結界魔法でコーティングされておりますので多少の魔法では傷一つ付けることは出来ません。それに・・・」
「「それに?」」
「噂が本当であれば盗賊は、どこからともなく現れ建物も人も気付付けること無く、古代の遺物を奪っていくそうです。」
「つまり盗賊には何らかの方法で正面から侵入する方法があるということですか?」
「ということになりますわね・・・」
「ふむ・・・」
3人はそれからどうやって盗賊が侵入してくるか考えたのであるが、結局盗賊の侵入方法の検討は付かず、今だ宴を続けている広間へと戻っていった。
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「桜夜君どこいってたの!」
「先生!僕先生の分の料理取り分けておいたんです。一緒に食べましょう!」
広間に帰って来るやいなや桜夜の両腕をガシッとホールドされた。
「ちょっと2人共まだサリリンと話が終わって・・・あっっ!」
桜夜はリリアンとポルク姉弟に両腕を掴まれながら、再び宴の席への強制的に連行されていった。
「彼に任せて本当に大丈夫なのですか?どことなくポワンとしているように見えますが・・・」
連行される桜夜の後ろ姿を見て若干不安に駆られる。
「大丈夫、大丈夫。ああ見えて彼中々頭が切れるし、実力もモーリスのお墨付きだし」
「まぁ万能の賢者であるお兄様と元剣聖のモーリス様のお墨付きですか・・・なら心配するだけ無駄と言うものですわね」
そんな風に傍観していた2人であったが、弟子の料理人や部下に呼ばれ兄妹は宴の席へと溶け込んでいった。
ついに10月突入です!肌寒くなってきましたので、体調管理には気をつけましょう。あと食べ過ぎにも(笑)




