4-2 POV : ギャレット
それから十分。
私たちは無言のまま、分厚い装甲車の中で揺られつづけた。
ダニエルがハンドルを握り、私は助手席。それ以外の三人が後方で待機し、一行は現場へと赴いた。第5特殊作戦実行班での任務はこれが初であり、先進国――ニホンでの活動も初めてである。なんなら顔を合わせて間もないメンツだし、いまのところは不安が募るばかりだ。
――スシ、ギョウム、パチンコ。
ホログラムで飾られた美人女優まで。
ニホンの街は独特の風景を彩り、アメリカにあるようなエセではない、本場の和を堪能できるものだが、装甲車の小さな窓ときたら、その景色を楽しむ余裕すら与えてくれない。
「なァ、隊長」
ダニエルが道路の先を見据えながら言った。私はダニエルの横顔に視線を移し、彼の言葉に耳を傾ける。
「コラボレーターってのは、人類のすべてを滅ぼすための協力者なんだろ?」
「そうだな」
「じゃあそのコラボレーターは、一体だれに協力してるんだ?」
なかなか核心を突く、鋭い質問だ。
「フィルターだ」
…………。
会話が躓く。ダニエルは数瞬、理解に追いついていない様子だった。
「そりゃァ、エアコン業者かなにかか?」
バカ言え。考えて出てきた答えがそれか?
「フィルター。つまり『立ちはだかる者』だ」
「いまいち意味がわからんな」
なにが可笑しいのか……というのは分からなくもないが、それでもダニエルにはよほど滑稽に思えたらしく、面白そうに笑いながら、ブレーキペダルに力を入れた。
交差点、しばしの赤信号。
「さァな。詳しいことは夢想好きの学者に聞いてくれ。ただ、事を放っておくと私たちの文明が崩壊することは、確かなことだそうだ」
「なら大層な任務を押しつけられたってもんだ。たったの五人が、アメコミみたいにやろうってか?」
彼は饒舌にふざけてみせる。口調も軽く、皮肉というよりはただのジョークに近いニュアンスだった。しかし、そんな彼の冗談も、私の不安を拭うことはできない。
「世界の破滅でーす、なんていって大々的に軍隊を使えるものか」
そんなことになれば、世界が大混乱に陥るのは火を見るよりも明らかなことだ。だからこそ、我々は少数精鋭で暗々裏に動かなければならない。
「実際、過去にはこれより少ない数で、三人のフィルターに対処してきたんだ……やり方は控えめに言っても無謀だし、成功した実感というのはないが」
「どんな感じだったんだ?」
「これから分かるさ」
「へぇ、なにかアドバイスは?」
「セラピーの予約を早めにしておくことだな」
私は彼を横目に捉え、毒を吐くように返答した。それでもダニエルは「そうかい」と明るく振る舞った。
装甲車はブロロロッと唸り声をたてながら、オーサカの街を駆けていく。深夜の下、任務を遂行するために。




