その世界は一過性
左江内 光眼はふと、手持ちの幻想の動物に関する図鑑を開いていた。
ユニコーン。かの幻想は有名な白馬の、メルヘンの象徴。
しかしふと矛盾が生まれている気がした。後付けのような、そんなものだ。
「そいさぁ。ユニコーン、四ツ目ちゃんにも刺したんだよね?」
「ああ、八つ当たりで。痛かったけど。それがこのナタになったんだよ、ホラ」
手入れをしていた四ツ目は少し刃先を浮かした。
「ボクは過去の焼き回しだって、スクナビコ? さんが言ってた。スクナビコさんによればこの世界は一方的なの?」
「……深く考えた事がなかったな。左江内 光眼が現れたのは今回だけだ。他に違う世界の住人がやってきたのはあったけどさ。過去にあった事は繰り返されなかった。……死人は蘇らなかったしよ」
(他の世界の住人? じゃあ……他のファンタジーな生き物たちもこの世界に吸い込まれて?)
「死人は蘇らなかった、――じゃあ、ユニコーンは2回目、ボクを刺したの?」
「はあ?? ユニコーンが二匹いたんじゃないか?」
四ツ目は眉をひそめ、図鑑のユニコーンを眺める。
「角が一つ足りないじゃねえの」
「え!」
「俺に刺してきたユニコーンは角が二つあった。まあ……ユニコーンっていう固定概念に囚われすぎてたのかも」
「それってバイコーンじゃないかな!!」
「なにそれ」
パラパラと慌てながらも先程みた馬の生き物を指さした。
バイコーン。
角が二つあるユニコーンに似た生き物。白馬ではないけれど、白毛のバイコーンがいたって不思議はない。
「……なんで同じ人物を2回刺すんだ。あんにゃろ」
「ボクたち、同じだけど同じじゃないだよっ! やっぱり!」
「同じなわけないだろーが。俺は冗談抜きでお前じゃないと思ってる」
予想外の言葉に光眼は破顔した。己がそういうとは思えないからだ。
四ツ目は四ツ目なのだ。
「世界に同じ存在もどきが二人いたからどうって事ない。俺はやりたいように行動するだけだ」
「なんかさ、四ツ目ちゃんって真面目さんだよねー」
「真面目え?? アイツらの中で、俺は一番不真面目だっての」
アイツら。
「キケンさんたちと友だちなんだね?」
「はあ……かなり――大ざっぱな言い方だけど、そうだよ」
「良かったね! ボクにはいないけど、四ツ目ちゃんには友だちがいるから。安心」
はあー、とため息をつかれ、アハハ! と笑った。それを奇妙なものをみる目つきでナタを鞘に収める。
「お前には孤独が正解なのかもな。間違えを冒すなよ、決して」
「え?」
蛍光色の黒目で見つめられ、ギクリとする。人外の視線はどことなく金縛りににていた。
「孤独から外れたらそこは危険な世界だ。お前の思い通りにはいかなくなる。自身の思考さえも」
「……なにそれ」
「助言さ」




