サルタビコが言うには
「サルタビコさんはあの洋館が何かしってるの」
サルタビコが勝手にベッドの上でくつろいでいるのを横目に、光眼は尋ねた。
「ああ、知っているとも。昔、悪趣味な輩が住んでいたと噂されているね」
「悪趣味?」
ニタリ、と彼は子供を脅かすような目つきになる。
「夜な夜な人間を解体したり、目をホルマリン漬けにして喜んでいる……そんな輩がいると」
「お医者さんだったんだ」
「お前の中で医者はそんなイメージなのかい? 狂ったヤツだ……。私が知る限りではあの洋館は明治から建っている。随分ふるい建物だ」
サルタビコはそう言うと笑う。
「お前に明治がいつだか分からないと思うけれどね!」
「うん。分かんない」
即答すれば彼はさらに愉快になったのか大笑いをした。猫が人の声で笑うのはかなり不思議な光景である。
「洋館の中に入りいたいなあ」
「無理さ。人喰い化け物がいるからね」
「あの眼玉の?」
「そうだ。アイツはどんなに強い化け物でも敵わない。無粋な考えはやめな」
キュルキュルと特徴的な音が耳に残っている。あれは神さまなのか?
なら、おばあちゃんはどうやって洋館へ出入りしていたのだろう。
「バイコーンは穢れを好む。なんて、お前らにピッタリな獣だろう」
サルタビコはさも愉快だと目を細めた。
「ユニコーンも大概なヤツだがね」
(何だっけ、蹴飛ばしてくるんだっけ)
「ええ〜〜っ、ボクが穢れてるって?? まだうら若き乙女なんですケド〜〜」
すると彼は違うさ、と否定した。
「乙女だろうと野郎だろうと関係ない。汚らしい心を持つ者にふさわしい角を有した、といいたいのだ」
「え」
自分自身は綺麗な心を持ってきたつもりで生きてきた。セコいやつ、ひねくれたヤツ、そんな輩はたくさん見てきたはず。
自分が汚らしい?
光眼は認められず硬直した。
「四ツ目はそれを自覚している。だからあの巨大な鉈は無敗であり、威光を放つ。お前も己に素直になってみないかね?」
「ヤーダねっ」
「何でも切れる鉈、いや、何でもではないか……」
(キケンを切れる気がする……って、キケンさんは心が清いのかな)
あのツンケンでヘンクツそうなケイテキからはそんな気配はしない。
(信念の強さ? とか)




