6-6 POV : ギャレット
段々と、視界の端が緑だか、紫だか――――と、その刹那、荒くれの戦場にわずかな静寂が訪れた。
…………。
………………。
どうやら、敵は我々の姿を見失ったらしい。
…………………………。
――ダダンッ‼ ダダダダダンッ‼ ドドッ、ドダダダダッ‼
――ッッッツキィンッ! ツパァァアアンンッ‼ ヒュインッ――!?
チッ、クッソっ!
「おいなんだんだっ!」
突然の斉射。小石が銃弾と衝突してあちこちに飛散する。ツパァァァンッ!
五人は胎児みたく体を委縮させて、雨にも劣らずに降りそそぐ弾丸に慄く。とにかく当たらないよう、当たらないよう――!
斉射は十数秒と続いた。スモークはもくもくと靄を成し、状況の把握は難しい。
「ああぁぁぅ!?」
「おおぉぉっえええぇっ――‼」
叫喚呼号。複数の男が煙の向こうで悲鳴を上げる。近くにいた敵も見境なく撃たれているようで、肉体を抉る生々しい音がいくつも鼓膜にこびりついた。
「なにが起きてる!?」
私たちは互いに顔を合わせる。
掃射は確実に敵を倒しているようだが、だとしてもその理由がわからない。
――ジジジジイイイイィィィイイイィィッ‼
今度は電ノコのように連なった銃声。突然の轟音に耳鳴りを起こす。
――これは間違いない、M134だ。
「ミニかっ?」
さすがは軍人。ダニエルの勘が素早くはたらく。
「そうっぽいな」
「アタシカが?」
「さすがにそんなの持ってないでしょ」
とイデス。
そして再び、静寂が訪れる。……しかし、今度は数秒の間をおいて、装甲車の排気音が割って入った。しかも一台、二台どころの騒ぎではない。聴こえるだけでも五、六程度はある。これは……。
「なんの騒ぎだ……?」
チェンが姿勢を低めたまま、コンテナの端まで寄り、そっと角から顔を出――ッパァアンッツピュッッスプュッ――‼
――ジジジジイイイィィッッッジイイイィィィ!
遅かった。
止めることも、驚くこともままならぬまま、飛び散る血肉を頬に受ける。ピチャッ。
…………。
「…………サーマルだ」
そう、呟いた。
装備していたスモークが対サーマルじゃなかったのが大きなミスだった。もとより、サーマルを使う相手など、想定外。
「アタシカの連中じゃない……」
震えおどけるフランツにつられ、彼の目線を追う。たったの数歩先、あまりの被撃で無茶苦茶になったチェンの姿があった。あっという間の、無惨な最期。
「チッ、裏口に戻ろう」
ダニエルが言う。
「既に包囲されてる」
「正面突破も無理なんじゃ」
「別の出口から逃げる」
地図は頭に入れてある。あれこれ考えている暇はない。いちばん可能性の高いルートに賭けるしか――。
「第5特殊作戦実行班に告ぐ。お前らはただちに投降されたし」
――大きな無線。一切の銃声が止み、小さな悶絶と、優しい霧雨の音だけが辺りを包む。
それは間違いなく、我々五――四人に対する無線だった。
「A.D.C.C.D.の許可なく小隊行動をとることは明確な規律違反だ。繰り返す。エコーの総員はただちに投降せよ。猶予はない」
無線を通して聞こえる嗄れた声は、湿気た空気には合わないほど単調で、乾いている。ソイツの言うことに、私は五分五分、納得して理解できなかった。
「第1特異対応班、か……」
移動態勢に入っていたイデスが、怪訝な顔をした。
「QRF?」
即応部隊のQRFは、我々に代わって任務を遂行するとカシウスが言っていたが、我々は任務に復帰したはずだ。……が、なぜ?
――いや、いま、そんなことを考えている余裕はない。
「急げ、早く!」
説明している暇なんてなおのことあるもんか。私はダニエルをショットガンのストックでつつき、イデスを肘で押した。
「ちょっ……と」
「スモークはまだあるな?」
「意味ないでしょ」
「ないよりはあるほうがいい。とにかくここから逃げるんだ!」
イデスの腰につけてあったスモークを三つ。剥ぎ取るが早いか、後方の倉庫へと投げ、射線を妨げる。
「はぐれないようについて来い」
――カンッッツシィッィィ。
一つ。
――カンッッツシィッィィィィィ……。
二つ。
「マジで、死ぬ気で、行くぞ」
腹の痛みをかみ殺して、私が先頭に立つ。
スパコン並みのシミュレート。コンテナを抜け、倉庫を右に突っ切り、施錠された非常口をブリーチ。距離は二十メートル程度か。およそ十五秒。遮蔽もある。腹と足に鞭だけ打つが……!
前方のスモークが煙を撒き散らしたのを見計らい、三つ目のスモークを反対側のチェンの死体――びちゃびちゃになった下半身のほうへ大きく投げつけ、さらに余ったスタングレネードをトッピング。たのむ、いいデコイになってくれ!
――ズダァァンッ‼
「行くぞぉっ――‼」




