5-3 POV : イサカ
――そういうわけで、トーヨドに向かう手前、私たちは大きなターミナルのオーサカ駅で途中下車をした。夜のオーサカというのは昼とはまるっきり違う顔を見せて、これでこそオーサカって感じるところもいくらかある。入り乱れる改札、ご機嫌のおじさん、夜遊びに耽るチャラ男の群れ。うぅん、これだね。
ビルの隙間から流れてくる乾いた風を頬に受け止めて、改札へと向かった。
「いっぱいいるねぇ」
「ね」
私たちは人波に揉まれながら、窮屈な改札をくぐって、近くのエスカレーターまで牛歩で進む。開けた場所から眺められるオーサカの夜景は、人間の活動をありありと象徴していた。
バーに行くためには、中央改札を出てすぐ右を進み、エスカレーターを降りて、長い連絡橋を渡らないといけない。平日の昼間なんかじゃ人気は少ないのに――大都会の帰宅ラッシュ、そんな時間ともなれば、人の大波が蜿蜒と果てしなく続く。私は人混みの下で、ユリウスとはぐれないようしっかりと手を握りながら、そのダンジョンを進んだ。それにしても、この人混み酔っちゃいそう……。
「うわぁあぁ」
案の定、あまりの窮屈さに、私もユリウスも息ができなくなるもんだから、勝手に寄り道をすることに決めた。
「おっと、どこ行くの?」
「コンビニ」
そうして、波に抗ってコンビニへ突入。白い照明の眩しい、せまっ苦しい小さな空間。ポテチ、お酒、日用品。ズラリと並ぶ商品に目を配る。そして、ホットドリンクのコーナーから、アツアツの缶コーヒーを摘まみだした。
「あれ、一つだけ?」
はァ、そうやってまた人を揶揄う。えっふん、何度でも言ってやろう。わたしゃ貧乏人、で、す、か、ら!
ムッとふくれっ面をして、真っ向正面からヤツに見せつける。
「…………?」
しかし、よっぽど私の顔がケッタイに見えたのか、ユリウスはこみ上げた笑いをぷすっと零した。
「へんなの」
その笑顔を見た私も、ちょっとだけ笑ってしまった。
――お会計。コーヒー二つ、二四〇円。
「お金を入れてください」
機械が金をせびる。私は財布からなけなし――生活費ですよ?――の五〇〇円玉を出し、それを機械の口に放り込んだ。まもなく、おつりの小銭がチャラチャラと出てくる……あっ。
「二〇〇円」
二人して、口を揃えて。余ったお金。借金、これで返せるじゃん――って思ったけど。
私はそのおつりを握り締め、なにも言わず、そっと、自分の財布にしまった。
「えちょっと?」
「まぁ、これは生活費だから。返せるお金と返せないお金があるんです」
「んんー、ズルいっ!」
そうやって、またくだらない微笑みを零す。




