深い森へ続く道
トーチの街でテレポートの魔法を使用した桜夜、マーリン、ナタリア一行は現在森の中を歩いていた。この森はマーリンの小屋の近くの森を更に深く入った場所で“灯の届かぬ深森”と呼ばれている。
マーリンたちが使ったテレポートとは空間魔法の一種でマーリンが開発したオリジナル魔法の空間収納と同じカテゴリーに入る。この魔法はある物体をA地点からB地点へと移動させる魔法で熟練の魔法使いであれば大抵使用が出来る。しかし、1回に移動できるのは原則的に自身が視認できるところまでなので、長距離を移動するためには何度もテレポートを繰り返さなければならない。
一気にテレポート出来無くもないのだが、視認が出来ていないとテレポート先の位置を把握出来ないため、無駄に魔力を消費してしまったり、安全な場所にテレポート出来ず気づけば壁の中で身動きがとれず窒息などのリスクが伴うため長距離のテレポートを行うものは少ない。
マーリンの場合は空間把握によって移動先の正確な情報を得てからテレポートするため、長距離であっても安全で魔力効率が良い。まぁ毎回一か八かでテレポートするギャンブラーも居るらしいが・・・
今回桜夜達がこの森に来た目的は豊穣祭の衣装に必要な材料を手に入れることである。森のことについては歩きながらマーリンが初見である桜夜に説明する。
「この森に出てくるのはスライム、ゴブリン、グリーンウルフ、オーク、グリーンスパイダー・・・それに今回の獲物である七色の大蜘蛛だね。レインボースパイダーはグリーンスパイダーの上位種で強さは冒険者のAランクパーティーで何とか倒せるくらいかな?」
「えっ!それじゃ僕じゃ相手にならないんじゃ・・・」
賢者であり何百年も生きていて経験豊富なマーリンはともかく対魔物の実戦経験が無い桜夜がとても闘えるとは思わなかった。
「大丈夫よ~!老いたとはいえ元聖騎士団長のモーリス相手に良い勝負してるんだから!経験はこれから積んでいけば良いのよ!危ないときは私やマーリンがフォローするからさ!」
桜夜の弱気発言を聞いてナタリアが大丈夫だと肩を叩く。(うっ・・・痛い・・・)ナタリアはこんな身体のどこにこんな力があるのかと驚くくらい怪力である。彼女の武器は身の丈の2倍はあるのではないかという巨大な斧で、歩いている間もウォーミングアップでビュンビュンと大きい音をたてながら軽々と振り回している。
「う~~・・・頑張ってみます。やるしかないみたいですし。」
「よし。その意気だよサクヤ!」
「おっ!丁度良くこの先に魔物がいるみたいだ・・・。」
マーリンはそう言うと9時の方向を指さした。視認は出来ないため空間把握によって感知したのだろう。
「大きさ的にゴブリンかな?5体いるからサクヤはナタリアと一緒に倒してきて。私は後方で2人のサポートと周囲の警戒をしているから。」
「はい!」
「おっけ~」
そう返事をすると2人はマーリンの指さす方向に駈け出した。
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駈け出した茂みの先には、マーリンの言っていた通り5体のゴブリンがいた。桜夜達が突然現れたことで動揺している様子で動きが止まっている。
(まず戦術の基本は相手を知ること!“身体解析”!)
桜夜はその一瞬を逃さず標的に身体解析の魔法をかける。そして身体解析で得られたゴブリンたちの情報が桜夜の視界に表示される。
名前:無し
種族:ゴブリン
性別:雄
身長:147.7
体重:63.0
体力:35
魔力:10
力:33
防御:20
敏捷:25
特技:剣術Lv2
称号:森の住人
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名前:無し
種族:ゴブリン
性別:雄
身長:145.0
体重:60.5
体力:30
魔力:6
力:35
防御:15
敏捷:30
特技:剣術Lv1
称号:森の住人
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名前:無し
種族:ゴブリン
性別:雄
身長:150.0
体重:71.0
体力:45
魔力:0
力:48
防御:30
敏捷:15
特技:棍術Lv2
称号:森の住人
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名前:無し
種族:ゴブリン
性別:雄
身長:139.7
体重:52.0
体力:22
魔力:15
力:18
防御:13
敏捷:40
特技:弓術Lv2
称号:森の住人
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名前:無し
種族:ゴブリン
性別:雄
身長:143.0
体重:58.4
体力:20
魔力:32
力:10
防御:22
敏捷:25
特技:魔力操作Lv2
称号:森の住人
身体解析をかけてみると個々の能力が大分違うことに気づいた。しかもゴブリンたちは、剣士2体、棍棒を持つパワーファイターが1体、弓使いが1体、魔法使いが1体と相当バランスがとれたパーティーであることも驚きである。
「棍棒を持った奴タフそうね・・・私はそいつを先に片づけるわ!」
桜夜が手こずりそうだと思っていた一番身体が大きいゴブリンにナタリアが切りかかる!相手は棍棒で攻撃を防ごうとするが、棍棒ごと身体をスッパリと切断され絶命した・・・。恐ろしい切れ味である。
(タフとか関係ないじゃん!何その異常な破壊力!)
と桜夜は内心思いつつも自分の相手に向き直る。剣士が2体桜夜に襲い掛かるところで、桜夜はその攻撃を受け流し、カウンターで相手の命を刈り取る・・・不思議と初めて生き物を殺したというのに思ったほど衝撃はなかった。
1体が絶命し、それに気がつかないのか1体の攻撃は止まらなず、剣を振り回してくる!相手の剣撃を受け止めると同時に桜夜は自身の失敗に気が付いた・・・。
ゴブリンの後方部隊から火の塊が桜夜に向かって放たれていたのである。しかも既に避けきれないほど近くまで接近していた。
(やばい!当たる!・・・・・えっ!?)
自身に当たると思い皮膚が焼ける痛みを覚悟した刹那・・・・・不思議なことが起こった。
桜夜に火の塊が当たろうとした瞬間、桜夜の目の前に薄い膜のようなものが発生し、トランポリンにあたるかのようにポヨ~ンと跳ね返されたのである。
跳ね返された火の塊はゴブリンの後方部隊、魔法使いと弓使いを巻き込み焼き尽くした。
「サクヤ油断しないで!」
後ろからマーリンの声が聞こえる。きっと今の魔法はマーリンによるものだったのであろう。
桜夜は護ってくれたマーリンに感謝しつつ、一度距離をとり最後の1体になったゴブリンの剣士に向き直る。
「悪いけど、これで終わりにするよ!」
魔力循環により自身の剣に魔力を集中させる。相手も桜夜から強力な攻撃が来るであろうと本能で察知し、身構える。
桜夜が身を屈め足に力を込めたと思った瞬間!・・・既にその場に桜夜はおらず、ゴブリンの背後に移動していた。当のゴブリンは自身に何が起きたかも分からず炎につつまれながら崩れ落ち・・・息絶えた。
「は~は~は~・・・モーリス神父に教えてもらったけど初めての戦闘で”魔炎斬”を使うとは思わなかった・・・。」
桜夜はホッとした表情を浮かべながらポツリと呟いた。
こうして桜夜の初めての魔物との戦闘が終了した。




