不思議 不自然
「――てめえ! 俺のとおちゃんを殺しやがって!!」
クラスメイトにいきなり突き飛ばされ、尻餅をついた。いつもはクラスのムードメーカーを買ってでる程の、陽気な少年のはずだ。
「お前が槍を降らしたんだろ?! だから」
「待てよ、コイツ、なんか、刺さってんぞ」
「やだ……何あれ」
教室にいた生徒たちから化け物をみるような目つきで、光眼は見下される。
「あ、これは、ユニコーンに刺されて。不思議と生きてんだよね」
あはは、と笑ってみせたが、火に油を注ぐだけであった。
「じゃあやっぱりお前が犯人なんだっ」
「落ちつけって伊藤。さすがの電波にもそこまでできないだろーよ」
仲が良いらしいクラスメイトが、伊藤を止める。「でもとおちゃんは帰って来こねえよ」
こんなかにも死んだヤツがいるんだぞ?! ――と、彼が叫び、ざわついていた空気が張りつめた。
「……でもさあ、それってボクに関係ないよね? ボク、そんな風に君たちの事一瞬たりとも思ったりしてないし、槍が降るのは普通でしょ?」
あけすけに言い放つ左江内 光眼を伊藤が何度も殴るが、いきなり「アガッ」とえづくと、倒れてしまった。
「伊藤くん?!」
「いとーっ!」
皆がワッと集るように心配する。口からたくさんのフナムシが湧いてくると、女子たちが阿鼻叫喚に陥った。
「あ、フナムシ。海、行ったんだー? 伊藤くんもズル休みしたの?」
皆が固まった。昨日は授業があるし、大切なテストもあったのに。
成績優秀で才色兼備な伊藤は休んでいた。
「このっ! 電波女!」
親友と思わしき少年にもう一発殴られ、光眼は呻いた。
「いてて……みんな、ひど」
頬に氷嚢を当てて、保健室でボンヤリしていると保健の先生が麦茶をくれた。
「しょうがないわよ。世界がこんな風になってしまったのだから、皆、おかしくなるわ」
「そう……ですか? 保健のセンセは?」
「普通よ」
紙コップの中に注がれた麦茶の中にはカエルの卵があった。
海なし県なのでフナムシを実際に見たことがありません。




