1-4 POV : イサカ
――君、死にたいね?
えっ……。
驚いた。これは……たまげた。
「は……? なに言ってんの?」
はい、ご名答、図星でーす――なんて言えるわけがないし、ましてや初対面。私の心を見透かしてきたような言動に思わず驚いて、でもそれを悟られたくないから、懸命に平然を取り繕った。
「夜中にお酒飲んでるから死にたいなんて、飛躍しすぎでしょ」
「私に嘘は通用しないよ?」
やけに落ち着き払っている彼女の態度が鬱陶しい。
「アンタってさ、詐欺師かそういう宗教のなんかなの?」
「失礼だなァ」
依然、彼女は綽然としながらクスリと笑い、それから睫毛を靡かせながら目を細めて、またも妖麗に囁いた。
「私が誰か、気になる?」
いいや、別に?
「まぁ、すこしだけ……」
あ、やべっ……。
「ふふっ。私ね…………宇宙人なんだ」
あ、やべっ……。
色々やばいわ。
「だから、君がいま、なにを考えていて、どうしたくてどうしたくないか、ぜーんぶ分かるんだよ。どう?」
その後に「すごいでしょ」なんてつけ足して、いい大人が可愛げに振る舞う。
「えぇーすごぉーい。あ、アタシもう行かなきゃー」
酔いも興醒め。厄介な人に絡まれたら逃げるのが一番。
「ねぇえ、私、変な人ではないんだよ?」
「いや変だし怖いしおかしいよ。大体なんで私に絡むの」
女、うわの空で数瞬の間を置く。
「うーん、君のことが知りたくなったから、かな?」
あー。これあれだ。俗に言うナンパってやつだ。
「ごめん。わたし女の人には興味なくて」
「違うちがう! 私はただ仲良くなりたいなーって、そう思っただけ」
今度は潤んだ目をキラキラ輝かせて、それをやかましく私へ向けてくる。正直、裏をかいてもその瞳には嘘が見えなかった――いやいや、かといってだ、宇宙人だのなんだのホザく人間に易々と近づくわけにはいかないし……。だいたい、初めましてでよくそんなノリできるね。
「お名前、教えてよ」
ぎょっとして、今度は私が身を引いた。あっちこっちに目を泳がせるけど、どうしても彼女のお熱な視線からは逃れられない。はぁ……。
「……イサカ」
「イサカちゃん!」
「うっさい。アンタは」
「ユリウス。よろしくね」
名前に反しない、鼻立ちの良いヨーロピアン顔。エメラルド色の双眸に、ひときわ目を惹く長い睫毛。銀色の髪は全体が長く枝垂れて、その隙間から見える美貌でもって、彼女はにかっと微笑んだ。
それがなんでか、無性にすっごくムカついて、もう一杯。くそっ、もっと飲む。
BGMがポール・アンカに変わった時だった。




