↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
グレイト・フィルター  作者: 春麗 狄 ت
第四章 ー Testosterone ー
16/58

4-2 POV : ギャレット


 それから十分。

 私たちは無言のまま、分厚い装甲車の中で揺られつづけた。

 ダニエルがハンドルを握り、私は助手席。それ以外の三人が後方で待機し、一行は現場へと赴いた。第5特殊作戦実行班(エコー)での任務はこれが初であり、先進国――ニホンでの活動も初めてである。なんなら顔を合わせて間もないメンツだし、いまのところは不安が募るばかりだ。

 ――スシ、ギョウム、パチンコ。

 ホログラムで飾られた美人女優まで。

 ニホンの街は独特の風景を彩り、アメリカにあるようなエセ(・・)ではない、本場の和を堪能できるものだが、装甲車の小さな窓ときたら、その景色を楽しむ余裕すら与えてくれない。

「なァ、隊長」

 ダニエルが道路の先を見据えながら言った。私はダニエルの横顔に視線を移し、彼の言葉に耳を傾ける。

「コラボレーターってのは、人類のすべてを滅ぼすための協力者なんだろ?」

「そうだな」

「じゃあそのコラボレーターは、一体だれに協力してるんだ?」

 なかなか核心を突く、鋭い質問だ。

「フィルターだ」

 …………。

 会話が躓く。ダニエルは数瞬、理解に追いついていない様子だった。

「そりゃァ、エアコン業者かなにかか?」

 バカ言え。考えて出てきた答えがそれか?

「フィルター。つまり『立ちはだかる者』だ」

「いまいち意味がわからんな」

 なにが可笑しいのか……というのは分からなくもないが、それでもダニエルにはよほど滑稽に思えたらしく、面白そうに笑いながら、ブレーキペダルに力を入れた。

 交差点、しばしの赤信号。

「さァな。詳しいことは夢想好きの学者に聞いてくれ。ただ、事を放っておくと私たち(人類)の文明が崩壊することは、確かなことだそうだ」

「なら大層な任務を押しつけられたってもんだ。たったの五人が、アメコミみたいにやろうってか?」

 彼は饒舌にふざけてみせる。口調も軽く、皮肉というよりはただのジョークに近いニュアンスだった。しかし、そんな彼の冗談も、私の不安を拭うことはできない。

「世界の破滅でーす、なんていって大々的に軍隊を使えるものか」

 そんなことになれば、世界が大混乱に陥るのは火を見るよりも明らかなことだ。だからこそ、我々は少数精鋭で暗々裏に動かなければならない。

「実際、過去にはこれより少ない数で、三人のフィルターに対処してきたんだ……やり方は控えめに言っても無謀だし、成功した実感というのはないが」

「どんな感じだったんだ?」

「これから分かるさ」

「へぇ、なにかアドバイスは?」

「セラピーの予約を早めにしておくことだな」

 私は彼を横目に捉え、毒を吐くように返答した。それでもダニエルは「そうかい」と明るく振る舞った。

 装甲車はブロロロッと唸り声をたてながら、オーサカの街を駆けていく。深夜の下、任務を遂行するために。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。