豊穣祭
「いらっしゃい、いらっしゃい!オーク肉の串焼きだよ~。」
「トッ、トンモコロシは如何でしゅか~!今なら箱買いで7ウォレでしゅ!甘~くて美味しいでしゅよ~!」
「魔物の素材を使ってエルフ族が加工したアクセサリーだよ~!どれも当店自慢の品だよ!是非見て行っておくれ!」
今日は豊穣祭の当日。トーチの街の沿道には至る所に出店が立ち並び多くの人で賑わっている。
そんな中大きくて重そうな荷物を持っているにも関わらず人ごみを器用にすり抜けている人物がいた。その人物は一度も止まることなく教会まで辿りつく。
教会の前でも他の所と同様にある1つの出店が出ていた。看板には“お好み焼き”“焼きそば”“たこ焼き”と書かれている。驚くことに並んでいる客は優に100mはあろうかという長蛇の列を作っていた。
教会の前で出店を開いている人物に声をかける。
「皆お待たせ~!!!」
「「「「「サクヤ兄お帰り~!!!」」」」」
「あらサクヤ君!随分早かったわね。重いものを持ってこの人ごみの中じゃ大変だったでしょ?大丈夫?」
桜夜が帰ってくると、子ども達と教会のシスター兼魔法の先生でもあるマリアがそれぞれ声をかけてきた。
「人ごみは慣れてるし、体力と力には自信があるので全然問題ないですよ。」
「頼もしいわね。例年だとロランかアランに手伝ってもらってるんだけど、今年はどっちも都合がつかなくて、どうしようかと思ってたの。サクヤ君が居てくれて本当に良かったわ。」
「いえいえ。また食材少なくなってきたら買い出し行くんで、その時にでも呼んでください。中の厨房に運んで下拵えを手伝えば良いですか?」
「ええお願い・・・・見ての通り人が全然足りてないの。」
厨房からは次々と料理が運ばれ、子どもたちが接客しているのであるが列は減るどころか今だ増長している。
「本当に凄い人ですね。毎年こんな感じなんですか?」
「そうなのよ。元々先生は孤児達の生活費の足しにするために私達にレシピを教えてくれの。どこにも公開してないレシピだから毎年これ食べたさに豊穣祭に来る人も沢山いるのよ。似た商品も出回っているみたいだけど、味は段違いね。以前どこかの国の宮廷料理人がレシピを教えてくれって頼み込んできたこともあったわ。」
「その気持ち分かります。本当に美味しいですもん!」
「そうね。私も毎年食べるたびに生きててよかったと本気で思うわ。」
味を思い出すと不覚にも恍惚な表情を浮かべてしまう。それだけマーリンの料理は美味し過ぎるのだ。
厨房に顔を出すと戦場だった。子どもたちはマーリンの指揮下の元で一心不乱に料理を作っている。しかも、マーリンやマリア程では無いが、凄く慣れた手つきだ。
・・・・将来この中からマーリンを超える大料理人が生まれるかもしれない。
そんなことをマーリンに言うと
「ん?各国の料理大会で優勝したり、貴族御用達3つ星店の料理長をしてたり、何人かは宮廷料理人になったりしてるよ?マリアも大会出れば優勝くらいはするだろうし」
はい。既にいらっしゃいました。
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そんな慌ただしい日中であったが夕方近くになってやっと客を全員捌くことが出来た。
「うぅ・・・腕が上がらない」
途中参戦した桜夜でもこうなのだ、子どもたちは当然疲れ果てていた・・・まるでただの屍のようだ。
「は~い皆休憩は終わり!豊穣祭はこれからが本番だよ!・・・それとも今年はだ~~~れも中央広場のステージ観たくないのかな?私1人で行っちゃおうかな~」
「「「「「いっ行くもん!」」」」」
マリアが子どもたちに意地悪っぽく聞くと、よっぽど楽しみにしていたのであろう。子どもたちは疲れながらも身体をムクッと起こした。
「よし!それでこそ家の子達だね。それじゃあ皆に私から元気になるお・ま・じ・な・い!それっ!」
マリアから白い光が放たれ辺りにいた子どもたちと桜夜を包む。すると不思議とさっきの疲労感が嘘のように消えていた。
「はは!マリア姉がお・ま・じ・な・いっ!だって!良い歳して何言ってんだ。ただの回復魔法じゃ・・・痛っ!!!」
男の子が言い切る前に気づけばマリアから拳骨を喰らっていた。
「良い歳って何!私はまだピチピチの10代です~。まったくロランのせいで真似する子が多くて困っちゃうわ!」
「でも、マリアさんピチピチっていうのは死語だと思うよ」
「確かに・・・」
「えっサクヤ君まで!しかも200歳を超えてる先生には言われたくない~~!!!」
「「「「「ハッハッハッハッ!」」」」」
そんな和やかな雰囲気で時間は過ぎていった。
太陽が沈み、街でポツリポツリと明かりが灯る頃。いよいよ豊穣祭のメインイベント、中央広場でのステージが幕を開ける。
長くなってしまったので一度切ります。




