幻像
「うわあ」
椅子ごと持ち上げられてそのまま疾風の如く、街をすぎる。
四ツ目の傷は半ば癒えており、良かったと光眼は安堵した。どういう原理なのか分からないが。
「猿!よろしく頼む!」
行き先に待ち構えていたあの猫……サルタビコがフンと鼻を鳴らした。
「猿ではないがね。分かった」
怪訝に思っていると猫の輪郭が揺らぎ、大仰な翼が生えたオオワシと人間が合わさったような生き物に変幻――したように見えた。
が、つかの間視界が暗くなり、どこにいるのかも分からなくなる。
「どこ?!」
暗闇の先に、あの宇宙船が見えた。扉が空いている。あの中に入れば何かまた面白い事が起きるのだろうか。
「い、椅子がっ!」
足は自由だが、身体はまだ椅子にくくりつけられている。
「あの宇宙船に行けば――もっとめちゃくちゃにできるのに!」
もがきながらも手を伸ばす。
「光眼、貴方、宇宙船を壊したなんて何を考えてるのよ」
ふいに背後からあのケイテキの声がしてふりかえった。追いつかれたのかと思ったが、あれは幻だ。
ケイテキと自分自身が話し合う、というか一方的に詰め寄られていた。
「ごめんね。だって、あの宇宙船、動かしたら……」
ヘラヘラしつつも光眼は言う。
「元の世界ごとめちゃくちゃになっちゃうって知ったから」
「……あれがボク? あんな事いうのが、ボク?」
到底あり得ない。
「……。そう、なら詳しく説明してよね」
二人はどこかへ歩いていった。それを唖然として眺めて、分類できない感情に苛まれるしかない。
「あれはボクじゃない!!」




