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旅芸人一座

皆さんお久しぶりです。実習がようやく半分終わり、一区切りついたので投稿します。土日でもう1回投稿できれば良いなと考えています。

桜夜は冒険者ギルドで依頼を受けた後、町外れにある大きなテントを訪れていた。


「失礼しま~す。冒険者ギルドより依頼を受けて参りました」


すると奥から走ってくるような音が聞こえ入り口が開かれる。


そこには12歳くらいの少年が立っていた。髪は桃色で緩く天然パーマがかかっており、リリアンと同じような耳と尻尾がある。人懐っこそうな顔で桜夜を見て尻尾をブンブンと振っている。


「おお~!よくいらっしゃいました!僕は旅芸人一座”アイドール”のポルクと言います。さぁどうぞ中へ・・・冒険者様1名ご来店で~す!」


「「「「「いらっしゃいませ~!」」」」」


なぜかファミレスのような出迎えに首を傾げつつも桜夜はポルクの後を着いていく。テントの中は予想以上に広々としており床には絨毯のようなものが敷かれ、その上では演奏、曲芸などの練習がされていた。その中で美しい歌声で一際目立つ少女と眼が合った。少女は一瞬驚いたような表情を見せたが、すぐ桜夜に笑顔で手を振ってきた。


「えっ!?サクヤ君!?何で?」

「仕事できたんだよ」


それでも首を傾げるリリアンを見てポルクが


「リア姉、この方と知り合いなのですか?」

「ほら、いつも話してるでしょ?一緒に魔法の授業に出てるサクヤ君だよ!」

「えっ!あなたがサクヤさん!・・・想像と違う・・・」


「「えっ?」」


桜夜とリリアンはポルクの反応に首を傾げる。


「いや!何でもありません!コホンッ!リア姉この前冒険者ギルドに依頼書を出した話をしたでしょう?サクヤさんはその依頼書を見て来てくれたんだ」

「そういえば・・・そんなこと言ってたね。サクヤ君本当に良いの?私たちが言うのも難だけどお金あまり出せないし・・・雑用ばかりになっちゃうと思うよ?」


リリアンは心配そうな顔をして聞いてくる。しかし桜夜は


「リリアン心配しなくても大丈夫だよ?雑用なら慣れてるしさ!それにボクは何か目標に向かって一生懸命に頑張っている人をみていると興奮し・・・じゃなくて・・・そう!応援したくなるんだ」


少し危ないことを言いそうになりながらも何とか綺麗に言葉を纏めた。


「そっか!それじゃあ大変だと思うけどお願いするね!分からないことはポルクに聞いてね!」

「分かった。よろしくねポルク君!」

「僕からもお願いします!いや~サクヤさんって見た目も格好良いのに心意気を格好良いなんて・・・男の鏡ですね!尊敬します!」


(いや・・・私本当は女なんだけど・・・)


桜夜は少し複雑な気持ちになりながらも2人のキラキラした視線を受け止めていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


それから桜夜の忙しい日々が始まった。授業と武術の稽古には普段通りに参加しつつ、あまった時間は旅芸人一座の手伝いをする。手伝う内容は炊事家事洗濯、必要な物の買出し(ポルクと一緒に2人でやると意外と早く終わる)披露する芸を実際に見て意見を言ったりすることである。


そして桜夜得意の整体による肉体のメンテナンスである。座長は桜夜の施術を受けて


「桜夜君に頼んで本当に良かったよ。・・・悪いことがあるとすれば、この快感が癖になりそうなことだろうね・・・」


と熱っぽい視線で桜夜を見ていた。大柄な男性から放たれるその視線は超絶破壊的であった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


依頼を受けてから3週間、旅芸人一座”アイドール”では残り1ヶ月に迫った豊穣祭に向け着々と準備が進んでいる・・・と思われていたのだが、座長やリリアン、ポルク、一座の芸人たちは一箇所に集まり頭を抱えていた。その中には現在冒険者の仕事でお手伝い中の桜夜の姿もある。


事の発端は1週間前にさかのぼる。いつも通りに練習していると誰かがぽつりと呟いた


「何か普通じゃね?・・・」


けっして大きい声でなかったはずであるが動物並みの聴力を持っている彼らは一斉に振り向いた。別にその言葉が不快だったのでは無く、誰もが薄々感じていることであったからだ。


領主様から豊穣祭の依頼がきてから3週間が経過し、曲順や披露する技・歌・演奏にも磨きがかかってきている。・・・しかし、それだけなのである。


豊穣祭は1年に一度”トーチ”の町で行われる一大イベントであり、それだけ住民も期待が大きい。しかも今回は中央広場のメインステージで披露するためトーチの町の住人のほとんどが集まる。いつも酒場や道端で仕事をしている彼らにとってどれだけ規格外かが分かるだろう。


桜夜は芸人の皆が頭を抱えている様子を見て何とか力になれないかと思考を巡らす。

(ん~~~リリアン達の演奏や歌、曲芸とかのレベルは素人目で見ても凄いと思うし最近更に磨きがかかってる。技術が問題ないとすれば・・・演出かな?もっとインパクトが欲しい。元の世界だと有名人のライブで、歌っている人の後ろにキレッきれのバックダンサーが着いたり、舞台装置のようなド派手な衣装、宙づりになったり、花火上がったりとか・・・かな?でもあれは相当お金かかるし・・・ってそれこそ魔法を活用すれば良いのか!というかリリアンが魔法勉強してた理由が芸に活用するためじゃなかったっけ!)


リリアン達に今の自分の考えを話してみると首を振られた。リリアンも学びはじめた当初は魔法を活用したいと思っていたのだが、さっき考えていたような演出をするためには相当な魔力量と魔力操作能力が必要になるという。確かに言われてみると花火は何とかなるかもしれないが、宙づりなどリリアンや桜夜の力量ではとても無理だと思った。


衣装は遠目で見ると地味なので変えたいところではあるが、お金が無い。材料だけ買って自分たちで仕立てるにしても時間が無い。


唯一バックダンサーについては、今までそういう考えが無かったため「いたら格好かも!」「僕やってみたい!」とリリアンやポルク達に賛成してもらったが・・・それでも、まだ物足りない。それにダンスの振り付けも桜夜は一応ダンス部のマネージャーをしていたため覚えて踊ることは出来るが自分で振りつけるのは難しい。芸人の人たちも曲芸はできるがダンスはあんまりだそうだ。


またしても振出しかと思ったところでパサッという音と共に一人の男がテントの入り口から入ってきた。


「御免下さ~~い。こちらでお世話になっているサクヤ君の知り合いのマーリンという者ですけども~~。差し入れをお持ちしました~~。」



マーリンだった。



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